上 下
16 / 244
第1章過去と前世と贖罪と

15・『ゲート』

しおりを挟む

数の暴力、何それおいしいの?
魔物が10体ぐらい襲いかかってきたが、所詮は雑魚。
私とエドナの敵では無かった。

「《疾風刃(エア・カッター)》」

私の手から生まれたかまいたちが魔物を切り裂く。

「…ッ!…ッ!…ッ!《火棘(ファイアー・ニードル)》」

その後ろでは、エドナが魔法を使って魔物を倒していた。
針のような形をした炎が敵を刺し貫く。
後から聞いたのだが、魔物というのはそれぞれに急所というものがあり、
全体を焼くより、その急所を狙った方が魔力が少なくて済むのだという。
エドナは的確に魔物の急所を狙い、絶命させてゆく。
その手際はかなり良い。
最早私が居なくても大丈夫なんじゃね?ってぐらい。
だって普通魔法使いは魔法を使う時にいちいち、詠唱しないといけないので、
その間、誰かに守ってもらう必要があるが、
彼女はそんな必要などまるで無かった。
詠唱速度が早すぎて、最早聞き取れないレベルだからだ。
あれだ。
早口言葉とか言わせたら、ギネス取れるんじゃね?ってレベル。
これはたぶん、スキルの高速詠唱とやらのおかげだろう。

しかし初めて誰かと戦ってみたけど、
これほど頼もしいと思わなかった。
仲間ってこういうのを言うのかもしれない。
そんなほわほわした気持ちで居たせいだろうか、
魔物が私に飛びかかってきたことに気づかなかった。
いきなりのことに私の頭は一瞬フリーズする。
だが突然、その魔物の眉間に短剣が突き刺さる。

「戦闘に集中しなさい!」

そう言われたので、
エドナの方を見ると、おそらく彼女が短剣を投げたのだろうか。
だが今の彼女は完全に手ぶらだ。
いくら魔法が早く使えるとはいっても、今の彼女は無防備である。
その時、エドナの背後に犬みたいな姿をした魔物が近づいてきた。

「エド―――」

しかし魔物の牙がエドナに刺さることは無かった。
それより先にエドナが隠し持っていたナイフを、
魔物の眉間に突き刺したからだ。

「……すごい」

エドナはナイフを魔物の体から引き抜くと、私を見た。
はいはい。自分のことはいいから、目の前の戦闘に集中しろね。
サッカーで言うアイコンタクトだろうか。
その時、エドナが思っていることがこちらに伝わってきた。
言われた通り、私は目の前に迫ってくる魔物をひたすら倒し続けた。
そうして太陽がてっぺんに登った時、ようやく戦いが終わった。

「はぁ…疲れた」

私は地面に寝っ転がる。草の良いにおいがする。
新緑の葉っぱに彩られたその森の名前はドルイドの森と言うらしい。
私が最初に訪れたケルトの森より、さらに南の方にある森だ。
ちなみにアアルはその間に存在している。

「しかし随分と多かったですね。
かなり倒した気がするんですけど…」

最初現れた時は10体ぐらいだったが、
魔物が仲間を呼んだのかだんだんと数が増えていった。
最初は数を数えていたのだが、
まとめて倒しているうちに分からなくなった。
ほとんどは私が倒したが、
それでも数が多いことには代わり無かった。

「そうね……今は昼間なのにこの数の多さ…まさか」

そう言うと、エドナは地面に落ちた魔石を拾うのを止め、立ち上がった。

「まさか『ゲート』が開いているんじゃないでしょうね」
「『ゲート』?」

そう聞くと、エドナは呆れたようにため息をつくと、説明してくれた。
『ゲート』というのは、魔物が湧いて出てくる穴のことらしい。
いつ現れるのも不明。なぜ現れるのかも不明。どこに繋がっているかも不明。
謎が多く、確かな事はそれを放っておけば、魔物は無限に現れるという事らしい。

「………ヤバイじゃないですか」
「……これは一旦帰ってギルドに報告する必要があるかもしれないわ」
「その『ゲート』を塞ぐことは出来ないんですか?」
「…そういえばあなたは無属性持ちだったわね。結界魔法は使えるの?」
「使えると思いますよ」
「なら、一緒に行きましょう。
ただ問題はどこに『ゲート』が開いてるかなんだけど…」
「それは大丈夫です。場所なら分かりますから」

そう言うと、私はニッコリと微笑んだ。



エリアマップを使えば、『ゲート』が開いている場所なんて一目瞭然だった。
ちなみにエドナに聞いたところ、
エリアマップという魔法は聞いたことがないらしい。
なので周辺の地図を表示する魔法だと言ったら、めちゃくちゃ驚かれた。
何でもそんなことが出来たら、
もう冒険者達が勧誘するどころの問題ではないらしい。
何かの偉い組織(名前忘れた)に引き抜かれてもおかしくないと言われた。
その偉い組織は、私みたいな聖眼持ちも多く働いているらしい。

「こんな地方都市で働くよりも、
贅沢で安定した生活が送れると思うけど、
そういうのには興味ないの?」
「確かにそんな生活が送れるなら送ってみたいですけど、
自由がないなら、そんなものいりません」
何故だろうか。私の頭の中には、
権力者とか偉い人に仕えて、
お金をもらって生活するという選択肢は最初から無かった。
そういうものにまるで魅力を感じないのだ。
それよりは、自分で選んで仕事をした方が良い。

「あなたは自由が好きなのね」
「だって自分で好きな物が食べられて、自分で住む場所も決められて、
誰にも束縛されることなく、
自由にどんな所にでも行けるって、とっても幸せじゃないですか」
「でも自由というのは、同時に責任もあるのよ。
全て自分1人でやらないといけないから、
何かあった時、その責任も全て自分が負うのよ。その覚悟はあるの?」
「そんなデメリットなんかよりも、自由でいる方が何倍も良いですよ。
それに何かあった時は、ちゃんと人を頼ります。
自分1人で何でも出来るっていうのは、傲慢ですよ」
「あなたはずいぶんと変わっているわね。
普通あなたのような能力を持っていたら、
もっと傲慢になりそうなものだけど」
「だからですよ。こんな能力を持っているから、
逆に普通の人より、謙虚にならないといけないんです」

私は地獄神から最強魔力を与えられた。
こういう時、他の人間だったら、
調子に乗ったりしそうなものだが、私はいたって冷静だ。
それは私がこの力を使って悪いことをすれば、
地獄に落ちてしまうというのもあるが、
散々調子に乗って、テレビで叩かれまくった先人達の存在が大きいだろう。
誰だって上手くいっている時は、
有頂天になるが、そういう時に限って周りに落とし穴があったりする。
そこに落ちてしまうと天国から一転、地獄に落ちてしまう。
だからこそ、頂点にいる時は、
謙虚に振る舞い、周りの人を大切にしないといけないのだ。

「…私はその逆の人間は嫌という程、見てきたけど、
あなたみたいなことを言う人は今まで居なかったわ。
念のために聞くけど、
あなたの能力があればこの国を支配することも簡単だと思うけど、
そういうことには興味ないの?」
「無いです。全く魅力に感じません」

はっきりとそう言うと、エドナは不可解そうに首をかしげた。

「あなたって本当に変わってる…」
「そうですか? …って魔物です!」

会話をしていると、目の前にまたたくさんの魔物が現れた。
どうやら『ゲート』に近づくにつれて、魔物が増えているようだった。
そこから会話は特になく、
エドナと一緒に魔物を倒しながら進んでいると、
やがて『ゲート』の元にまで来れた。

「これが『ゲート』ですか」

木々が立ち並ぶ森の中、ぽつんとその穴は存在していた。
大きさとしては、マンホールぐらいだろうか。
その穴は暗く、色は一遍の白すらも無い、黒だった。
穴の周りには、どす黒い煙のようなオーラが出ていた。

「思ったより、小さいわね。
ねぇ簡単な結界魔法でいいから、この穴に結界を張ってくれない?
これ以上魔物が出てこないように、簡単なやつでいいから」
「わかりました。えっと結界魔法は…」

使えそうな魔法がないか、私は手帳を取り出す。
すると目次に新たな項目が増えていた。
そこには『ゲート』の閉じ方と書かれていた。

「………おい」

地獄神よ。あんた…本当に地獄の神様なのか?
まるで狙いすましたように、
絶妙なタイミングで親切に情報提供してくるので、そう思ってしまう。
まぁ助かるので文句はないが、何か腑に落ちない気もする。
地獄の神様なのにこんな親切でいいんだろうか…?
そんなこんなで、手帳を見ると穴の塞ぎ方の手順が載っていた。

「《縫合結界(スレッドバリア)》」

私の指先から白い糸のような魔力が出る。
これは糸型の結界で、基本的に何があっても切れないし、破れない。
糸は穴にたれると、無数に枝別れし、穴の端から端まで広がっていく。
糸はカゴのように無数の網目を穴の表面に張り巡らせた。

「えーとこれを引っ張って」

私は指先から出る糸を調整しながら、
真ん中に向かって糸が収束していくようにする。
それに伴い穴は小さくなっていき、やがて消えていった。

「出来ました…ってエドナさん!?」

顔を上げるとエドナがゲンナリした顔で頭を抱えていた。

「…最早ツッコむ気力すらないわ」
「えっ、何か変なことしましたか?」
「した、すっごくした。あなた今『ゲート』を完全に閉じたわよね。
これって普通は、やろうと思ったらかなり時間のかかることなのよ」
「えっそうなんですか」

エドナの話によると、
『ゲート』というのは完全に消す事は難しいらしく。
魔法を使って閉じようとしても、詠唱するだけで何時間もかかるらしい。
そのため普通は穴の周りに結界を張り、
自然に消えるのを待つのが一般的らしい。
そうすれば穴もこれ以上広がらないし、
魔物も出てくることが無いので安心だ。
しかしこれだけ短時間で、
『ゲート』を閉じれる能力を持つことが他の人間にバレたら、
おそらくありとあらゆる権力者が放っておかないとエドナは言った。
魔物の出す被害に悩まされている国は多いからだ。

「とりあえず何も見なかったことにするわ」

エドナがそう言ってくれて助かった。
てゆうかこの『ゲート』って一体何なんだろう。
何でここから魔物が出てくるんだろうか。

「『ゲート』って、どこに繋がっているんでしょうか?」
「さぁ?それはわからないけど、
ただ一説には『ゲート』は地獄に繋がっているとも言われているわ」

地獄という言葉を聞いて、私はギョッとした。
私の頭に地獄神の顔が浮かぶ。
この穴が本当に地獄に繋がっているというのなら、
まさか地獄神が魔物を作り出している…なんて事は無いよな。
じゃあもう完全にラスボスじゃん。
だって世界を裏で操る神を、主人公とその仲間が倒すと言うのは、
ゲームではよくある展開だしな…。

あれ…? もしそうなら、
どうして私に『ゲート』の閉じ方を教えたのだろうか。
…ああ、分からん。地獄神が何考えてんのかさっぱり分からん。

「まぁあくまで仮説だけどね。
どこに繋がっているのか、
確かめに『ゲート』の中に入っていった人間は多いけど、
帰ってきた人間は誰も居ないわ」
「そうなんですか…あの少し質問いいですか?」
「いいわよ。何でも聞いて」
「この世界って、一体どういう構造になっているんです?」
「は?」

そう言うと、エドナは驚いた顔をした。

「地獄があるって事は知ってるんですけど、
この世界って一体どういう感じになってるのかな…って」
「そんなこと、一介の人間の私が知るはずがないじゃない…」

ですよねー。
自分で質問しておきながら、この質問は少し軽率だったと思った。

「じゃあ、地獄神アビスって知ってますか?」

そう言った時、エドナの顔が凍りついた。

「あの、聞こえませんでしたか、地獄神アビ――むがっ」

もう一回言おうとした時、エドナに手で口を塞がれた。

「な…何を考えているの!?
そ、その……な、名前を軽々しく言うなんて…!」

エドナは珍しく、激しく動揺しているようだった。
その様子はまるで何かに怯えているようだった。

「いい? 今後一切、私の前でその名前を口にしないで!」

私がコクコクと頷くと、エドナは手を離してくれた。

「ごめんなさい。そんな言ったらいけないことだとは知らなくて…」

そう言うと、エドナは左手で顔を覆った。。

「ここまで世間知らずとは…」
「そんなに言ったらダメなんですか、じ…あの人の名前は?」
「……相手が私だったから良かったものの、
他の人間だったら一生避けられていたわ…。
だから絶対に人前では、その名前を言ってはいけないわ」
「え? そうなんですか?」
「そうよ。それぐらいに軽々しく名前を言ってはいけない存在なのよ。
だからこの話はもうこれで終わり。
私だって自分の命がおしいのよ……。
知りたいのなら、図書館にでも行って自分で調べなさい」
「はい、そうしてみます…」

そういったものの、気になった事は気になった。
ただの神様と思っていたけど、
エドナをここまで怯えさせる地獄神って一体何者なんだろうか。
でも聞いたところで、エドナが教えてくれるはずがないから、
自分で調べないといけないな。

そう思っていたら、また魔物が現れた。
どうやら『ゲート』を閉じたからといって、
魔物が居なくなるわけではないらしい。
あくまで新たに現れる魔物を防ぐだけらしい。

「これ終わったら、ご飯食べませんか?」
「そうね…そうしましょう」

エドナは大きく、ため息をはくとそう言った。



そうして、魔物を全て倒し終わると、
私はアイテムボックスからバスケットを取り出した。

「はりきって作っちゃったんですよ」

私はバスケットを開ける。中に入っているのはサンドイッチだ。
町を出る前に、エドナが宿に荷物を取りに行きたいと言ったので、
エドナが準備している間に、宿の人に頼んで厨房を借りて、作ったのだ。

「これってどういう料理なの?」
「私の故郷に伝わるサンドイッチと言う料理です。
食べてみてください」

あまり見たことがない料理だったのか、
エドナは恐る恐るサンドイッチを手に取って口に運ぶ。

「………」
「どうですか? 口に合いませんでしたか?」
「いえ、とても美味しいわ。でもこれどうやって作ったの?」

そう言われたので、私はエドナに作り方を説明した。
材料は市場で買ったものを使った。
といっても、食パンはあんまり柔らかくなかったので、
テレビで見た固いパンを柔らかくする裏技を使ってみた。
まぁそれには電子レンジが必要だったが、
試しに加熱魔法で代用してみたら上手くいった。
で柔らかくなった食パンを均等に切り分けて、野菜とハムを乗せて、
自分で作ったマヨネーズをかけて、そこにパンを乗せれば完成。

「って、感じです」
「……加熱魔法をそんな風に利用するなんて、
あなた、ただ強いだけじゃなくて、発想力もすごいのね」

そう言いつつ、
エドナはよほどサンドイッチが気に入ったのか、黙々と食べていく。
私の味覚とこの世界の人の味覚は違うかもしれないと思っていたけど、
そんなことはなくてよかった。
そういえば厨房を貸してくれたお礼に、
宿の従業員の人にもいくつかサンドイッチを配ったが、
その人達もおいしいと言っていた。
何でもこんな風にパンに何かを挟むと言う、
料理はあまりこの国にはないらしい。
パンの調理法はせいぜいちぎって食べるか、
スープにつけて食べるぐらいらしい。
なので今度是非作り方を教えてくれと言われた。
もちろん私は善行を積まないといけないので、オッケーしておいた。

「料理だけは得意なんですよ。お菓子を作ったりするのも好きです」

そう言うと私はアイテムボックスから、袋に入ったお菓子を出した。
これはサンドイッチを作る時に、
切り取った食パンのみみを砂糖で炒めたものだ。

「へぇ、こういうのも作れるの」

エドナはパンのみみを一つ口に入れると、そう言った。

「家では1人で居ることが多かったですから、
趣味と言ったら、
料理ぐらいしかなかったんです。うちは母子家庭でしたから」
「……そうなの」
「あ、お母さんがいたから全然寂しくなかったですよ?
ただお父さんって存在が未だによく分からないんですよね…」

私は自分で作ったサンドイッチを食べながらそう言う。
人間、食事をとっている時は気が緩むのか、
聞かれてもいない自分のことについてポロリと喋ってしまった。
それがふと気まずくなり、私は話しを変えることにした。

「あ、そんなことより、
私って前にエドナさんと出会ったことがありますか?」

地獄神はエドナと私は初対面ではないと言った。
そのことを聞くつもりが、今まですっかり忘れていた。

「そんな事は無いと思うけど?」

しかしエドナはあっさりと否定した。

「そうですか?
前にどこかでお会いしたような気がするんですけど」
「…あなたの場合、聖眼を持っているから、
一度でも出会えば記憶に残ると思うのよ。
でも私にはそんな覚えは無いわ」
「あの、聖眼を持っていないかもしれないんですよ」
「え? どういうこと?」
「えーっと、前の私は聖眼は持っていないかもしれないんです」
「でもあなたの場合、どう見ても先天的なものだと思うけど…」
「そうなんですけど、
聖眼を持っていない私とどこかで出会った可能性はありますか?」
「それは絶対にあり得ないわ」

エドナはきっぱりと否定した。

「あなたは別の大陸から来たんでしょう?
でも私はバーン王国から出たことがないの。
例え記憶が無くなるまで、
飲んだとしてもそこに辿り着くのは不可能よ」
「飲むって何を飲むんですか?」
「何ってお酒に決まってるじゃない」
「え? お酒好きなんですか?」
「昔は好きだったけど、今はそんなに飲んでないわ。
私、お酒を飲むと大概記憶を無くすことか多いから、飲めないのよ」
「き、記憶無くすんですか?」

それかなり危ないんじゃないのか…。

「そうよ。それに私とお酒飲むと、
何故か次からみんな一緒に飲んでくれなくなるのよ。
それどころか、禁酒を進めてくることが多くて…」

どんだけ酒癖悪いんだ…。
えっとエドナに酒は飲ませない方が良いのかな。

「そういうわけだから、
私が以前にあなたと出会ったと言う事は無いと思うわ」

…どういうことだ。地獄神はこれが初対面じゃないと言った。
でもエドナは身に覚えがないという。
うーん、
ひょっとして初対面は馬車の中で出会った時のことを言ったのだろうか?
いやそれだったらあんな紛らわしい言い方しないよな…。
うーん、分からん。まぁこの件は次に会った時に聞こう。それよりも…。

「なら、どうしてエドナさんは私に親切にしてくれるんですか?」
「親切?」

その言葉を聞いて、エドナは眉をしかめた。

「親切…確かに見方によってはそうかもしれないわね。
……何故出会ったばかりのあなたに対して、こんな風に世話を焼くのか。
それは自分でも良く分からないわ。
でも、あなたがこれからどんなことに巻き込まれそうかは予想は出来る。
あなた確かに強い。それは認めるけれども、同時に見ていて不安になるのよ。
このままだと、
とてつもないことにあなたが巻き込まれるような…そんな予感がするの。」

止めてー。そんなあからさまにフラグを立てないでー。
まぁもう巻き込まれているけどね。他人のカルマを背負わされてるし。

「…そんなことが分かるんですか?」

「ええ、凄い才能の持ち主っていうのはね。
本人の意思に関わらず、人が集まるものなのよ。
それこそ、良い人間も、悪い人間も集まるわ。
あなた、さっき自由が良いって言ったけど、
あなたの持っている能力からすれば、それは難しいかもしれない。
現に今だって、空間術の力が周囲にバレただけで、大騒ぎになったじゃない。
あれと同じようなことが、これからもあなたの身に起きるかもしれないわ」
「…まぁ気をつけるから、大丈夫ですよ」
「……気をつけて、防げる事だったらいいんだけどね」

――その時の私は…エドナの言っていることを半分も理解していなかった。
能力なんて隠していれば周囲にはバレないだろうと、本気で信じていたのだ。

そしてこの時、私は完全に忘れていた。

私のカルマは、不幸を呼び寄せることがあるということを。

そしてそれに――――。

エドナが巻き込まれてしまうことになるなんて――――。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:133,268pt お気に入り:8,521

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,745pt お気に入り:3,060

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,830pt お気に入り:1,560

処理中です...