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第3章謎の少女とダンジョン革命
121・サイクロプスとの死闘①
しおりを挟む「ふんふ~ふんふんふ~」
軽快な鼻歌を歌いながらサイクロプスは、
2メートルはある鍋をかき混ぜていた。
一体どうしてこんなことになってしまったんだろう。
サイクロプスに捕まった私達はというと、
洞窟にある牢屋の中に入っていた。
まぁ牢屋といっても入り口には木の柵がある簡素な作りだ。
そこにクレミー村の女達と一緒に捕まっていた。
体は縄で縛られ、猿ぐつわもされている。
アイテムボックスを使おうにも手がぐるぐる巻きにされているから出来ない。
しかもこの縄には魔法を封じる効果があるようだった。
「すまねぇ、俺でもこの縄をほどくことは無理だ」
ガイが申し訳なさそうに言う。
ガイは手のひらサイズなので、この縄をほどくことが出来ないみたいだった。
「今日はおいしい人間鍋~、おいしいおいしい人間鍋~」
調子が外れた歌を歌いながら、サイクロプスは鍋をかき混ぜる。
その傍らには人骨とみられる骨がいくつもあった。
間もなくその仲間入りをするかと思うと、憂鬱になる。
くそ、一体どうしてこんなことに…。
まぁ悪いのは完全に私なんだけどな。
結界魔道具に頼らずにちゃんとした結界を張っておけば良かった。
(今はそんなことを考えているヒマはありませんよ)
頭の中で声が響いた。
この声はまさかフォルトゥーナ?
(そうです。まぁあなたは少し、いやかなり反省してください)
反省はしてるよ。
反省はしてるけど、
今はどうやったらここから出られるのか考えているんだ。
(魔法が使えない今の状況では逃げ出すのは無理でしょう。
逃げたとしてもサイクロプスが私達を逃がすと思いますか?
そもそも防具のせいで魔法が軽減されるというのに)
それはそうだけど。でも…。
(まぁ逃げるならここに居る女達は見捨てた方がいいでしょう。
こんな大人数では奴から逃げられる可能性は低いでしょう)
そんなこと出来ないよ。ここに居る全員を助けたい。
(まぁそう言うと思ってましたよ。
で、具体的にどうするんですか?)
それは考え中だけど…。でも良い方法ならあると思う。
(全くあなたは本当にアホですね。
頭の中がお花畑です。
いつもそんな綺麗事が通用すると思わないでください)
確かに綺麗事かもしれない。
それでもここに居る全員を助けたいんだ。
(どうしてです?
ここに居るのは私達を除いて他人ではありませんか)
他人じゃないよ。関わった以上私は最後まで助けたいんだ。
(前にも言いましたがその考え方は傲慢です。
出会った全ての人間を救いたいというのですか?
そんなことは不可能です。
とんでもない偽善ですよ)
そうかもしれない。でも私はこの世界に来てお母さんを失った。
だから誰にも大切な人を失って欲しくないんだ。
(はぁ、今回だけですよ)
その時、フォルトゥーナが消えた。
消えた所には黄金の色をした鳥がいた。
(鳥に変化しました。ちょっと縄を切る道具を取ってきます)
そう言うと鳥になったフォルトゥーナは飛び立ち、
しばらくして1本のナイフをくわえてきた。
「はい、切りますよ」
そしてフォルトゥーナは人間の姿に戻ると、
私の腕を縛っているナイフを切ってくれた。
あ、そっかそういう方法もあったか。
縄がほどけないなら切れば良かったのか。
そう思いながら、私は猿ぐつわを外した。
「ありがとう」
「やれやれ、後でこの女達の記憶を消さないといけませんね。
面倒です」
フォルトゥーナがそうぼやく傍ら、私はエドナやイオの縄も切っていく。
牢屋に囚われている女達全ての縄と猿ぐつわを外した。
「で、どうやって出るんですか?」
「ああ、それは…」
「お前ら、いつの間に縄を切った!?」
その時、サイクロプスがこちらに気づいた。
ドシンドシンと音をさせてこちらに来る。
「《疾風刃(エア・カッター)》」
「痛ぇ!」
私はカマイタチをいくつも作りだし、牢屋の木の柵にぶつける。
あっという間に柵はバラバラに崩れ、
ついでにサイクロプスにも命中した。
「《火炎弾(ファイヤー・ボール)》」
私はサイクロプスの目を狙って、炎の塊をぶつける。
「痛えええ!!」
サイクロプスは頭を抱えて、座り込んだ。
「今です!! 逃げてください!」
私の言葉に蜘蛛の子を散らすように囚われた村の女達は逃げていく。
「それとエドナ、これ!」
私はアイテムボックスからのびーる君を取り出す。
忘れている人も多いと思うので説明するが、
のびーる君とは、私が作った刀身が伸びる剣のことだ。
魔物はスパスパ切れるが、魔物以外のものは切ることは出来ない。
それをエドナに渡す。
「それ念じたら刀身が伸びるんでよろしくです!!」
「分かったわ!」
「さてやりますか」
もうあんなミスはしない。
ここでこいつを倒す。
クレミー村の人々のためにも、こいつは倒さないといけないんだ。
「セツナ、一応言っておきますがここは洞窟なので、
強力な魔法を使うと崩落の危険性がありますから、気を付けてください」
「それとなるべく私達を巻き込まないようにしてほしいのだ」
「了解です!」
イオとフォルトゥーナの言葉に私はそう返す。
「くそぉ、女共がみんな逃げちまった!
おめぇら絶対許さねぇ!!」
斧をぶんぶん振り回しながら、サイクロプスがこちらに近づいてくる。
ここは洞窟であるのであまり強力な魔法は使えない。
初級魔法で地道に削っていくか。
「《疾風刃(エア・カッター)》」
宙に生まれたカマイタチがサイクロプスに命中していく。
「効かねぇ!!」
サイクロプスの斧が私に向かってきた。
「させないわ!!」
エドナの持ったのびーる君の刀身が伸び、サイクロプスの右腕を切り落とした。
サイクロプスが持っていた斧を落とした。
「痛ぇ!! くっ、この野郎」
サイクロプスは残った腕をこちらに伸ばす。
「《炎よ、渦巻け》」
炎の渦がサイクロプスを包んだ。
「ぐぁぁぁ、くそっこうなったら…、助けてくれー!!」
サイクロプスがたまらずそう叫んだ。
「これで終わりですか?」
「いいえ、まだです!!」
その時、洞窟の奥からドシンドシンと音がした。
「苦戦しているようだな。弟よ」
そう言って現れたのは、なんともう一体のサイクロプスだった。
一体でもここまで苦戦したのに、もう一体だなんて、
本当に最悪の状況だった。
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