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番外編 〜2人の夏休み〜
準備と飛行機⑥
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「…君、幹斗君。」
「…!!?」
肩を揺すられまぶたを開くと、そのすぐ先に由良さんの端正な顔立ちが映る。
…そういえばここ、飛行機の中だった…。
「おはよう。よく眠れた?」
緊張で固まった俺に対して由良さんは穏やかな微笑みを浮かべる。
朝から由良さんの顔がドアップになるなんて反則だ。心臓がもたない。
「Tea, or coffee? 」
「えっ…?」
あたふたしていると、突然上から女性の声が聞こえてきた。
見上げれば添乗員さんがこちらを見て綺麗な微笑みを浮かべている。
寝起きのしかもテンパっている状況で話しかけられても何を言われているかなど全くわからない。
発音が英語だから尚更だ。
「コーヒーと紅茶、どっちがいい?だって。朝ごはん。」
由良さんがスムーズに助け舟を出してくれる。
「こ、紅茶で。」
「Street? Milk? Lemon? 」
「ミルクで。」
ひとまず答えることができ、息をつく。なぜがっつり日本語口調で答えてしまったのかは、考えても後の祭りなので考えないことにした。
由良さんの机にはすでにパウンドケーキのようなパンと文庫本とコーヒーが。
俺より早く起きて読書でもしていたのだろうか。どこまでも格好良くて非の打ち所がない。
俺にも紅茶と同じパンが渡され、机を出してその上に置く。
パンを一口含むとしっとりしていて甘くておいしい。
紅茶の温かさと優しい甘さに思わず頬が綻ぶ。
「よく眠れた?身体は大丈夫?」
「はい。」
「よかった。…あ。」
「??」
由良さんがじっと俺の顔を見つめたかと思うと、だんだんと俺の方に顔を近づけてきた。
だから近い。ここは飛行機の中で周りには人がたくさんいて、狭くて逃げ場所もないというのに、変な気分になってしまう。
というか俺、なにかしたのかな…?このままじゃまるでキスされるみたい…。でもまさかこんなところで…。
極限まで隅に身体を埋めたからもうこれ以上後に引けない。
形の良い唇が薄く開き、その間から舌が出される。
その舌はどんどん俺の唇に近づいてきた。
やっぱりそのまさかだったのかとドキドキして身体が熱くなる。
そのまま舐めとるようにして唇の端に由良さんの舌が一瞬強く押し当てられた。
「顔真っ赤。ついてたから。」
「!!」
悪戯っぽく笑みを浮かべられわざとだと確信する。
ついてた、というのは唇の端に食べかすがということだろう。普通に教えてくればいいのにこんなふうにして、俺の心臓を壊す気なのだろうか。
「…。」
…たまには拗ねてもいいよね…。命の危険を感じるし…。
そう思い黙ってそっぽを向いた途端、窓の外に赤みを帯びた光が見えた。
それは次第に青っぽくなっていって…。
「由良さん、すごい!飛行機の中から太陽って、こんなふうに見えるんですね!!」
とっさに由良さんの方を振り向き興奮気味に語ってしまった。
「本当だ。綺麗だね。」
…あっ、拗ねようとしたのに、失敗しちゃった…。
それでも太陽を映した由良さんの瞳はとても綺麗で、彼の瞳に魅入っているうちに日が昇り、もう一度窓の外に目をやると、俺たちのすぐ下に一面の雲が見えた。
朝日の明るいオレンジと澄んだ空の青がグラデーションを作っていく。
空にいるのにその雲が海のようにも見えて、とても幻想的な雰囲気だった。
「…!!?」
肩を揺すられまぶたを開くと、そのすぐ先に由良さんの端正な顔立ちが映る。
…そういえばここ、飛行機の中だった…。
「おはよう。よく眠れた?」
緊張で固まった俺に対して由良さんは穏やかな微笑みを浮かべる。
朝から由良さんの顔がドアップになるなんて反則だ。心臓がもたない。
「Tea, or coffee? 」
「えっ…?」
あたふたしていると、突然上から女性の声が聞こえてきた。
見上げれば添乗員さんがこちらを見て綺麗な微笑みを浮かべている。
寝起きのしかもテンパっている状況で話しかけられても何を言われているかなど全くわからない。
発音が英語だから尚更だ。
「コーヒーと紅茶、どっちがいい?だって。朝ごはん。」
由良さんがスムーズに助け舟を出してくれる。
「こ、紅茶で。」
「Street? Milk? Lemon? 」
「ミルクで。」
ひとまず答えることができ、息をつく。なぜがっつり日本語口調で答えてしまったのかは、考えても後の祭りなので考えないことにした。
由良さんの机にはすでにパウンドケーキのようなパンと文庫本とコーヒーが。
俺より早く起きて読書でもしていたのだろうか。どこまでも格好良くて非の打ち所がない。
俺にも紅茶と同じパンが渡され、机を出してその上に置く。
パンを一口含むとしっとりしていて甘くておいしい。
紅茶の温かさと優しい甘さに思わず頬が綻ぶ。
「よく眠れた?身体は大丈夫?」
「はい。」
「よかった。…あ。」
「??」
由良さんがじっと俺の顔を見つめたかと思うと、だんだんと俺の方に顔を近づけてきた。
だから近い。ここは飛行機の中で周りには人がたくさんいて、狭くて逃げ場所もないというのに、変な気分になってしまう。
というか俺、なにかしたのかな…?このままじゃまるでキスされるみたい…。でもまさかこんなところで…。
極限まで隅に身体を埋めたからもうこれ以上後に引けない。
形の良い唇が薄く開き、その間から舌が出される。
その舌はどんどん俺の唇に近づいてきた。
やっぱりそのまさかだったのかとドキドキして身体が熱くなる。
そのまま舐めとるようにして唇の端に由良さんの舌が一瞬強く押し当てられた。
「顔真っ赤。ついてたから。」
「!!」
悪戯っぽく笑みを浮かべられわざとだと確信する。
ついてた、というのは唇の端に食べかすがということだろう。普通に教えてくればいいのにこんなふうにして、俺の心臓を壊す気なのだろうか。
「…。」
…たまには拗ねてもいいよね…。命の危険を感じるし…。
そう思い黙ってそっぽを向いた途端、窓の外に赤みを帯びた光が見えた。
それは次第に青っぽくなっていって…。
「由良さん、すごい!飛行機の中から太陽って、こんなふうに見えるんですね!!」
とっさに由良さんの方を振り向き興奮気味に語ってしまった。
「本当だ。綺麗だね。」
…あっ、拗ねようとしたのに、失敗しちゃった…。
それでも太陽を映した由良さんの瞳はとても綺麗で、彼の瞳に魅入っているうちに日が昇り、もう一度窓の外に目をやると、俺たちのすぐ下に一面の雲が見えた。
朝日の明るいオレンジと澄んだ空の青がグラデーションを作っていく。
空にいるのにその雲が海のようにも見えて、とても幻想的な雰囲気だった。
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