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第2部
帰省④
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新幹線は自由席だったが、特に行事がある時期ではないので余裕で2人席に座ることができた。
「そろそろお昼食べようか。」
「はい。」
どうぞ、と由良さんが俺に先ほど駅で買ったお弁当を差し出してくれる。
由良さんは鯛飯で、俺は腹子飯。
いつもはおにぎりやサンドイッチで済ませてしまうので、駅弁を食べるのは人生で2回目だ。
ちなみに1回目は大学の二次試験から帰る時。試験のことを反省しすぎてほとんど喉を通らなかった気がする。
そういえばあの頃は、“この先自分はパートナーを持たないまま天涯孤独に生きるのかもしれない”、と常に不安を抱えていた。
今は由良さんが一緒にいるから少しもそんなことは思わないけれど…。
いただきますをして口に含んだいくらとご飯はとても美味しい。
「そんなに美味しい?」
横でお弁当を食べていた由良さんが俺を見て紫紺の瞳を愛おしそうに細めるから、もっと幸せな気持ちになる。
この笑顔が好きだ。
「はい、とても。ご馳走様です。」
「どういたしまして。一口交換しようか。」
「はい!…あっ…。」
嬉しくて無意識にはしゃいだ声をあげてしまった。子供みたいで恥ずかしい。
反射的に口を塞いだ手は、すぐに由良さんに優しく腕を掴まれそっと口から剥がされた。
決して強い力ではなくむしろ雪にでも触れるような弱い力なのに、あまりにも大切そうに触れられるから、身体が自然とその手に従う。
…どうしよう。少し苦しい…。
由良さんといる時俺の鼓動は普段より少し早くて、優しくされると弱く締め付けられて胸が切なく疼く。
「幹斗君、口を開けて。」
視線を泳がせていると、突然由良さんが俺の口元にごはんを掬った箸を持ってきた。
「えっ、あのっ…。」
「交換するんでしょう?ほら、あーんして。」
追い討ちのように甘いglareを放たれて本能的に口を開く。
そのまま口元に優しく箸を入れられ、あたかも雛鳥のようにそれを受け入れた。
外で物を食べさせられるのはとても恥ずかしくて、それでも由良さんから食べさせてもらえたことはとても嬉しい。
嬉しさと恥ずかしさが入り混じってしまい、自分が何を考えているのか一瞬わからなくなった。
「美味しい?」
耳元で低い声でに囁かれれば、すでに熱を持ち出している身体は敏感に反応してぴくっと跳ねる。
「…おいしい、です…。」
「よかった。」
俺も自分のお弁当を箸で掬い満足そうに微笑む彼の口元に持って行こうと思ったけれど、する方も恥ずかしいと途中で気づいて結局自分で食べてしまった。
多分こういう格好いい行動ができるのも彼の才能で魅力なのだろう。
「そろそろお昼食べようか。」
「はい。」
どうぞ、と由良さんが俺に先ほど駅で買ったお弁当を差し出してくれる。
由良さんは鯛飯で、俺は腹子飯。
いつもはおにぎりやサンドイッチで済ませてしまうので、駅弁を食べるのは人生で2回目だ。
ちなみに1回目は大学の二次試験から帰る時。試験のことを反省しすぎてほとんど喉を通らなかった気がする。
そういえばあの頃は、“この先自分はパートナーを持たないまま天涯孤独に生きるのかもしれない”、と常に不安を抱えていた。
今は由良さんが一緒にいるから少しもそんなことは思わないけれど…。
いただきますをして口に含んだいくらとご飯はとても美味しい。
「そんなに美味しい?」
横でお弁当を食べていた由良さんが俺を見て紫紺の瞳を愛おしそうに細めるから、もっと幸せな気持ちになる。
この笑顔が好きだ。
「はい、とても。ご馳走様です。」
「どういたしまして。一口交換しようか。」
「はい!…あっ…。」
嬉しくて無意識にはしゃいだ声をあげてしまった。子供みたいで恥ずかしい。
反射的に口を塞いだ手は、すぐに由良さんに優しく腕を掴まれそっと口から剥がされた。
決して強い力ではなくむしろ雪にでも触れるような弱い力なのに、あまりにも大切そうに触れられるから、身体が自然とその手に従う。
…どうしよう。少し苦しい…。
由良さんといる時俺の鼓動は普段より少し早くて、優しくされると弱く締め付けられて胸が切なく疼く。
「幹斗君、口を開けて。」
視線を泳がせていると、突然由良さんが俺の口元にごはんを掬った箸を持ってきた。
「えっ、あのっ…。」
「交換するんでしょう?ほら、あーんして。」
追い討ちのように甘いglareを放たれて本能的に口を開く。
そのまま口元に優しく箸を入れられ、あたかも雛鳥のようにそれを受け入れた。
外で物を食べさせられるのはとても恥ずかしくて、それでも由良さんから食べさせてもらえたことはとても嬉しい。
嬉しさと恥ずかしさが入り混じってしまい、自分が何を考えているのか一瞬わからなくなった。
「美味しい?」
耳元で低い声でに囁かれれば、すでに熱を持ち出している身体は敏感に反応してぴくっと跳ねる。
「…おいしい、です…。」
「よかった。」
俺も自分のお弁当を箸で掬い満足そうに微笑む彼の口元に持って行こうと思ったけれど、する方も恥ずかしいと途中で気づいて結局自分で食べてしまった。
多分こういう格好いい行動ができるのも彼の才能で魅力なのだろう。
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