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第2部

前進⑦

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(幹斗side)
由良さんの会社から家までは、手を繋いでほとんど無言で帰った。

プレイをする流れで家まで帰ってしまったから、恥ずかしさと期待でもうずっと心臓がばくばくと音を立てている。

「ただいま。」

「お帰りなさい、由良さん。」

「うん、幹斗君もお帰りなさい。」

「…ただいま。」

互いにただいまとお帰りを言いながら家に入り、順番に手を洗う。

そのあとどうしていいか分からずに俯き立ち尽くしていると、由良さんが俺の前に立ち、俺の顎に優しく指を添え上を向かせた。

見上げた先に愛おしげに細められた紫紺の瞳が映る。

そこから放たれる弱いglareを感じ、まるで媚薬に侵されたように甘く脳髄が震えた。

…ああ、すでにもうこんなにも心臓がうるさいのに、その上Sub性まで刺激されたら…。

彼は俺を見つめるだけで、何も言葉を紡がないでいる。

けれど彼の瞳から目をそらすことができないから、この沈黙がひどくもどかしい。

「…してみたいプレイがあるんだ。いつもと少し志向が違うけれど、頑張れる?」

しばらくして由良さんがそう紡いだ。

「違う…?」

“いつもと違う”、という部分に疑問を覚えて首を傾げる。

由良さんは色々なプレイを知っていてそれを俺に教えてくれるからその内容はいつも違うけれど、“いつも違う”、と敢えて告げられたのは初めてだ。

由良さんはゆっくりとうなずき、プレイの道具が入っている棚から二枚の細長い布を取り出してみせる。

その布の形は細長いタオルのようだが、生地は薄く、絹のような光沢を帯びていた。

「今からこれで君の視覚と手の自由を奪いたい。してもいい?」

尋ねられ、その布の一枚で俺の目を隠し、もう一枚で俺の両手を縛ろうとしているのだと理解する。

でも同時に不思議に思った。

プレイ中に縄で手首を縛られたことも、目隠しをされたこともある。

なのにこれは今更そんなふうに改まって俺にしていいかを尋ねることだろうか。
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