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第2部
前進⑤
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視界に飛び込んできた状況を理解するまでに数秒を要した。
由良さんが御坂の胸ぐらを掴み、そのまま壁に叩きつけている。
「…くはっ、先輩、やっと本性を表してくれましたねぇ。いつもへらへらして穏やかなのに、暴力的だ。」
嘲笑するような御坂の声が室内に響く。
臆病な俺は、御坂が怖くてその場を黙って見ていることしかできない。
自分が嫌になる。
「…れ。」
「は?」
「幹斗君に謝れと言っているんだ。僕が常にへらへらとしてるって?穏やかだって?そんなの僕が大切なものを傷つけられなかったからだ当たり前だろ!」
由良さんがもう一度御坂の背中を壁に強く叩きつけた。
荒げられた口調と大きな声に、それを言われたわけではない俺まで背筋が震える。
「…はっ、私は、何もしてませんよ?それとも何か証拠でもあるのでしょうか?」
御坂の声は震えていたが、まだ彼の表情は笑っていた。
むしろ楽しそうにしている。
「…仙波の証言のICレコーダーお前のSNSアカウントのスクリーンショット、仙波とのLINEの画面ホテルの監視カメラ。十分起訴できる内容だ。
社長はお前を遠方に飛ばすと約束してくれたがそれだけじゃ足りないんだよ今すぐ僕のパートナーに謝れ!」
しかし由良さんのその発言を聞いた途端御坂の表情が明らかに曇った。
「…あー、ばかだなぁちょっと遊んであげただけでしょう?たかがSub如きのためにそこまで情報収集したんですか?」
挑発するような口調で言う御坂に対して由良さんが大きくため息をつき、それから言った。
「僕の中の10割がこの子なんだよ命より大切なんだ。そんな存在をここまで傷つけられて黙っていられるわけない!
…ここで選べ。社会的に死ぬか、今すぐ謝って僕たちの前から消えるか。」
最後の一言は、低く、冷たく、重たく、この世の全てを凍らせてしまいそうな空気を纏っていた。
「…わかりました。」
御坂は未だ納得していないような表情だったが、彼が頷くと由良さんは彼のシャツから手を離す。
「済まなかった。もう金輪際君には関わらない。反省するよ。」
誠意があるのかないのかはわからなかったが、案外しっかりとした謝罪だった。
俺は何も言わず御坂に対して頷いて、由良さんの方を向く。
「由良さん、もう大丈夫です。」
そう告げると、由良さんは柔らかに微笑む。
「帰ろう、幹斗君。」
先程声を荒げていた様子とは打って変わって由良さんの表情も声も優しかった。
「…これを、社長に渡しておいて。」
由良さんが胸ポケットから鍵を取り出し、何かの封筒と一緒に御坂に渡す。
そして彼は俺の手を引き、部屋を出た。
由良さんが御坂の胸ぐらを掴み、そのまま壁に叩きつけている。
「…くはっ、先輩、やっと本性を表してくれましたねぇ。いつもへらへらして穏やかなのに、暴力的だ。」
嘲笑するような御坂の声が室内に響く。
臆病な俺は、御坂が怖くてその場を黙って見ていることしかできない。
自分が嫌になる。
「…れ。」
「は?」
「幹斗君に謝れと言っているんだ。僕が常にへらへらとしてるって?穏やかだって?そんなの僕が大切なものを傷つけられなかったからだ当たり前だろ!」
由良さんがもう一度御坂の背中を壁に強く叩きつけた。
荒げられた口調と大きな声に、それを言われたわけではない俺まで背筋が震える。
「…はっ、私は、何もしてませんよ?それとも何か証拠でもあるのでしょうか?」
御坂の声は震えていたが、まだ彼の表情は笑っていた。
むしろ楽しそうにしている。
「…仙波の証言のICレコーダーお前のSNSアカウントのスクリーンショット、仙波とのLINEの画面ホテルの監視カメラ。十分起訴できる内容だ。
社長はお前を遠方に飛ばすと約束してくれたがそれだけじゃ足りないんだよ今すぐ僕のパートナーに謝れ!」
しかし由良さんのその発言を聞いた途端御坂の表情が明らかに曇った。
「…あー、ばかだなぁちょっと遊んであげただけでしょう?たかがSub如きのためにそこまで情報収集したんですか?」
挑発するような口調で言う御坂に対して由良さんが大きくため息をつき、それから言った。
「僕の中の10割がこの子なんだよ命より大切なんだ。そんな存在をここまで傷つけられて黙っていられるわけない!
…ここで選べ。社会的に死ぬか、今すぐ謝って僕たちの前から消えるか。」
最後の一言は、低く、冷たく、重たく、この世の全てを凍らせてしまいそうな空気を纏っていた。
「…わかりました。」
御坂は未だ納得していないような表情だったが、彼が頷くと由良さんは彼のシャツから手を離す。
「済まなかった。もう金輪際君には関わらない。反省するよ。」
誠意があるのかないのかはわからなかったが、案外しっかりとした謝罪だった。
俺は何も言わず御坂に対して頷いて、由良さんの方を向く。
「由良さん、もう大丈夫です。」
そう告げると、由良さんは柔らかに微笑む。
「帰ろう、幹斗君。」
先程声を荒げていた様子とは打って変わって由良さんの表情も声も優しかった。
「…これを、社長に渡しておいて。」
由良さんが胸ポケットから鍵を取り出し、何かの封筒と一緒に御坂に渡す。
そして彼は俺の手を引き、部屋を出た。
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