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第3章謎の少女とダンジョン革命

156・ラプラス大活躍

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「ダンジョン強盗を捕まえてくれてありがとう。
報酬の金貨一枚だ」

ダンジョン強盗を捕まえた翌朝、
伯爵夫人は私達、『金色の黎明』のメンバーにお金を出した。
しかもみんなで分けやすいように銀貨で支払ってくれた。
この人のこういった気遣いには関心した。

「おかげで寝不足ですけどね…ふわぁ」

ダンジョン強盗が現れたのは深夜だったので、
おかげで寝不足だ。

「それとお前達に頼みたいことがある。
ダンジョンの管理人のラプラスと話をさせて欲しい」
「伯爵夫人がですか?」
「ラプラスに頼みたいことがある。
実はダンジョンで不便な点について、クレームが来ている」
「伯爵夫人にですか?」
「ああ、まぁ私に直接は来てないが、
ダンジョンに関する問い合わせ窓口に来ている。
ラプラスはダンジョンの構造を変えることが出来るんだろう。
だからその不便な点を解消して欲しいのだが、
私が直接行ってもダメだったから、お前に頼みたい」
「分かりました。じゃあ、転移魔法で連れて行きます」

そうしてみんなで白のダンジョンの前に来ると、
そこはすごい人だった。
前に見た時より多くの冒険者が集まっている。
屋台のような物も出来ていた。

「本当に着いたな。
転移魔法は便利だな」
「じゃあ、中に入りましょう」

私達は白のダンジョンに入った。

「ラプラス」
「何?」

名前を呼ぶとラプラスは現れた。

「え、こいつがラプラスなのか」
「はい、そうです」
「機械と聞いていたから時計なのかと思っていた」

え? 機械が時計?
あ、そっかこの世界にはオルゴールすら無かったんだよな。
機械と聞いたら時計、忘れていた。

「あなたがラプラスだな。
私はアアルの領主オリヴァー・フィールディングの妻、
マティルダ・フィールディングだ。
あなたに話しがあってきた」
「何?」
「このダンジョンに休憩所を作って欲しい」
「休憩所?」

休憩所ってどういうことだ?

「実際にダンジョンに入った人間から、
休める場所が欲しいとクレームが来ている。
特に多かったのがトイレが無いことだ」

ああ、それは私も思った。
ダンジョンって本当にトイレが無いんだよな。
トイレがしたいなら行き止まりでこっそりするしか無かったからな。
確かにトイレは必要だろう

「トイレ?
ああ、私は排泄しないから、人間が排泄することを忘れていたわ」
「え、排泄しないの?」
「私は魔力で動いているから人間のように排泄しないの」
「それは興味深いが、トイレ以外にも、
宿泊する場所が無いというのもクレームが来ている」
「確かに寝る場所が無いのは不便だなと思ったけど」

前にダンジョンに入った時は、
シールドバリア君があったから何とかなったが、
普通の冒険者はそんな物持ってないからな。
ダンジョンは下の階に行くほどに宝箱のレア率は高まる。
良い物を手に入れたいなら泊まり込む必要がある。

「他にも色々改善点はあるが、
もしこれが改善されれば今以上に人が来るだろう」
「本当に?」

伯爵夫人の言葉を聞いてラプラスの目が輝く。

「となるとまたダンジョンの構造を変えるから、
変えるのに丸一日かかるわ、その間はダンジョンに入れないから」
「それと聞きたいのだがダンジョンで得た収益は…」
「ああ、それならセツナ達に全部あげるわ」
「「は?」」

ラプラスのあまりの提案に私と伯爵夫人の声が重なった。

「私はここから出られないし、持っていても仕方ないもの」
「いや全部はいらないですよ」
「じゃあダンジョンの収益の80%はどう?」
「それでも多いですよ!」
「じゃあ40%」
「いや、だからいいって!」
「じゃあ、分かった。
譲歩するわ。10%でどう?」
「いや、それもいらないです。お金には困ってないから」

そう言うとラプラスはむうっと頬を膨らませた。

「これぐらいしないとセツナに受けた恩を返せないじゃない」
「いや、私より伯爵夫人にあげて、
その方がきっと有効活用出来るから」
「じゃあ、80%の収益を領主に払うわ。
その代わり残りの20%のお金は受け取って」
「いや、だからそれでも多いんだけど」
「まぁセツナが居なかったら、
ダンジョンは改革出来なかったから、受け取っておくべきじゃないか」
「そうよ。受け取ったら?」

伯爵夫人もエドナもそう言ったが、
私としてもそう急に受け入れられない。
そんな大金扱ったこと今までにないからだ。

「20%ではなく、1%でどうですか」

その時今まで黙っていたフォルトゥーナが口を開いた。

「80%は領主に払って、
残りの19%はラプラス自身が使って、
残りの1%はセツナに払う…というのはどうですか?」
「たったの1%?
そんなのでいいの?」
「ラプラス、あなたは機械だから分からないでしょうけど、
あまり大金が入ると納税しないといけないから大変なんですよ。
1%ならセツナも扱いやすいでしょう」
「そうです。ラプラスのお金なんだから、
ラプラスが使ってください。私はいいです」
「分かったわ。じゃあその提案を受け入れるけど、
その代わり、何か好きな物をあなたにあげるわ。
何でも欲しい物を言って、
この施設にある装置で作るから」
「いや、別に欲しい物は特にないですけど…。
あえていうなら馬車かな」

移動する時に便利な馬車だが、最近は伯爵夫人によく借りていたが、
自分用の馬車が欲しいと思っていたんだ。

「あ、でもさすがに無理かな?」
「ふふふ、私は腐ってもアンドロイドよ。
期待以上の物を必ず作るわ」

そうラプラスはしたり顔で言った。
何て言うかラプラスの私に対する執着って、
他の人に比べて高い気もするがまぁいいか。

「ではダンジョンのリニューアルだが、
細かい改善点について書類にまとめておいた」
「待って、私この時代の文字が読めないわ」
「なら口頭で説明しよう。
細かい点だと…」

そして伯爵夫人とラプラスはしばらく二人で話し合っていた。
話しが終わると、
ダンジョンはリニューアルのためにしばらく入れなくなった。
そして翌朝、白のダンジョンに転移した私は中で想像以上の物を見た。

「うわ、すごい」

ダンジョンにある休憩所の中に入ると、
そこはおしゃれなカフェのように、
冒険者がくつろげるソファと机が置いてあった。
そして横にはキッチンまであった。
しかもキッチンにはコンロや水道の蛇口まである。
そして壁には蜂の巣状になったカプセルホテルがあった。
全部で30個近くあるが、
カプセルホテルの扉を開くとふかふかの布団があった。
休憩所の中は暖かいとはいえ、布団があるのは嬉しいだろう。

「あら、おはよう」
「あ、ラプラス。これすごいです。
私の世界のカプセルホテルみたい」
「効率を考えたら、こういう形になったわ。
基本的にこの部屋には魔物は入れないし、
この部屋に居れば徐々に体力と魔力が回復するようになってるわ。
まぁ1時間も居れば全回復するでしょうね」
「それはすごい」

じゃあ怪我しても回復魔法いらないんじゃ…。
すごい物を作ったな。ラプラス。

「それと布団は使用者が変わる度に、
浄化と修復と消毒殺菌の魔法をかけているからずっと清潔よ」
「確かに前の使用者の事は気になるけど、そこまで考えてたんだ」
「それといびきで眠れないことにも想定して、
ベッドの中は防音にしておいたわ。
ちなみに中から鍵もかけれるの」
「なんかもうすごすぎて、何も言えないです」
「それとそこの扉開けてみて」

扉を開けるとそこはトイレになっていた。
多分10人ぐらいが入れる個室がある。
ちょうどトイレに行きたかったので、用を足すと驚いた。
水洗トイレだったからだ。
トイレを出ると私はラプラスに聞いた。

「水洗トイレだったんだけど、この世界にはないものだけど、
どうやって知ったんです?」
「これでもかなり旧式なのよ。
本当は空間浄化にしたかったけど」
「何それ?」
「個室に入った瞬間その人の老廃物を浄化する装置よ。
お風呂に入るよりも綺麗になるんだけど、
でもこれだとトイレだと思ってもらえなさそうだし、
この国には無いものだから、なじみがないものだと思って止めたの」
「あ、アトランティスって本当に今より優れた文明だったんですね…」

そう言ってトイレの部屋から出るとあることに気が付いた。

「あれデジタル時計がある」

部屋の扉の上に今が何日で、何時か表示されたデジタル時計がある。

「あ、ダンジョンの中に入っていると、
今が何時か分からなくなるでしょう。
ちなみに時計が読めない人に配慮してデジタル時計にしたわ」

何という細かい気遣い。
多分ここら辺は伯爵夫人の提案の気がする。

「それとそこにあるロッカーに荷物をしまえるわ」

言われてたくさんあるロッカーのうち一つを開くと、
ロッカーの空間が倉庫のように広かった。

「え、中が異様に広いけどどういうことです?」
「ああ、中の空間を魔法で広くしているの。
ロッカーの鍵も絶対に複製が出来ないようになっているし、
ロッカーの鍵を持ってベッドの鍵を閉めれば、盗難の被害にあうことはないわ」
「すごい」

さっきからすごいすごい言ってるが、本当にそれしか言葉が思いつかない。

「でもこれを全部の階に作るのはさすがにくたびれたわ」
「え、休憩所って全部の階に作ったんですか?」

それはすごい。正直私はこれ以上の物は期待していなかった。
でもラプラスはやった。
もうすごすぎて何も文句は言えない。

こうしてダンジョンはまたさらに生まれ変わったのだが、
水洗トイレを体験した冒険者はすごいと絶賛したらしく、
話を聞きつけた貴族が同じ物を作ろうとしたり、
色々な形でまた経済効果が生まれたのだった。
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