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第2部

前夜②

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「…眠れない?」

夜、眠れないでいる俺の耳元で穏やかな声が凛と囁いた。

この人はいつだってそうだ。俺のことをとても良く見ていて、全てを受け入れるかのように優しく温かく包み込んでくれる。

「少し不安になってしまって…。」

呟けば、彼は俺を見つめ切れ長の瞳を柔らかに細めた。

「そうだね、心配事が二つもある。行くことを決断できた幹斗君はとても偉い。」

抱きしめる腕の力が強くなり、骨張った大きな手が宥めるように頭を撫でてくれる。

彼の温もりに安心する一方で、彼の声、逞しい体、優しい眼差しに胸がぎゅっと切なく締め付けられ、身体が熱を帯びた。

…欲しい。

明日に備えて寝なくてはならないのに、この人が欲しいとはしたなく望んでしまう。

一度望んでしまえばもう沈めることはできなくて、あと俺自身にできるのは、ただこの熱に耐えることだけ。

緩く屹立する下半身を自分で治めることは不可能だと知っているので、あえて無駄骨を折ることはしない。

きっと今夜は寝れなくて、明日電車の中で爆睡することになるだろう。

でもいいか。この腕の中にいられることが幸せだから。

そんなことを考えていると、疼いていた下半身の屹立に突然自身ではない何かが触れた。

「すごく熱い。したいの?幹斗君。」

そのまま艶っぽい声が妖しく響き、脳を甘く震わせる。

もしかしてと思い布団をめくれば、由良さんの手が俺のそこに触れていた。

「あ、の…。えっと…。」

どうしよう、すごく恥ずかしい。

混乱して口を開けて固まった俺の瞳を由良さんがじっと覗き込んでくる。

そのまま形の良い唇が淡く開き、紫紺の瞳からは強いglareが放たれて。

Say言いなさい、幹斗。」

やばい、と思った時にはもう手遅れだった。

放たれたcommand命令は圧倒的な力を持って響き、俺に拒否権を与えない。

理性が全く働かず、本能が彼に従う。

「由良さんのこれ、欲しいです…。」

プレイの時と同じ。頭のどこかではやめろと念じているのに、彼の支配で歓ぶ身体は引き寄せられるように彼のそこに手を伸ばし、口からは勝手にはしたない言葉が出てきてそれを望んで。

「どこに?」

揶揄われるように言われ、恥ずかしくて顔がかっと熱くなる。

「…意地悪、する…?」

じっと彼の瞳を覗いて尋ねれば、彼は柔らかく微笑んで。

「ごめん、しないよ。体調は大丈夫?」

「大丈夫だから、…早く、欲しいです…。」

宝物を扱うような、どこまでも優しい声が嬉しくて、子供みたいに縋った。

しかし彼は静かに首を横に振る。

…どうして?由良さんはしたくない…?

「そんな顔をしないで。いつも丁寧に準備しているでしょう?今日もそうさせて。ほら、力を抜いて。」

不安で瞳を潤ませた俺の唇を彼は優しく彼のそれで塞いで、同時に俺の寝間着のボタンを外し、胸の突起を緩く擦った。

「ぁっ…。いやっ…。」

漏らした声はひどく甘ったるく響き、俺が悦んでいることを明白にしてしまう。

「かわいい、幹斗。もっとしようね。」

熱を帯びた声とともに今度は彼の唇が乳頭にじゅ、と吸い付いた。

おかしくなってしまうからそこはやめてと言いたいのに、声を抑えようと噛んだ唇は彼の親指でいとも簡単に開かれてしまい、唇のあわいから漏れ出た喘ぎは明確に彼の行為への肯定を示していて、それに応えるように丁寧な愛撫が次第に加速していく。
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