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第2部

前夜①

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栗羊羹に栗きんとん、紅葉の練り切りにうさぎのお団子。

「もうすっかり秋ですね。」

言いながら見上げた先で、微笑みを浮かべながら由良さんが小さく頷いた。

明日由良さんと一緒に実家に帰る約束をした俺は、彼と一緒に祖父母へのお土産を選びに和菓子屋さんに来ている。

「日持ちを考えると羊羹がいいかな。」

「そうですね。祖父は甘いのが苦手なので、祖母には栗羊羹、祖父にはお煎餅にしようと思います。」

「いい考えだ。肺が悪いのなら濡れ煎餅の方がいいかな?じゃあこれとこれと、あとは素敵な案を出してくれた幹斗君にこれを。」

由良さんが羊羹と煎餅の箱を手に取り、それと同時に、店に入った時に俺がかわいいと思ってちらりと目をやったうさぎのお団子を、さりげなく一緒にレジへと持っていった。

「それは… 」

「ん…?」

無駄遣いだから必要ないです、と言おうとした途端にぐっと顔を近づけられ、すぐ目の前に映し出された紫紺の瞳が、底なしに甘いglareを放つ。

心臓が突然口から飛び出そうなほど主張を始め、きっと真っ赤になっているであろう顔を隠すために俯きたいのに、glareを放つ彼の瞳に釘で打ったように視点が固定されて、目を逸らすことが全くできない。

「…なんでもないです…。」

「うん。」

観念して紡げば、彼は艶っぽい笑みを浮かべ、glareを放つのをやめてから俺の頭にポンと手を置いた。

…ずるい。

由良さんは俺を甘やかしすぎで、そのうえ甘やかしすぎだからと俺がめるのすら手練手管で阻止してくる。

「帰ろうか。」

しばらくフリーズした状態のまま固まっていた俺に、会計を済ませた由良さんが手を差し伸べてくれた。

「はい。」

その大きな手をぎゅっと握りしめ、指輪の感触に頬が綻ぶ。

結局差し出された手を取ってしまうから、俺も大概ちょろいのかもしれない。
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