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番外編 〜2人の夏休み〜

モートン島と最後の1日③

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「…眠れない?」

最後の夜、ベッドの中で尋ねれば、腕の中の幹斗君がゆっくりと目を開いて頷く。

「はい。なんだか、…寝ちゃうのがもったいなくて。今日で最後だから。」

答えた彼の声は少し気怠げで、それでいて憂いを帯びていた。

とても美しい。

そっと彼の頭を撫で額に唇を寄せれば、白い頬が赤く染まった。

「お酒でも飲む?」

ふと思い立って聞いてみる。

過剰な摂取は身体に悪いが眠れないときに少し入れるのは気持ちを落ち着かせてくれるかもしれない。

「あるんですか?」

彼が驚いたように顔を上げ、あどけなく目を瞬かせる。

「散歩がてらその辺で買ってくるよ。」

「俺も行きます。」

「疲れていない?大丈夫?」

「由良さんがそばにいない方がいやです。」

…ああ、愛しいな。

何か胸に熱いものが込み上げる。

起き上がりいそいそと着替え始めた彼のその背中を、抱きしめて今すぐにでも肌を重ねてしまいたいと思うのは、勝手だろうか。

「…星、綺麗だといいな。」

手を繋いで部屋の外に出ると、彼がどこか空を仰ぎながら紡ぐ。

「幹斗君は星が好きだね。」

「近くにプラネタリウムがあったんです。歩いても30分はかからないくらいの距離で、中高のときよく行っていました。」

「情緒的な趣味だね。」

「ありがとうございます。」

例えば、照れ臭そうに目を伏せる、その表情の儚さが好きだ。

僕の左手と手を繋いだときに無意識に僕の薬指の指輪を親指で擦る、その仕草が好きだ。

「由良さん、どうかしましたか…?」

彼が不思議そうにこちらを振り返る。

彼の好きなところをあげればきりがない。

けれどなにより好きなのはその檜肌色の瞳が吸い込まれそうに僕を映す瞬間だと、今彼の瞳を見てそう思った。

「…いや、君が好きだよ。」

素直に返せば幹斗君は顔を赤くして俯く。

見上げた空に輝く星は随分と綺麗だ。

きっと君が隣にいて、僕を愛してくれるからだね。
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