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番外編 〜2人の夏休み〜

幸せと寂しさ①

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夕食は泊まっているホテルとは別のホテルの有名なバイキングだった。

デザートのケーキがあまりにも充実していたせいで食べ過ぎてお腹が重い。

「…もうお腹いっぱい…動けません…。」

「じゃあ抱っこして帰る?」

「!?」

特に何も考えずに発した言葉へのまさかの返答に驚いて固まった俺に、目の前の彼は悪戯っぽい笑みを浮かべ、自然に腰へと手を回した。

一見からかっているだけのようにも映るが、目はかなり真剣でglareも放っていないのに背筋が震える。

お腹がはちきれそうで苦しいのに、さらに心臓までどきどきして苦しくなった。

…今すぐにでもコンクリートの上に跪いてしまいたくなるから、そんな風に俺のSub性を刺激しないでほしい。

「…だ、大丈夫です…」

「そう?残念。じゃあ腹ごなしに夜市に行こうか。」

「はい。」

由良さんに差し出された手を取り、浜辺を目指して歩いていく。

俺たちの泊まっているホテルの部屋から見える海の浜辺では、決まった曜日に夜市が行われ、今日がその日らしい。

「バイキング、何が一番美味しかった?」

「デザートのケーキはどれも一番でしたが…料理だと牡蠣が美味しかったです。さすが海辺ですね。」

「そういえば牡蠣を食べる前に色々携帯で検索していたよね。産地でも調べていたの?」

「いえ、色んなサイトを参考に、いくつまでなら食べても大丈夫そうかを確率的に考えていたんです。…由良さん…?」

突然由良さんが口元に手を当て笑いを堪えるような仕草をした。

何か変なことを言っただろうか。

「…いやっ…くくっ…、すごく理に適った考え方だねっ…。」

やばいめちゃくちゃ笑われている。

理に適っているのならそこまで笑うことでもないのでは…とも思うけれど、由良さんが笑ってくれるならそれで嬉しい。

「あっ、ここだ。すごいね、屋台でいっぱいだ。」

由良さんの声に前を見ると、屋台が二列にずらりと並んでいる。

そういえば先ほどから地面に足を取られるような感覚があったのが、浜辺に入っていたからだったと今になって気がつく。

由良さんばかり見ていたから、全く気がつかなかった。
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