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番外編 〜2人の夏休み〜
幸せと寂しさ②
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左右に並ぶ屋台の間を手を繋いだままゆっくりと進んでいく。
どちらかと言うと食べ物よりは雑貨や衣服のお店が多く、店頭に並ぶ光るアクセサリーなどが夜闇によく映える。
その中の一つに周りの光を反射しながら輝くくるくる回る装飾品があり、俺はそれに惹きつけられてつい足を止めた。
…すごく綺麗だ…。
「どうかした?」
由良さんが耳元で囁く、その声音の優しさに、胸が切なく締め付けられるような心地がする。
夜風が肌を刺す中で、彼と手を繋いだところがじんわりと温かい。
「あれ、綺麗だなと思って。」
「ああ、コスモスピナー。」
「コスモスピナー…?」
「うん。確かそう言う名前だったと思う。周囲の景色を映しながら風の力で回るんだって。」
聞き慣れない言葉を繰り返して問えば、由良さんが答えながら端正な唇に綺麗な笑みを浮かべる。
彼の瞳が向こう側に揺らぐ海と同じ色をしていると気づいた時、つくづく夜が似合う人だと、改めてそう思った。
そしてこんなことまで知っているなんて、やっぱりすごい。
「名前、初めて知りました。」
感心している俺に対し、彼は“たまたま知ってただけだよ”と少し恥ずかしそうに笑む。
「気に入ったのがあれば思い出に一つ買おうか。」
「えっ、あの、大丈夫です。」
「写真みたいな直接的なものもいいけれど、これを見て僕たちだけが今日を思い出す、そんな媒体も素敵だと思わない?」
…確かに…。
それにしても彼の言うことはいちいちロマンチックすぎて心臓に悪い。
“どれがいい?”と尋ねられ、真ん中に虹色のホログラムの入った星型のものを選ぶ。
由良さんは上から吊るされているそれを丁寧に取り外して店員さんの方へ持っていくと、何やら少し談笑した後で戻ってきた。
包装されたコスモスピナーを片手に持っている。
家に帰ったらどこかに飾って、見るたびに今日を思い出すのだろうか。
ふと、残りの日数を考えて寂しくなった。
どちらかと言うと食べ物よりは雑貨や衣服のお店が多く、店頭に並ぶ光るアクセサリーなどが夜闇によく映える。
その中の一つに周りの光を反射しながら輝くくるくる回る装飾品があり、俺はそれに惹きつけられてつい足を止めた。
…すごく綺麗だ…。
「どうかした?」
由良さんが耳元で囁く、その声音の優しさに、胸が切なく締め付けられるような心地がする。
夜風が肌を刺す中で、彼と手を繋いだところがじんわりと温かい。
「あれ、綺麗だなと思って。」
「ああ、コスモスピナー。」
「コスモスピナー…?」
「うん。確かそう言う名前だったと思う。周囲の景色を映しながら風の力で回るんだって。」
聞き慣れない言葉を繰り返して問えば、由良さんが答えながら端正な唇に綺麗な笑みを浮かべる。
彼の瞳が向こう側に揺らぐ海と同じ色をしていると気づいた時、つくづく夜が似合う人だと、改めてそう思った。
そしてこんなことまで知っているなんて、やっぱりすごい。
「名前、初めて知りました。」
感心している俺に対し、彼は“たまたま知ってただけだよ”と少し恥ずかしそうに笑む。
「気に入ったのがあれば思い出に一つ買おうか。」
「えっ、あの、大丈夫です。」
「写真みたいな直接的なものもいいけれど、これを見て僕たちだけが今日を思い出す、そんな媒体も素敵だと思わない?」
…確かに…。
それにしても彼の言うことはいちいちロマンチックすぎて心臓に悪い。
“どれがいい?”と尋ねられ、真ん中に虹色のホログラムの入った星型のものを選ぶ。
由良さんは上から吊るされているそれを丁寧に取り外して店員さんの方へ持っていくと、何やら少し談笑した後で戻ってきた。
包装されたコスモスピナーを片手に持っている。
家に帰ったらどこかに飾って、見るたびに今日を思い出すのだろうか。
ふと、残りの日数を考えて寂しくなった。
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