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第2章翼蛇の杖と世界の危機

99・仲間が増えました

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そんなこんなで私達はアアルに戻ってきた。

「雪があんまり溶けてませんね」

一ヶ月経ったというのに、
魔族が降らした雪はあまり溶けて居なかった。
少しは溶けているが、
道路の脇には相変わらず大量の雪が積まれている。
まぁそんな雪のことは置いておいて、私は伯爵夫人の屋敷に向かう。

「帰ってきたか」

屋敷に着いて、伯爵夫人の部屋に向かうと伯爵夫人はそう言った。

「オデットはどうだった?」
「そうですね。色々ありましたが楽しかったです。
ところでアヤはどうしてます?」
「今は部屋に引きこもっている。誰が話しかけても上の空だ」

そうか…。まぁいきなり異世界に来てしまったのだから仕方ないか。

「しかし驚いたぞ。
お前のトラブル体質のおかげで悪人が逮捕できるとはな」
「もしかしてこうなることを予測してました?」
「ああ、あの男爵は前々から良くない噂は聞いていた。
だからあえて泳がせて、証拠を集めていたが、
逮捕出来る程の証拠は集まらなかった。
だがお前のおかげで逮捕することが出来た。ありがとう」
「えへへ…」

伯爵夫人に褒められて私は少し嬉しくなった。

「えへへじゃないわよ。どれだけ私が心配したと思っているのよッ」

そうエドナは睨み付けてくる。

「まぁいいじゃないですか、結果的に助かったんですから」
「あのねぇ…ちゃんと反省しなさいよ」
「お前も苦労するな…」

怒っているエドナを伯爵夫人はどこか同情する目で見ていた。

「そんなことより私が捕まえた悪人達はどうなったんですか?」

話をそらすために私は伯爵夫人にそう聞く。

「ああ、お前が捕まえた盗賊団だがおそらく全員死刑だろうな」
「そうですか」

まぁ人を殺している奴らなので同情はしない。
そこまで私はお人好しじゃない。

「それと人身売買していた奴らだが、
おそらく50年程は牢屋の中だろうな」

うわぁ外に出ることになったら、何も分からなくなりそう。

「そしてサーモンド男爵だが、家族も含め貴族位は剥奪しておいた。
今は牢屋の中で余罪を調べている最中だが、
あまりに余罪が多すぎて調査が長引くかもしれないな」

私に決定的な証拠を見せられたサーモンド男爵はあの後、
観念したのか洗いざらい自分の罪を喋ったらしい。
そして出てくる余罪の中には、盗賊団と関係を持っていたことや、
貧しい家の子供を奴隷として、他国に売り飛ばしていたことや、
汚職や脱税などもあったらしい。
他国に奴隷として、
売り渡された被害者は100人は余裕で越えるとのことだった。
ちなみに男爵の家にあった財産は全て没収されたらしい。
サーモンド男爵が住んでいた屋敷は次の町長が暮らす場所となり、
サーモンド男爵の家族は追い出されることとなった。
まぁ悪いことした恩恵でぬくぬく暮らして居た奴らなので、同情はしない。
例え何も知らなくても、人を不幸にして幸せに浸かっていたのだ。
その責任は重いと知れ。

「サーモンド男爵だが余罪の多さからすると、無期懲役か死刑になると思う」

つまり死を回避出来たととしても一生牢屋の中ってことか、
何というか気の毒だな。

「それとサーモンド男爵の罪が明らかになると、
それと関係していた奴らも逮捕することになってな。
その中にオデットの警察の副署長も居てな…」

どうもその副署長というのは、
サーモンド男爵から賄賂を受け取ることで、
罪をもみ消したりしていたらしい。
それがサーモンド男爵を調べるうちに出てきたのでさぁ大変。
自分に隠れてそんなことをしていたのかと、
警察署の署長は大激怒したらしい。
ちなみに私を殴って気絶させたマリーというメイド長も、
サーモンド男爵と共に悪事を働いていたらしい。
そんなこんなでサーモンド男爵と繋がっていた悪人共は、
全員ブタ箱に入ることとなった。

「まぁサーモンド男爵の件はこんなものだな。
ちなみにオデットは信用出来る人間を次の町長にしておくから、大丈夫だ」

まぁ伯爵夫人が選ぶなら今度はまとも人が町長になるだろう。
それなら一安心だ。

そうして私は伯爵夫人とは別れ、領主邸の自分の部屋に戻ってきた。
外を見るとすっかり暗くなっていた。
まぁずっと馬車の中だったので疲れはたまっている。
私はベッドに横になると、疲れていたのかあっという間に寝てしまった。



「ん…」

外を見るともうすっかり明るくなっていた。

「朝か…」

【カルマ値が100消えました。善行・盗賊退治】
【カルマ値が100消えました。善行・奴隷密輸の阻止】
【カルマ値が50消えました。善行・男爵の逮捕】

おお一気に消えたな。ステータスはどうなっているだろうか。
そう思って身動きすると何かが当たる感触がした。
布団の中に誰かが居る!
私はすぐに布団をめくる。

「おはようございます」

そう涼しい顔で言ったのは一人の20代ぐらいの美女。
美女と言ってもエドナとは少し感じが違う。
エドナがきつめの美人なら彼女は見る人に安心感を与える美女だ。
聖母みたいに包容力がありそうな容姿をしている。
腰まである絹糸のような金髪は三つ編みにされていて、やや垂れ目な瞳の色は紫。
ちなみに胸は巨乳。スタイルもかなり良い。
服は長袖の服にスカートを着ていた。

「あなた誰です? なんで私の布団の中に?」

そう言うと女の姿がぼやけ、翼の生えた黄金の蛇の姿になる。
といってもあの時とは違い、部屋に収まるサイズだが。

「あなたってあの時の蛇ですか、なんで私の部屋に…」

そう言うと蛇はさっきの女性の姿に戻る。

「天上界に戻ろうかと思いましたが、あなたのことが気になってしまって」
「私のことが?」
「どうしてあなたは地獄の神と面識があるのです?」
「うっ」

何で私が地獄神と面識があることを知っているんだ。
いくらなんでも私が皇帝にカルマを移され、
このままだと他人が犯した罪で地獄に行くので、
それを回避するために一度生き返り、
善行を積まなければいけないなんて言うわけにはいかない。

「ふむふむ、大体の事情は察しました」
「え?」
「わたくしは人の心が読めるのです」

あー! しまったーー!!
地獄神も人の心が読めるから、
神様であるこの美女が心が読めても不思議ではない。

「まぁ神といってもわたくしは半神ですが」
「え、阪神?」

え、何、野球好きなの?
そう思っていると彼女が吹き出したように笑った。

「そうではなく、半神というのは半分人間で半分神の者を指すのです」

ああ、半神っていうのはそういう字を書くのね。なるほど。

「なるほどそれで私にその半神が何の用なわけです?」
「私をあなたの仲間にしてほしいのです」
「え? 神様なんでしょ、天上界に帰らなくていいんですか?」
「天上界にとって半神はただの性奴隷ですからね。
天上界に戻って、神々にいじめられるより、
あなたと一緒の方が良いのです」

なんか深い闇を見た気がする。
神様の世界にも性奴隷ってあんの?
バーン王国ではもう奴隷は廃止されてるのに…。
神様が性奴隷って…。

「それにわたくしは光属性の魔法が使えます。
回復魔法なら任せてください」

ひょっとしてシビルさんが言ってた強力な癒やし手って彼女のこと?
回復魔法が使えるなら歓迎しようじゃないか。

「うん、じゃあ。よろしくお願いします」

こうして仲間が一人増えたのだった。
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