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番外編 〜2人の夏休み〜

モートン島と最後の1日②

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砂浜を歩いた後はあまりやることがなくなり、ラウンジの人をダメにするソファーに座りゆっくりゲームをして過ごした。

意外にも幹斗君が一番楽しそうにしていたのはサイコパス心理テスト。

僕も幹斗君もあまりにサイコパスに当てはまらなかったから、途中からはサイコパスが選ぶ答えを予想するゲームになっていたけれど、当たると彼が愛らしく笑うのがとても幸せで、つい時間も場所も忘れて耽ってしまった。

観光客はほとんどがホエールウォッチングに行ってしまったから思いの外ゆっくりできてしまい、今はもう外がほの暗い。

「由良さん、見てください、一番星。」

外に出るなり幹斗君がはしゃぎ気味に指差した方に目を向けると、海と空の境界が茜色に染まっており、もうすでに藍色になった空には三日月と一番星が浮かんでいた。

うっとりと空に浮かぶ月を見つめる彼に昨夜海辺で涙を流していた横顔を重ね、愛しさがこみ上げる。

旅行の残りの日数を数えてしんみりとする気持ちはわかるが、それで悲しくなって泣く姿を見てしまったから抱きしめずにはいられなかった。

「一緒に写真を撮ろうか。」

「はい。」

「少し待っていて。」

近くにいた女性2人組に携帯を渡し、一番星と月が映るように写真を頼む。

彼女たちは快く、むしろ嬉しそうに引き受けてくれた。

「撮りますね。もう少し近づいて…はい、ポーズ。もう一枚行きますよー。」

“近づいて”と言われ幹斗君の肩を抱くと彼は一気に緊張で身体を強張らせ、あまりの微笑ましさに口元が綻ぶ。

「撮れましたよ。確認お願いしますー!」

「ありがとうございます。」

写真はとてもよく撮れていて、幹斗君も喜んでくれた。

時計が18時過ぎを示している。

そろそろイルカに餌をあげる体験の時間だ。

濡れると聞いていたが、着替えを持ってきたのでおそらく問題ない。

「そろそろ行こうか。」

「はい!イルカに会うの、楽しみです。ご飯ちゃんと食べてくれるかな?」

イルカ、という言葉を目を輝かせながら語る幹斗君の声は明るく弾んでいる。

「可愛い顔してる。」

「またっ…そういうこと、言う…。」

「いけない?」

「……嬉しいです…。」

小声で紡がれたその言葉のあまりの可愛さについ唇を奪ってしまった。

そのあとイルカに餌をあげている最中の幹斗君はさらに可愛くて、将来は何かペットでもと思ったけれど、それだと旅行ができなくなるから少し難しいかもしれない。
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