強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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パートナー試験

パートナー試験②

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9時頃に帰宅をするとすでに照明がついていて、ほのかに鼻を掠めたコーヒーの香りに大好きな彼の存在を感じた。

「お帰り、幹斗君。」

ドアの音で帰宅に気づいたのか玄関まで来てくれた由良さんが、柔らかな笑みを浮かべながらぎゅっと俺のことを抱きしめてくれる。

「あの、…ただいま、帰りました…。」

彼の香りや温もりに酩酊しながら顔を上げれば、優しく細められた紫紺の瞳がすぐ近くまで来ていた。

どうしよう、顔、熱い…。

「うん、おかえり。かわいい。」

凛とした低い声が鼓膜を撫で、心臓がとくんと跳ねる。

同居を始めても、同じ戸籍に入っても、いつだって彼がそばにいるだけで、俺の胸は締め付けられるように疼き、すこし苦しい。

しかし同時にいちばん心が落ち着く瞬間は彼の腕の中で眠っているときなのだから、なんだか矛盾しているなと思う。

一つ確実に言えるのは、由良さんが大好きだということだ。

きっと由良さんが歳をとって、白髪とかが目立ち始めたそのあとでも、まだドキドキしているだろうという確信がある。

もっとずっと先の未来になったら、それがなくなって愛と幸せだけになるのかな。想像するとくすぐったい。

「どうかした?」

声とともに由良さんの人差し指にうなじをゆるく擦られ、自分が少しの間フリーズしていたことに気がつく。

「あっ、その、…見惚れてました…。」

正直に答え、言ってから恥ずかしくなった。

羞恥に耐えきれず俯こうとしたのに、由良さんはそれを許してくれず、顎にそっと手を添え俺に上を向かせる。

「僕に?それは光栄だな。いい子。」

悪戯っぽく笑みながら甘いglareを放たれれば、どくん、と身体中に電流のような刺激が走った。

いけない。Sub性が彼の支配を求めて暴走してしまう。

脳が蕩けるように酩酊し、心臓はずんずんと脈打って、下腹部は切なく疼いて。

「幹斗君?」

戸惑うような由良さんの声が上から降ってきて、はっとした。
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