贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~

鐘雪アスマ

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第3章謎の少女とダンジョン革命

152・ブラックな冒険者①

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「……すごい人」

その日私は『金色の黎明』のメンバーと共に、
白のダンジョンの前まで来ると、
そこは人だかりが出来ていた。
たくさんの人が白のダンジョンの前に集まり、中に入って行く、
たまにダンジョンから人が吐き出されるが、
あれはダンジョンの中で気絶した冒険者だろう。

「ここまで人が集まるとは…」
「まぁ当然じゃない?
一攫千金になるもの」
「入ってみましょうか」

ダンジョンの中に入ると、そこは人だらけだった。
歩いていると人とよく遭遇した。
魔物を倒しながら先に進むと気になるものを見つけた。

「あれ、あの人は…?」

3人の冒険者が魔物と戦っていた。
だがみんな疲れ切った顔をしていて、
目にくっきりとクマが出来ていた。
今にもふらふらで、倒れそうだ。

「なんか疲れているんでしょうか?」
「あの冒険者達ならもう二日もここに居るわ」
「わっ、びっくりした」

ラプラスがいきなり現れたので仰天した。

「セツナあなたのおかげでこのダンジョンは生まれ変わったわ。
おかげで人がとても来るようになったわ。ありがとう」
「うん、それはいいけど、
あの人達ってずっとここに居るの?」

ふらふらな冒険者を見て私はそう言う。

「そうね。何かノルマがどうとか言って、
眠らずにずっと戦っているわ」
「眠らずって二日も!?」
「そうよ」
「何か放っておけませんね…。
みんな行きましょう」
「そう言うと思ったわ」

ふらふらな冒険者に私達は近づく。
何とか魔物は倒せたようだが、折れた剣を見て、
冒険者の一人がげっそりした顔で「あと85本」と呟いた。

「あの、皆さんこれ飲んでください」

私は疲労回復薬を取り出し、飲むように進める。

「これは…ていうかあんたは?」
「いいから飲んでください」
「うわ、何だこれ、疲れが消えた…」

疲労回復薬は睡眠を取っていない人でも、
10時間熟睡したように元気いっぱいになる。
いつも徹夜している伯爵夫人に飲ませたらそう言っていたのだ。

「ありがとう、これなら何とかノルマが達成できそうだ」
「ノルマって…何ですか?」

何かろくなもんじゃない予感がする。
私は3人の冒険者を改めて見た。
一人は剣を持った戦士の青年に、
もう一人は魔法使いの格好をした女性、
最後の一人は武道家のような格好をした青年、
みんな若く、18才ぐらいに見えた。

「俺達のチームのリーダーが、
その…間違って依頼を大量に受注してしまって、一週間以内に、
折れた剣85本と絹45枚と毛皮115枚を集めないといけないんだ」
「はぁ!? 何を間違えたらそんなことになるんです?」
「俺達に来た指名依頼をよく確認せず引き受けたからそうなったらしい…」
「最悪ね。それであなた達が尻拭いする羽目になったのね」
「…仕方が無いんです。リーダーはそういう人ですから」

エドナの言葉に諦めたように魔法使いの女性がそう言った。

「いつもそうなんです。
よく確認もせず依頼を受けるので、私達がフォローしないと…」
「だからここに入ってずっと魔物を倒しているんだ」

そう彼らは諦めたような疲れ切ったような顔で言った。

「ねぇみんな」
「あーもうあなたが何を言いたいのか、
聞かなくても分かるわ」
「まぁな、セツナの考えてることなんて決まっているしー」
「もう慣れたのだ」
「彼らを助けたいんですね。手伝いますよ」
「よし、みんな。魔物を倒して、ノルマを達成させよう」
「え、良いんですか、
その…私達を助けても何もお返し出来ませんよ」
「…困っている時はお互い様じゃないですか。
ねぇラプラス」
「なぁに?」

私が呼ぶといつの間にか姿を消していたラプラスが現れた。

「ラプラス? あれがダンジョンの管理者か…」
「機械って聞いていたけど普通の人間にしか見えませんね…」
「すげぇ可愛いな…」

驚いたように冒険者達は言った。

「ラプラス…。このダンジョンに居る魔物が落とす品が欲しいんだけど」
「さっきの会話は聞いていたわ。
あれだけの量となると普通にダンジョンを巡っても、
かなりの時間がかかるでしょうね。
実はこのダンジョンは最低限の魔力で運営していたから、
今は使っていない機能がいくつかあるの。
その一つがモンスターハウスよ」
「モンスターハウス?」
「その部屋に入ると大量の魔物と遭遇するの。
部屋に人がいる限り、魔物は無限に作られ続けるから、
だから一度に多くの魔物と戦いたい場合はちょうどいいの。
ちなみに終わらせたい場合は部屋を出るといいわ」
「それって今作れる?」
「あなたから貰った魔力と、
冒険者達から少しずつ貰った魔力で復旧出来ると思うわ。
ちょっと待ってて、試しにここにモンスターハウスを作るから」

ラプラスがそう言うと、目の前に壁に扉が現れた。

「はい、これで出来たわ。
入ったら感想を後で聞かせて」
「皆さんはここで待っていてください」
「分かりました。待ってます」

私が戦うところはなるべく人に見られたくないので、
冒険者は一端ここで待ってもらう。

「おー、本当にうじゃうじゃいるな」

その部屋には魔物がいっぱい居た。
全部で50体ぐらいだろうか。

「《轟雷(サンダー・クラッシュ)》」

上級魔法で一撃。多くの魔物が倒せた。
残った魔物はエドナ達に任せる。

「うわ、本当に現れた」

倒してしばらく待つと魔物がまた現れた。
それも一度に20体も。

「うーん、普通の冒険者には荷が重いような気もするわ」
「そうなのだ。最低でも相手にするのは5体ぐらいがいいと思うのだ」

エドナとイオが戦いながらそう言う。
私も二人を巻き込まないよう気を付けながら、魔物を倒していく。
そうして一時間も経たないうちに約束の品が用意出来た。

「調達出来ました」
「え、もうですか?」
「早いな」

約束通り、ノルマの品を渡すと、冒険者達は喜んだ。

「これでノルマが達成出来ます!
あの皆さん本当にありがとうございました」

そう言って晴れやかな顔で冒険者達はダンジョンを出て行った。

「ふぅ疲れたけど、喜んでくれて良かった…」
「………しかし助けたとしても根本的な解決にはならないと思いますけどね」
「え?」

フォルトゥーナがそう意味深なことを言ったが、
その時の私は全く気がついてなかった。
冒険者の中ではブラック企業も真っ青になるチームがいることを…。
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