185 / 261
第2部
それから②
しおりを挟む
ここ数日で全てが変わってしまった様な気がしていたのは俺だけで、大学の様子はごく普通だった。
自分だけが違う場所からやってきた様な違和感を覚えながら一限の授業を受け終え、二限の教室に行く。
二限が終わったら1週間ぶりに研究室に行くから、少し怖い。
怖いのは仙波君のことがあるからではなく、単純に1週間無断で欠勤してしまったという罪悪感があるからだ。
仙波君には申し訳ない気持ちもあるけれど、それ以上に由良さんが何度も“これでも妥協した”、と言い聞かせてくれたので、これでよかったのだと思えている。
「幹斗おはよ。…もう大丈夫?」
隣から声が聞こえて振り向くとその先に東弥がいた。
彼は荷物を下ろし俺の横に座る。
「おはよ、東弥。大丈夫。…その、東弥にもお世話になったみたいで、ありがとう。」
「いや俺はほとんど何も。仙波のこと呼び出しただけ。」
「…だけじゃないって。」
「じゃあ俺が刺された時の恩返し。静留がたくさんお世話になったから。」
「うん、じゃあそれで。本当にありがと。」
「こちらこそ。」
授業を終えて東弥と一緒に食事をとってから研究室に行くと、仙波君のことを伝えられた。どうやら俺は体調不良だということになっていたらしい。
実験室に行きしばらく実験をして、いい頃合いで家に帰る。
すごい挑戦をした気分なのに思った以上に普通の1日だった。
「ただいま。」
「お帰りなさい。お疲れ様、よくがんばったね。」
ドアを開けると由良さんが出迎えてくれて、そのまま強く抱きしめられた。
彼は俺の頭をたくさん撫でて、何度も“えらい”、“頑張ったね”、と言いながら甘いglareを注いでくれる。
まるで子供にするみたいだ。
そして、子供みたいにされているのに由良さんの顔が近いからどきどきする。
でも嬉しい。由良さんに褒められることは本当に好きだし、何より今日はがんばったから、頑張ったことを大好きな人に褒めてもらえると一番嬉しい。
「ありがとうございます。」
思わず笑顔になって言うと、由良さんも柔らかな笑みを浮かべる。
「ご飯にする?それとも…なんてね。」
「由良さんがいいです!」
照れ笑いを浮かべながら途中で言葉を切った由良さんに俺がそう即答すると、彼は切れ長の瞳を驚いたように大きく開いた。
そのまま数秒の沈黙が走る。
いつもはどんなに甘い台詞も平気な顔で言うくせになぜか照れている由良さんと、いつもは照れて黙ってばかりなのに何故か今日は勢いよく一番恥ずかしい返事をしてしまった俺。
恥ずかしいよりおかしさが先立って、顔を見合わせ同時に吹き出してしまった。
「…はー、おかしいっ…くくっ… 」
「なかなか新鮮だったね。
…で、僕がいいんだっけ?幹斗君は。」
今度はワントーン低い大人の声で、顎を持ち上げてそう言われた。
…まずい。
鼓動が急加速を始める。
そのまま噛み付く様に唇を奪われ、熱を帯びた紫紺の瞳が目の前に来た。
「んっ… 」
思わず声が漏れる。
呼吸が困難なほど深く舌を絡め合えば、頭がふわふわと酩酊した。
キスだけで他に何もしていないはずなのに、下腹部がひどく切なく疼く。
触れた部分と下腹部から全身に熱が回り、立つのさえ困難になった俺を、由良さんは軽々と抱き上げた。
「一緒にお風呂入ろうか。」
色香を帯びた声が鼓膜を震わせる。
そのあとの入浴が入浴だけで済まなかったのは言うまでもない。
自分だけが違う場所からやってきた様な違和感を覚えながら一限の授業を受け終え、二限の教室に行く。
二限が終わったら1週間ぶりに研究室に行くから、少し怖い。
怖いのは仙波君のことがあるからではなく、単純に1週間無断で欠勤してしまったという罪悪感があるからだ。
仙波君には申し訳ない気持ちもあるけれど、それ以上に由良さんが何度も“これでも妥協した”、と言い聞かせてくれたので、これでよかったのだと思えている。
「幹斗おはよ。…もう大丈夫?」
隣から声が聞こえて振り向くとその先に東弥がいた。
彼は荷物を下ろし俺の横に座る。
「おはよ、東弥。大丈夫。…その、東弥にもお世話になったみたいで、ありがとう。」
「いや俺はほとんど何も。仙波のこと呼び出しただけ。」
「…だけじゃないって。」
「じゃあ俺が刺された時の恩返し。静留がたくさんお世話になったから。」
「うん、じゃあそれで。本当にありがと。」
「こちらこそ。」
授業を終えて東弥と一緒に食事をとってから研究室に行くと、仙波君のことを伝えられた。どうやら俺は体調不良だということになっていたらしい。
実験室に行きしばらく実験をして、いい頃合いで家に帰る。
すごい挑戦をした気分なのに思った以上に普通の1日だった。
「ただいま。」
「お帰りなさい。お疲れ様、よくがんばったね。」
ドアを開けると由良さんが出迎えてくれて、そのまま強く抱きしめられた。
彼は俺の頭をたくさん撫でて、何度も“えらい”、“頑張ったね”、と言いながら甘いglareを注いでくれる。
まるで子供にするみたいだ。
そして、子供みたいにされているのに由良さんの顔が近いからどきどきする。
でも嬉しい。由良さんに褒められることは本当に好きだし、何より今日はがんばったから、頑張ったことを大好きな人に褒めてもらえると一番嬉しい。
「ありがとうございます。」
思わず笑顔になって言うと、由良さんも柔らかな笑みを浮かべる。
「ご飯にする?それとも…なんてね。」
「由良さんがいいです!」
照れ笑いを浮かべながら途中で言葉を切った由良さんに俺がそう即答すると、彼は切れ長の瞳を驚いたように大きく開いた。
そのまま数秒の沈黙が走る。
いつもはどんなに甘い台詞も平気な顔で言うくせになぜか照れている由良さんと、いつもは照れて黙ってばかりなのに何故か今日は勢いよく一番恥ずかしい返事をしてしまった俺。
恥ずかしいよりおかしさが先立って、顔を見合わせ同時に吹き出してしまった。
「…はー、おかしいっ…くくっ… 」
「なかなか新鮮だったね。
…で、僕がいいんだっけ?幹斗君は。」
今度はワントーン低い大人の声で、顎を持ち上げてそう言われた。
…まずい。
鼓動が急加速を始める。
そのまま噛み付く様に唇を奪われ、熱を帯びた紫紺の瞳が目の前に来た。
「んっ… 」
思わず声が漏れる。
呼吸が困難なほど深く舌を絡め合えば、頭がふわふわと酩酊した。
キスだけで他に何もしていないはずなのに、下腹部がひどく切なく疼く。
触れた部分と下腹部から全身に熱が回り、立つのさえ困難になった俺を、由良さんは軽々と抱き上げた。
「一緒にお風呂入ろうか。」
色香を帯びた声が鼓膜を震わせる。
そのあとの入浴が入浴だけで済まなかったのは言うまでもない。
1
お気に入りに追加
699
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる