上 下
149 / 310
第3章謎の少女とダンジョン革命

120・最悪の事態

しおりを挟む

「ここが王樹の森ですか」

森の入り口に私達は立っていた。
エリアマップを見ながらここに来たが、
もうエリアマップは消しておく。

「ここにサイクロプスがいるのね」
「ええ、さっさと倒しましょう」

私はすうと息を吸った。

「出てこい! サイクロプス!!
私が相手になってやるーーー!!」
「え、ちょっと…」

魔法で声を増幅したので私の声は森の中に響き渡った。

「あなたAランクの魔物に正面から挑むつもり!?」

エドナが困惑したようにそう言った。

「何か問題でも?」
「私でも正面から挑んだことはないわよ…。
相手はAランクでしかも知能を持っているのよッ!
普通の魔物を相手にするのとはレベルが違うのよ!」
「あ、そうだったんですか。でも大丈夫ですよ」

魔族を倒した私ならどんな相手でも勝てると思う。
それに殺意のある攻撃を防ぐ、
ブローチ型の結界魔道具を作ってみんなに渡してある。
私は強いので今まで付けなかったが、
色々あって常に付けるべきだと思うようになった、
これがあるなら大丈夫だろう。

「大丈夫ってそんなことないでしょう…」
「もう全てが手遅れですね。来ましたよ」
「ああ、もう…」

フォルトゥーナの言葉にエドナが頭を抱えた。

「お前らか、俺を呼んだのは?」

ドシンドシンと音をさせて、3メートルも巨人が現れた。
目は単眼で、肌の色は青い。口には牙を生やしていた。
手には巨大な斧を持ち、体には鎧のようなものを着ている。

「お前かクレミー村の人を苦しめたのは、村の女性達を解放しろ!」
「ふん、人間はみんな俺の食料だ。
女はうまいから食ってるだけだ。
お前らもうまそうだな…」

よだれをたらしながらサイクロプスはそう言った。

「《炎よ!!》」

私は特大の炎をサイクロプスにぶつける。

「あちち! よくもやったな」

あれ、あんまり効いてない?
どういうことだ。まさか魔法に強いのか?
ステータス魔法で見てみよう。

「《ステータス》」

【サイクロプス】
【体力】3400/3520
【魔力】60/60
【装備】ミスリルの斧、ミスリルの防具。
巨人系の魔物。人間と同じほどの知能がある。
食欲的な意味で人間の女性が大好物。
手先が器用で、鍛冶を行い武器や防具を作ることが出来る。
近くに鉱山があるのでそこから武器と防具を作った。
大変危険。見つけたら逃げることをオススメする。

着ている防具はミスリル製…。
確かミスリル鉱石は魔法に関しては、
その威力を半減させたり、軽減させたりする力があると聞いたことがある。
私の魔法がそんなに効かなかったのはそのせいか。
でも威力は軽減しても露出している部分はダメージを負ったはず。
地道に攻撃していけば倒せるはずだ。

「よくもやったな! この野郎!」

サイクロプスが斧を振り回しながらこちらに向かってきた。

「はぁ!!」
「《聖槍(ホーリーランス!)》」
「行くのだ!」

エドナが敵の攻撃をかわし、サイクロプスの足を切りつける。
その隙にフォルトゥーナが光魔法で攻撃し、イオがサイクロプスを殴りつける。
もちろん私だって戦う。

「《氷よ》」

特大の氷の塊をサイクロプスにぶつける。

「く、くそぉ、ちょろちょろと動きやがって…」

サイクロプスはそう言うと持っている斧で私を攻撃する。
だが結界魔法にはじかれる。

「なんだ。何かにはじかれた?」
「この結界魔道具のおかげですよ。
殺意のある攻撃を察知すると結界が発動するんです」
「セツナ、何を言っているの!!」

エドナが何故か焦ったようにこちらを見てきた。

「セツナ、あなたは史上まれに見るアホです」

フォルトゥーナまで、そう言った。
あれ、私何かまずいことでも言った?
でも結界魔道具があれば大丈夫なのは確かだし…。

「そうか殺意のある攻撃をか…」

サイクロプスがにやりと笑うと、私とイオに向かって手をのばしてきた。
結界魔道具が防いでくれるそう思って攻撃を避けることはしなかった。
だが――私の予想に反して結界は発動することなく、
私とイオはサイクロプスの手に掴まれた。

「え?」
「セツナ!?」
「嘘だろ!?」

私は急いで、サイクロプスの手から逃れようとするが、
全くびくともしない。イオも同じのようだった。

「へへっ、やっぱりそうか、
殺意のある攻撃を防ぐってことは逆に言えば、
殺意のない攻撃は通るってことだ。
俺はただ目の前の物を掴みたいと思ってやった。
そしたら本当に掴めるとはな」

サイクロプスがニヤニヤしながらそう言った。
そして私とイオの結界魔道具のブローチを引きちぎると、それを遠くに投げ捨てた。

ヤバイ…冷や汗が止まらない。
結界魔道具にそんな欠点があったとは気が付かなかった。
そうだ。相手は普通の魔物ではないのだ。
こちらの言った言葉をちゃんと理解するのだ。
今になってその恐ろしさがよく分かった。

「セツナ達を離しなさい!!」
「おっと動くなよ。動いたらコイツの頭を引きちぎるぞ。
持っている武器と結界魔道具を全て捨てろ。
こいつの命が惜しかったらな」
「にへてくらさい!!」

口を塞がれながら、そう言うとサイクロプスが腕に力をこめた。

「う、ぐぅぅ!」
「勝手なことを言うな。
逃げるそぶりを少しでも見せたら、こいつは死ぬぞ」
「ここは従うしかなさそうね」

エドナ達は持っていた武器と結界魔道具を捨てた。

「俺についてくるんだ。怪しい動きをしたらこいつは死ぬからな」

その言葉にエドナ達は大人しく従った。
そうして仲間全員がサイクロプスによって、
捕まるという最悪の事態が起こってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...