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番外編 〜2人の夏休み〜
準備と飛行機②
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そんなこんなであたふたしながらも大体の荷物をキャリーケースに入れ、特に必要なものだけはリュックとショルダーバッグに入れて準備を終えた。
「えっと、パジャマ、下着、タオル、歯ブラシ、お財布… 」
忘れるのが怖くて作ったしおりに確認のチェックを入れていく。
「幹斗君は真面目だね。」
「!!」
ダイニングでコーヒーを飲んでいる由良さんにそう言われてはじめてチェックを入れる時声に出して読み上げていたことに気がついた。
子供っぽくて恥ずかしい。穴があったら入りたい。
なんとなく俯き、今度は声に出さないように確認する。
「幹斗君の分も淹れたから、休憩しない?」
確認を終えたタイミングで由良さんに呼ばれ、ダイニングへ赴くと、既にテーブルの上には俺用のマグにカフェオレが作られていた。
「ありがとうございます。」
礼を述べ彼の向かいに座りマグに口をつければ温かく舌触りの良い滑らかな液が舌を撫で、コーヒーの香りが口いっぱいに広がる。
「美味しい…。」
思わずため息と共に声が漏れた。
ミルクがたっぷり、砂糖も少し入っていて、苦くないのに芳醇な香りは残っている。
由良さんの淹れるカフェラテは俺が淹れるものよりずっと美味しいから不思議だ。由良さんはブラックしか飲まないのに。
「よかった。」
カフェラテの優しさに思わず口元を綻ばせた俺を見て、紫紺の瞳が緩やかに細められる。
彼のこの表情が好きだ。その瞳を見ているとまるで愛おしいと言われているみたいで。
「旅行、楽しみだね。」
穏やかに微笑んで由良さんが紡ぐ。
「はい。…でも…。」
「でも?」
「…なんでもないです。」
なんででもなんて言ったんだ俺…。
後悔しても口に出してしまったものはもう遅い。
ともかく誤魔化して…
「Say, 幹斗。」
「由良さんと5日間もずっと一緒だなんて、心臓が持つかどうか心配で…。」
不意打ちでcommandを放たれ、結局全て話してしまった。
大抵の場合彼に隠し事は通用しないと分かっていたけれど、やっぱりこれは恥ずかしい。おそらく真っ赤になっているであろう顔を両の手の平で覆う。
「じゃあその言葉、そっくりそのまま僕も返すよ。」
「…?」
返って来た言葉の意味がよくわからず首を傾げる俺を見て、彼は何故かやれやれと言った様子で頷き、子供にするようにして俺の頭を撫でた。
「それを飲み終わったら一緒にお風呂に入ろうか。しばらく帰ることができないから。」
「!?」
…また、そんなこと言う…。
せっかくいったん落ち着いたところに追い討ちをかけるように彼が恥ずかしげもなく自然に言うから、思わず彼の目をじっと見てその意味がわかっているのかと訴えてしまう。
行為の最中に彼のはだけた襟元を覗くだけでもあんなにもどきどきして心臓が壊れてしまいそうなのに、浴室の光に照らされた状態で彼の男らしい裸体が目に入る上、自分の肌をその彼に晒すだなんて。
「…嫌?」
尋ねられ、肩が跳ねる。
「嫌じゃない…です…。」
わかっているくせに、と思いながら、嘘をついても無駄なことをわかっているから正直に答えた。
誘っているみたいで恥ずかしい。
「じゃあ行こうか。」
もうすでに頭の中がぐちゃぐちゃで余裕のない俺とは反対に、彼は穏やかに微笑んで言う。
しかし彼の凛とした声は気のせいか少し熱を帯びているように聞こえた。
いつの間にか2人ともマグは空になっていて。
「…はい…。」
俯きながら頷き、立ち上がり浴室へ向かう由良さんを追いかけるようにして俺も椅子から立ち上がった。
浴室で交わっているうちに遅刻しそうになったのは当然の結果と言えよう。
「えっと、パジャマ、下着、タオル、歯ブラシ、お財布… 」
忘れるのが怖くて作ったしおりに確認のチェックを入れていく。
「幹斗君は真面目だね。」
「!!」
ダイニングでコーヒーを飲んでいる由良さんにそう言われてはじめてチェックを入れる時声に出して読み上げていたことに気がついた。
子供っぽくて恥ずかしい。穴があったら入りたい。
なんとなく俯き、今度は声に出さないように確認する。
「幹斗君の分も淹れたから、休憩しない?」
確認を終えたタイミングで由良さんに呼ばれ、ダイニングへ赴くと、既にテーブルの上には俺用のマグにカフェオレが作られていた。
「ありがとうございます。」
礼を述べ彼の向かいに座りマグに口をつければ温かく舌触りの良い滑らかな液が舌を撫で、コーヒーの香りが口いっぱいに広がる。
「美味しい…。」
思わずため息と共に声が漏れた。
ミルクがたっぷり、砂糖も少し入っていて、苦くないのに芳醇な香りは残っている。
由良さんの淹れるカフェラテは俺が淹れるものよりずっと美味しいから不思議だ。由良さんはブラックしか飲まないのに。
「よかった。」
カフェラテの優しさに思わず口元を綻ばせた俺を見て、紫紺の瞳が緩やかに細められる。
彼のこの表情が好きだ。その瞳を見ているとまるで愛おしいと言われているみたいで。
「旅行、楽しみだね。」
穏やかに微笑んで由良さんが紡ぐ。
「はい。…でも…。」
「でも?」
「…なんでもないです。」
なんででもなんて言ったんだ俺…。
後悔しても口に出してしまったものはもう遅い。
ともかく誤魔化して…
「Say, 幹斗。」
「由良さんと5日間もずっと一緒だなんて、心臓が持つかどうか心配で…。」
不意打ちでcommandを放たれ、結局全て話してしまった。
大抵の場合彼に隠し事は通用しないと分かっていたけれど、やっぱりこれは恥ずかしい。おそらく真っ赤になっているであろう顔を両の手の平で覆う。
「じゃあその言葉、そっくりそのまま僕も返すよ。」
「…?」
返って来た言葉の意味がよくわからず首を傾げる俺を見て、彼は何故かやれやれと言った様子で頷き、子供にするようにして俺の頭を撫でた。
「それを飲み終わったら一緒にお風呂に入ろうか。しばらく帰ることができないから。」
「!?」
…また、そんなこと言う…。
せっかくいったん落ち着いたところに追い討ちをかけるように彼が恥ずかしげもなく自然に言うから、思わず彼の目をじっと見てその意味がわかっているのかと訴えてしまう。
行為の最中に彼のはだけた襟元を覗くだけでもあんなにもどきどきして心臓が壊れてしまいそうなのに、浴室の光に照らされた状態で彼の男らしい裸体が目に入る上、自分の肌をその彼に晒すだなんて。
「…嫌?」
尋ねられ、肩が跳ねる。
「嫌じゃない…です…。」
わかっているくせに、と思いながら、嘘をついても無駄なことをわかっているから正直に答えた。
誘っているみたいで恥ずかしい。
「じゃあ行こうか。」
もうすでに頭の中がぐちゃぐちゃで余裕のない俺とは反対に、彼は穏やかに微笑んで言う。
しかし彼の凛とした声は気のせいか少し熱を帯びているように聞こえた。
いつの間にか2人ともマグは空になっていて。
「…はい…。」
俯きながら頷き、立ち上がり浴室へ向かう由良さんを追いかけるようにして俺も椅子から立ち上がった。
浴室で交わっているうちに遅刻しそうになったのは当然の結果と言えよう。
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