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第3章謎の少女とダンジョン革命

104・地獄へ

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結局その日は私がテントでトッドが外で寝ることで合意した。

「良かったんですか外で寝て」
「別に野宿は慣れているからいい」

そうトッドは言った。
そして早めに休むことにした。

翌朝、起きた私達は朝食を食べると、
頂上を目指して歩きだした。

「そろそろ山の中腹ですね」
「そうだな」

エリアマップで見た所によると、
どうも『ゲート』は頂上付近にあるらしい。
そうしてウーレアー山を登っていると、昼頃には頂上に着くことが出来た。

「おっ、おいアレを見ろ!!」

トッドが指を指した場所を見ると、
そこに大きな『ゲート』が開いていた。

「さて塞いで…え?」

『ゲート』から2メートルぐらいはありそうな巨大な鳥が現れる。

「《分析》」

【サンダーバード】
【体力】650/650
【魔力】520/520
ランクBに位置する鳥の魔物。
鋭いかぎ爪で人を攫いその肉を貪る。
非常に俊敏で危険。見つけたら逃げることをオススメする。

なるほど逃げた方がいいのか、でもあいつは飛んでるし、
トッドも居るから転移魔法も使えない。
倒しておくか。

「《疾風刃(エア・カッター)》」

私は風魔法でカマイタチを作り、サンダーバードに向けて放つ。
だが空を飛んでることもあって、すぐに避けられる。
そしてこちらに向けて滑空してきた。

「クッ、《風よ》」

風魔法で吹き飛ばそうとするが、
それにもめげずにサンダーバードはこちらに向かってくる。
そしてかぎ爪がこちらに来て―――。

「ッ!」

寸前でかぎ爪をかわすが、かぎ爪が私のローブに当たる。

「うっ、ちょっと」
「お、おいっ」

たちまち宙に上がり、手が何かを掴もうとして、トッドの足を掴む。

「おい、離せよ!!」

そう言われたが、一度掴んだら、離すことが出来ない。
そのままずるずるとトッドの体が引きずられる。

「クッ、この《疾風刃(エア・カッター)》」

サンダーバードに向けてカマイタチを放つとその首と胴体が離れる。
やっと倒せた。そう気が緩む間も無く、私達は重力に従って下に降りる。
そう、口を開いている『ゲート』に向かって――。



「ひゃあああー!!」
「うわぁあああー!!」

見えていた青空があっという間に小さくなり代わりに赤黒い色が空を染める。

「きゃん!」
「うぐっ!」

そして私とトッドは地面に落ちる。

「痛てて…」

柔らかい地面のおかげで助かった。
辺りを見渡すと一面に黒い草が生えている。
どうやらここは丘の上らしい。人らしい人は見当たらない。

「ここは一体…。《エリアマップ》」

するとそこには地獄。第一階層と書かれていた。

「ここは地獄? そっか『ゲート』の向こうに落ちたから」

そういえば『ゲート』の向こうは地獄だと、
だいぶ前に地獄神が言っていた気がする。
そして魔物がいっぱい居るから落ちたらまず助からないと。
でも見た感じ周囲に魔物は居ない。
この丘の上に居るのは私とトッドだけだ。

「ここはどこなんだ?」
「『ゲート』に落ちたから多分地獄だと思います」
「地獄? 本当にあったのか?」

その時、大地が激しく揺れ、私とトッドは尻餅をつく。

「誰だい。アタシを目覚めさせたのは…」

そんな声が響くと丘の形が変わり――いや、ここは丘じゃない。
巨大な山ぐらいある犬の首がこちらを見ていた。
どうやらここはこいつの体の上だったのか。
地面に生えている黒い草は、草じゃなくてこいつの毛か。
魔物が周囲に居ないのも、こいつの体の上だったからか。
そう冷静に分析しつつも、
気絶しないのは色々あって耐性が付いてるから、
普通の人間なら泡をふいて失神しているだろう。
現にトッドなんて気絶はしてないけど、もう漏らしているからな。

「クンクン、この匂い生身の人間だね。
どうして生きた人間がここに居る?」
「『ゲート』に落ちてしまったからです」
「ふぅん、不運な人間も居たものだね。
ん、待てよ。この匂いはもしかして――」

犬の鼻が私に近づく。うわっ鼻息がすごい。

「アンタ、アビス様に力を貰った人間だね!!」

姿もでかいので、声もかなりでかい。
ビリビリと声が体に伝わり、鼓膜が破れるかと思った。

「あ、はい、ソウデス」
「なるほどもう何百人といるからね。あんたのような人間は。
過去に罪を犯し、アビス様に生き返させられた人間は」
「え、そんなに居るんですか?」

タロウ=ヤマダも地獄神によって生き返させられたと聞いたが、
私のように生き返った人が何百人と居るのか?

「そうさ。アンタのような人間は数多く居た。
でも善行によってカルマを全て消したのはたったの2人しかいない。
善行を積むこと程難しいことは無いからね」

たったの2人って何百人と居て2人だけ?
ずいぶんと少ないな。

「そりゃただ生き返るだけだと善行を積むのは難しいのさ。
アビス様があんたに最強の力を渡したのは、
そうじゃないと善行が積めないからさ。
じゃなかったら、あんな力与えないからね」

この人私の思考を読んでる?
地獄神と同じ力を持っているってことは神様?

「そうさ、アタシは影火神アルシノエ。
地獄の第一階層を守護する女神さ」

女神? 犬なのに?

「この姿は仮の姿さ。魔物を倒すにはこの姿がちょうどいいんだ。
そうだね。本来の姿に戻ろうか」

そうアルシノエが言うと、パッと犬の姿が消え、私とトッドは地面に落ちる。
だが何者かが私とトッドの体を掴み、地面に着地する。

「さぁて、アンタ達を地上に送り届けないとね」

そう言ったのは一人の20代程の女だった。
長い髪の色は黒でポニーテールにしてる。
瞳の色は金で肌の色は黒い。
褐色とかそういう色じゃなくて本当に肌は黒だった。
そしてものすごい美人だった。

「あの犬は?」
「あれはアタシが変身した姿さ。
これが本来の姿だよ」

なるほどそういうことか。
しかし、運悪く地獄に来て、神様と出会うなんて私って運がいいのか悪いのか…。
そう感じずにはいられないのだった。
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