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第3章謎の少女とダンジョン革命

107・謎の集会

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その日私達『金色の黎明』のメンバーは、
伯爵夫人に呼び出されていた。

「お前に頼みたいことがある」
「何ですか」
「これを見てくれ」

そう言うと伯爵夫人は一枚のチラシを見せる。

「求めよ。楽園に行きたい者よ…?」

チラシにはどこどこで集会があると書かれていた。
集会に行った人は楽園に行けるとのことだった。

「そうだ。この調査をしてくれないか。
実は以前このチラシが配られた時に、
集会の場所に何人もの死体が見つかったんだ。
おそらく集会を主催した奴が殺したんだと思う。
だから調査してくれ」
「あの、こういうのもアレですが、
こういう調査は警察の仕事ではないですか?」
「ああ、確かにそうだが、お前達に頼みたい。
何でかというと警察も普段は忙しいからな。
毎日のように事件が起きるから、
あまり一つの事件に人員をさけないんだ」

ああ、そういえばこの国は日本程、治安が良くないんだったな。

「なるほど事情は分かりました。
そういうことなら引き受けます」

そうして私達は依頼を引き受けることにした。





そうして夜、集会のある民家まで行くと、
そこには私達を除いて5人の男女が集まっていた。
ちなみに聖眼だと目立つので魔法で瞳の色を変えた。

「ようこそお集まりのみなさん。
わざわざ来てくれてありがとうございます」

そう言ったのはひょろりとした女だった。

「あの楽園につれていくというのは本当ですか」
「ええ、このお香を嗅げばすぐに楽園につれていけますとも」

そう言うと女はマスクのようなものをつけてお香を焚く、
そしてお香を嗅いだ人達は倒れていく。
まさか眠り薬?
私は状態異常耐性のスキルを持っているので、
薬は効かないが、ここは眠ったふりをしよう。

「ククク。では楽園に連れて行きましょう!」

そう言うと女がナイフを取り出した。

「危ない。《束縛(バインド)》」

私は女を魔法で拘束する。

「くっ、何者だ。お前は…?」
「何で殺そうとしたんですか?」
「知れたこと、殺せば楽園に人は行ける。
私はその手助けをするために生まれたのだ!」

そう狂った目で女は言った。

「まぁ話は警察署で聞きます。眠りなさい。《睡魔(スリープ)》」

そう唱えると女が倒れた。

そうして私は窓を開けると、部屋に居た人を起こして回った。

「うぅ、頭がガンガンする」

そうエドナが言った。

「助かって良かったですね。
あやうく殺されるところでしたよ」
「何で助けたんだ」

その時集会所に居た男性がそう言った。

「そうよ。楽園に行けるって聞いていたからここに来たのに」
「どうも、この人の感覚では、
殺すことが楽園に行くことだったみたいです」
「そんな…」
「じゃあもう生きてる意味なんて…」
「あの何があったんですか?」

そう聞くがみんな黙り込んだ。

「やれやれ〈何があったのか話してください〉」

そうフォルトゥーナが言うと、
30代ほどの女性の一人が話し出した。

「私はグロリアと言います。私には夫がいます。
夫は手がつけられない程の乱暴で、私に暴力を振るうんです。
それに束縛も酷くて、ちょっと誰かと話すだけで、
すぐ嫉妬して問い詰めるんです。
離婚したくても全く出来なくて…。
だから楽園に行けるって聞いて、夫から離れられると思ったんです」
「それはつらいですね」

そう言うと20代ほどの女性が口を開いた。

「私はナンシーと言います。
私には妹が居るのですが、妹はいつも私の物を欲しがるんです。
私が大切にしている物はいつも妹に取られてきました。
それは私の婚約者もそうでした」
「婚約者? まさか略奪したんですか!?」
「はい、それも2回も…。
両親はいつも妹の味方で、私はいつも泣き寝入りしてきました」
「それは酷いですね」

そうすると20代の男性が話し出した。

「俺はブルックって言います。
俺の両親はそろって事故で障害を負いました。
だから介護してくれる人が必要なんですが、
誰も引き受けてくれなくて…。
俺がやろうにも店が忙しくてなかなか介護をする時間がなくて…。
そんな時楽園に行けるって聞いて、
俺がまず楽園に行って両親を後で迎えに行こうと思ったんです」

そうすると10代後半ほどの男性が口を開いた。

「僕はゴードンって言います。
僕は田舎を出て、アアルにやってきた出稼ぎ労働者です。
大工として町で働いていたんですが、
別の大工に仕事を奪われて…しかも悪い噂を流されて、
失業しました。
そんな時楽園に行けると聞いて行こうと思ったんです」
「なるほどそういう事情だったんですか」

どれもあまりに深刻な悩みだった。
みんな楽園に行けると聞いて、わらにもすがる思いだったのだろう。
それが打ち砕かれて意気消沈しているようだった。

「全くアホですね。
楽園なんてそもそもありませんよ」
「フォルトゥーナ、言い過ぎだよ」
「というか気がつかないんですか?」
「え、何を?」
「あなた方4人に力を合わせれば、問題が全て解決するじゃないですか」
「え、どういうこと?」
「まずナンシーさん。
あなたはグロリアさんの夫を好きなふりをしてください」
「はぁ?」

突拍子もないフォルトゥーナの言葉に、
その場に居た誰もが頭にハテナマークを浮かべる。

「いいですかナンシーさん。
あなたの妹はあなたの物ならなんでも奪ってきたと言いましたね」
「はい、そうですけど」
「これって利用出来ると思いませんか?
グロリアさんの夫を好きなふりをすれば、
必ずあなたの妹が奪いに来ます。
上手くいけば不良物件をまとめてくっつけることが出来ます」
「「それは名案です!」」

グロリアさんとナンシーさんの顔に生気が満ちる。

「それとナンシーさん、あなたの妹との間に共通の友人はいませんか?」
「はい居ますけど」
「その人に協力してもらって、あんたがグロリアさんの夫を好きなことと、
その夫がどこで働いているかとか、
名前と顔の特徴を妹に伝えてもらってください。
そうすれば勝手にあなたの妹は奪いにくるでしょう。
そうしたらグロリアさんは夫から離婚を突きつけられるかもしれません」
「じゃあ夫と離婚出来るんですね!」
「ええ、浮気されて離婚したとなると、
評判が落ちなくてすみますからね
それとブルックさん、両親の介護要員としてゴードンさんどうでしょうか」
「え?」
「ゴードンさんあなたは大工をしていたそうですね。
なら力仕事は得意でしょう。介護も出来るかもしれません」
「確かに子供の頃、ばあちゃんの介護をした経験はあるけど…」
「なら決まりですね。介護要員が増えれば、
ブルックさんも仕事に専念出来ます。
これであなた達の問題は全て解決です」
「「「「ありがとうございます!」」」」

そうして意気揚々と集会に来ていた人は帰っていった。

「すごいですね。フォルトゥーナ。
よくあんなことを思いつきますよね」
「まぁ神として長く生きてきましたからね。
年の功ですよ」

それから私達は集会を主催していた女を警察に突き出した。
その後の彼らの顛末だが、
フォルトゥーナの言ったようにナンシーさんのが好きなふりをすると、
妹は何も考えずにあっさりグロリアさんの夫を奪って、
しかも結婚したらしい。
おかげでグロリアさんは無事夫と離婚が出来た。
姉の選んだ人だから安心と思っていた妹は、
あまりに夫が束縛してくるので結婚して3日で、
結婚したことを後悔したようだが、まぁ自業自得だろう。
そしてブルックさんはゴーンドに両親の介護をしてもらうことで、
仕事に専念できたらしい。
こうして集会に来ていた人の悩みを4人分解消出来たが、
1回話を聞いただけでこれを思いついたフォルトゥーナは天才だなと思った。
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