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第2章翼蛇の杖と世界の危機

外伝・セツナとタコ

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「またこいつかよ」
「ああ、また網に引っかかってた」

ある日、オデットの港に行くと、数人の男達が何やら話していた。

「どうしたんですか?」
「ああ、実は網に食用でない魚が混ざってたんだよ」

そう言って男は箱に入った魚を見せる。
そこに入っていたのは魚ではなく、どう見てもタコだった。

「こいつはデビルフィッシュって言ってな。
俺達漁師の天敵だよ」
「え、これが?」
「だってこれだけグロテスクな姿をしているし、
ぬるぬるして気持ち悪りぃ」
「食べたりしないんですか?」
「はぁ? 食べたりしないよ。
こんな気持ち悪い魚、食べられるもんか」

なるほどこの世界では、タコは食用ではないらしい。
まぁ日本人の私は考えたことすら無かったが、
確かにタコって気持ち悪い姿してるよな。
なら、教えてあげようタコの美味しさを。
私は鞄の中に手を突っ込んで、
アイテムボックスからタコ焼き器を取り出す。
事前に創造スキルで作っておいて正解だった。

「じゃあ、タコの美味しさを教えてあげます」

私はボウルを手に取ると、
そこに薄力粉と卵と水を入れて泡立て器でかき混ぜる。
あとは貰ったタコをぶつ切りにして、タコ焼き器に油をしく。
そこに混ぜた薄力粉を入れ、タコも入れる。
そして形が整えると、
タコ焼きを皿に移動し、そこにソースを付ける。
鰹節もかけてみたかったが持って居ないので仕方ない。
私は出来たタコ焼きを男達に見せる。

「さぁ食べてみてください」

そう言ったが男達は食べようとしない。
だが美味しそうな匂いに惹かれた一人の男がタコ焼きを口にした。

「美味しい!」

そう男が言うと、他の男達もそろってタコ焼きを口に入れる。

「美味しい、こんなの初めて食べた…」
「生地がふわふわしてて、中のタコがプリプリしててうまいぞ!」
「どうですか、これがタコの魅力ですよ」

そう言うと男達が興奮したように言った。

「今まで捨ててたのがもったいないぐらいだ!」
「ああ、本当だな。これは売れるぞ。
屋台で売れば人気が出ること間違いなしだ」
「嬢ちゃん、この料理の作り方を屋台の奴らに教えてくれないか」
「良いですよ」

私は善行を積まないといけないのでオッケーしておいた。
その後、屋台を経営している人達にタコ焼きの作り方を教えた。
まぁみんな最初はタコを食うのかと抵抗はあったみたいだけど、
タコ焼きを食べるとそれも無くなった。
こうしてタコ焼きは屋台で売りに出され、
すぐに人気となった。私も思わず大人買いしてしまったほどだった。
あの後漁師さんにも様々なタコ料理を教えておいたし、
タコは狭い岩の隙間に入る習性を持つので、
タコツボ漁をすれば捕まえられると教えておいた。

こうしてタコ焼きはオデットの名物料理となるのだが、それはまた別の話。

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