強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

文字の大きさ
上 下
193 / 261
第2部

前夜④

しおりを挟む
「ごめんなさいっ…、俺っ…。」

慌てて指で彼の顔についた白濁を拭おうとするけれど、達したあとの開放感に身体が支配されていてなかなかうまく動けない。

どうしよう、由良さんの顔、汚しちゃった…。

焦りと罪悪感でどうしていいかわからなくなって固まっていると、目の前で由良さんが顔についた液体を親指で拭い、あろうことがその指先を舌で舐め取った。

彼がするとそんな行為すら色っぽくて、その舌を飲み込んだ形の良い唇や伏せられた睫毛にどうしようもなく惹きつけられる。

…って、見惚れている場合じゃない。

「汚いですっ!!」

咄嗟に声を上げるも後の祭りだ。

「汚くないよ。」

浮かべられた妖艶な笑みと穏やかなのにひどく熱を孕んだ声音ににまた心臓が大きく跳ねた。

「そんな、わけっ… 」

ない、と言おうとした唇を人差し指で塞がれ、親指でそっとなぞられる。

そこから伝わった刺激は、ぞくぞくと背筋までもを震わせた。

彼が悪戯っぽい笑みを浮かべ、薄い唇がゆっくりと開かれる。

「あんなによさそうに僕のものを咥えていた口でそんなことを言うの?…幹斗。」

「..!!」

glareを放ちながら囁かれた言葉に、俺は大きく目を見開き、顔を真っ赤にして口を塞いだ。

…恥ずかしくてたまらない…。

「…ねえ、もう君の中に入ってもいい?幹斗君が可愛すぎてどうにかなりそうだ。」

由良さんが俺の上から覆い被ってきて、紫紺の瞳が縋るようにじっと瞳覗いてくる。

やっと挿れてもらえる…。

そう思ったら、先ほどまでの羞恥心や罪悪感はあっさりとなくなってしまった。

本当に欲望に忠実な身体だと我ながら苦笑する。

頷けば、彼が口と手でスキンの袋を切った。

大きな質量がゆっくりと中に埋め込まれていく。

「苦しくない?大丈夫?」

優しい声が鼓膜を振るわせたけれど、俺はただその問いに喘ぎで答えることしかできなかった。

やがて全てを彼で満たされ、深い抽挿が開始される。

どこまで自分で、どこからが彼なのか。

果てしない快楽で甘く淫らに蕩かされた結合部が彼との境界を曖昧にさせる。

同時に、いずれこの熱が抜かれてしまうことを嘆いて胸が切なく疼く。

いっそ一つに生まれてしまえば離れることもなかったのに。

…なんて、一つに生まれたなら、出会えた喜びを味合うことができなかったのに思うのは、きっと快楽に酔っているせいだ。

激しい運動で疲れた後は先ほどまで眠れなかったことが嘘のように彼の腕の中で目を閉じた瞬間にぱたりと意識を失った。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...