236 / 261
番外編 〜2人の夏休み〜
動物園でのコアラとの出会い①
しおりを挟む
朝は昨夜のツアーの反動もあり、今日のツアーの時間になるまで部屋で由良さんとのんびり過ごした。
コーヒーを飲みながらタブレット端末で新聞を読む由良さんの姿があまりに優雅で、スマホを見るふりをしながらちらちらと盗み見見ていたのは不可抗力だ。あそこまで絵になる光景に目が行かない方がおかしい。
そして、今はバスで動物園に向かっている。
「幹斗君、楽しみ?」
ふと、隣に座っていた由良さんが俺の方を向き尋ねてきた。
シャツの襟からほのかに香るシトラスの香と凛とした低い声に心臓がまたとくんと跳ねる。
「いえっ…あの、はい…。」
動揺したせいか返答がおかしくなり、どっちだよと自分に心の中でツッコミを入れたが、由良さんは俺の答えが肯定だと元からわかっていたらしく、綺麗な唇に優しい微笑みを浮かべ俺の頭にポンと手を置いた。
「今日はコアラ、見られるね。」
「はい。それに、動物園って中学校の学習旅行以来なので、久しぶりです。どんな動物がいるんだろう…. 」
「そういえば僕もずっと行っていないな。幹斗君は何の動物が好き?」
好きな動物…何だろう。
考えても、ありきたりな答えしか浮かんでこない。
「えっと、猫です。由良さんは、猫と犬、どっちが好きですか?」
仕方がないからそのありきたりな答えをそのまま口にする。
と同時に、少し気になったことを聞いてみた。
「どちらも可愛いと思うけれど、幹斗君が一番かな。」
「そっ、その答え、は、…ずるい… 」
思わぬ狙撃を食らってしまい少し反抗する気持ちで由良さんの瞳をのぞいたが、彼と目が合った瞬間に反抗心は消失する。
「じゃあどう答えればいいと思う?これ以外思いつかなかった。」
そのまま低い声が泣きそうなくらいの優しさで紡いだ。
ぎゅっと細められた紫紺の瞳は、俺に愛おしいと伝えてくれる。
ああ好きだな、と今日だけでも何度目かわからない告白を心の中で繰り返しながら、窓の外を仰いだ。
今日も空は青く澄んでいる。
コーヒーを飲みながらタブレット端末で新聞を読む由良さんの姿があまりに優雅で、スマホを見るふりをしながらちらちらと盗み見見ていたのは不可抗力だ。あそこまで絵になる光景に目が行かない方がおかしい。
そして、今はバスで動物園に向かっている。
「幹斗君、楽しみ?」
ふと、隣に座っていた由良さんが俺の方を向き尋ねてきた。
シャツの襟からほのかに香るシトラスの香と凛とした低い声に心臓がまたとくんと跳ねる。
「いえっ…あの、はい…。」
動揺したせいか返答がおかしくなり、どっちだよと自分に心の中でツッコミを入れたが、由良さんは俺の答えが肯定だと元からわかっていたらしく、綺麗な唇に優しい微笑みを浮かべ俺の頭にポンと手を置いた。
「今日はコアラ、見られるね。」
「はい。それに、動物園って中学校の学習旅行以来なので、久しぶりです。どんな動物がいるんだろう…. 」
「そういえば僕もずっと行っていないな。幹斗君は何の動物が好き?」
好きな動物…何だろう。
考えても、ありきたりな答えしか浮かんでこない。
「えっと、猫です。由良さんは、猫と犬、どっちが好きですか?」
仕方がないからそのありきたりな答えをそのまま口にする。
と同時に、少し気になったことを聞いてみた。
「どちらも可愛いと思うけれど、幹斗君が一番かな。」
「そっ、その答え、は、…ずるい… 」
思わぬ狙撃を食らってしまい少し反抗する気持ちで由良さんの瞳をのぞいたが、彼と目が合った瞬間に反抗心は消失する。
「じゃあどう答えればいいと思う?これ以外思いつかなかった。」
そのまま低い声が泣きそうなくらいの優しさで紡いだ。
ぎゅっと細められた紫紺の瞳は、俺に愛おしいと伝えてくれる。
ああ好きだな、と今日だけでも何度目かわからない告白を心の中で繰り返しながら、窓の外を仰いだ。
今日も空は青く澄んでいる。
11
お気に入りに追加
703
あなたにおすすめの小説


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる