上 下
223 / 261
番外編 〜2人の夏休み〜

準備と飛行機⑦

しおりを挟む
「幹斗君顔色悪いけど大丈夫…?」

心配そうな声と共に片手を握られ、やっぱり気づかれたかと苦笑する。

下降を始めてから着陸が怖くて怯えているのだ。

隠したつもりだったが由良さんには分かってしまったらしい。まず彼に隠し事をしようとした時に気づかれなかった試しがないけれど。

「…着陸、ちゃんとできるか怖くて…。確率論的に大丈夫だということはわかっているのですが…。」

白状すると目の前の紫紺の瞳がぎゅっとやさしく細められる。

ああ好きだな、とその吸い込まれそうな藍を見つめていると、くしゃりと頭を撫でられた。

大好きな手の温もりにひどく安心する。

「眠れそう…には見えないね。少し話そうか。」

「はい。」

「最近大学はどう?悩みはない?」

「ありません。…由良さんが無くしてくれたから。」

「僕はなにもしていないよ。幹斗君が頑張っただけ。」

「そんなこと…。」

自然と繰り返される会話の中で、気づかないうちに恐怖は消えていた。

“間も無く着陸いたします。”

アナウンスが聞こえても、由良さんが会話中に何度か甘いglareを注いでくれたおかげでだいぶ気持ちが落ち着いていて。

がくんと着陸の衝撃が走ると共に安心して窓の外を見る余裕ができた。

現地の気温や時刻についてアナウンスが流れていく。

見たことのないような広大な景色が広がる周囲に異国に来たことを実感し、感情が高まりすぎて声が出ない。

くすり、と横から笑い声が聞こえた。

由良さんが楽しげに口を押さえている、

「えっ、俺、何かしました??」

「なにもしていないよ。興奮しているのがかわいくて。」

「…!!」

笑う理由も笑う姿も格好いいけれど心臓に悪い。

顔を真っ赤にして俯けば、再び大きな手に頭を撫でられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話

こじらせた処女
BL
 風邪でフラフラの大学生がトイレに行きたくなるけど、体が思い通りに動かない話

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

処理中です...