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第2部
前進④
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「息子が君に…その、とてもひどいことをしたのは聞いた。いくらでも金なら積むからどうか許してくれないだろうか。」
「えっ…と…。」
状況が把握できずに由良さんを見上げると、由良さんは大きくため息をついた。
…もしかしてこの人、実は社長の替え玉とか何かなのだろうか…?
由良さんの態度を見ているとそんな気さえしてくるが、御坂の親だということはやっぱり…。
「社長、昨日メールした通り、私がお話ししたいのは息子さんです。彼の勤務先を遠方にすることと彼からの謝罪。それ以外の条件で訴えを取り下げる気はありません。
第二性を利用して一方的に暴力を振るうことは立派な犯罪ですから。」
低い声でゆっくりはっきり、由良さんが男性に告げて。
俺以外の2人が見つめ合い、場に沈黙が走る。
やがて男性が観念したようにスマホを取り出し、操作をして耳に当てた。
「…理人か?今すぐ私のところに来なさい。」
それだけ言うと、彼は通話を切る。相手は御坂だったのだろう。
「時期に理人がここにくる。私は会議に出てくるよ。…ここの鍵だ。話が終わったら返してくれ。」
男性はそう言って由良さんに鍵を渡し、部屋を出ていった。
あんな風に言って大丈夫なのか、とは聞かない。だって大丈夫じゃないに決まっている。
俺がもっとちゃんと回避していれば由良さんにこんな迷惑かけなかったのかな…。
そう思うと苦しくて、強く唇を噛んだ。
「幹斗君。大丈夫だからそんな顔をしないで。」
ふと耳元で囁かれる。
先ほど社長と話していた低くはっきりとした威圧感のある声とは真逆の、雲のような甘い声。
由良さんは鍵を胸ポケットに入れ、繋いでいない方の手を俺の頬に添え、そのまま優しく親指で俺の唇を開いていく。
「噛んではいけないよ。」
愛しげに細められた紫紺の瞳が視界に入った、その途端、乱暴な音を立ててドアが開いた。
「真っ昼間からこんなところでラブシーン広げるとか馬鹿なんですか?」
聞き覚えのある声に背筋が凍りつく。
振り返った先に御坂の姿があった。
「それで俺になんの用ですか?まさかそこのSubのためとか… 」
軽い口調で御坂が言う。
俺はその瞳を見るのすら怖くて、由良さんと手を離し思わず彼の背中にしがみついた。
「社長から話は聞いてない?」
由良さんの声は先程社長と話した時と同じく低くはっきりと威圧感を持って響く。
「…は?なんですかそれ?あっ、昨日なんかメール来てましたけど、それですかね?まだ見てないのでいったんチェックしていいですか?」
由良さんは御坂に対して何も言わず、ゆっくりと俺の方を振り返った。
「幹斗君、…危ないからここに座っていて。」
「えっ… 」
穏やかに笑って告げながら、由良さんが俺を御坂から一番遠い椅子に座らせる。
彼の温もりが離れたことを嘆くより先に、室内に鈍い音が響いた。
「えっ…と…。」
状況が把握できずに由良さんを見上げると、由良さんは大きくため息をついた。
…もしかしてこの人、実は社長の替え玉とか何かなのだろうか…?
由良さんの態度を見ているとそんな気さえしてくるが、御坂の親だということはやっぱり…。
「社長、昨日メールした通り、私がお話ししたいのは息子さんです。彼の勤務先を遠方にすることと彼からの謝罪。それ以外の条件で訴えを取り下げる気はありません。
第二性を利用して一方的に暴力を振るうことは立派な犯罪ですから。」
低い声でゆっくりはっきり、由良さんが男性に告げて。
俺以外の2人が見つめ合い、場に沈黙が走る。
やがて男性が観念したようにスマホを取り出し、操作をして耳に当てた。
「…理人か?今すぐ私のところに来なさい。」
それだけ言うと、彼は通話を切る。相手は御坂だったのだろう。
「時期に理人がここにくる。私は会議に出てくるよ。…ここの鍵だ。話が終わったら返してくれ。」
男性はそう言って由良さんに鍵を渡し、部屋を出ていった。
あんな風に言って大丈夫なのか、とは聞かない。だって大丈夫じゃないに決まっている。
俺がもっとちゃんと回避していれば由良さんにこんな迷惑かけなかったのかな…。
そう思うと苦しくて、強く唇を噛んだ。
「幹斗君。大丈夫だからそんな顔をしないで。」
ふと耳元で囁かれる。
先ほど社長と話していた低くはっきりとした威圧感のある声とは真逆の、雲のような甘い声。
由良さんは鍵を胸ポケットに入れ、繋いでいない方の手を俺の頬に添え、そのまま優しく親指で俺の唇を開いていく。
「噛んではいけないよ。」
愛しげに細められた紫紺の瞳が視界に入った、その途端、乱暴な音を立ててドアが開いた。
「真っ昼間からこんなところでラブシーン広げるとか馬鹿なんですか?」
聞き覚えのある声に背筋が凍りつく。
振り返った先に御坂の姿があった。
「それで俺になんの用ですか?まさかそこのSubのためとか… 」
軽い口調で御坂が言う。
俺はその瞳を見るのすら怖くて、由良さんと手を離し思わず彼の背中にしがみついた。
「社長から話は聞いてない?」
由良さんの声は先程社長と話した時と同じく低くはっきりと威圧感を持って響く。
「…は?なんですかそれ?あっ、昨日なんかメール来てましたけど、それですかね?まだ見てないのでいったんチェックしていいですか?」
由良さんは御坂に対して何も言わず、ゆっくりと俺の方を振り返った。
「幹斗君、…危ないからここに座っていて。」
「えっ… 」
穏やかに笑って告げながら、由良さんが俺を御坂から一番遠い椅子に座らせる。
彼の温もりが離れたことを嘆くより先に、室内に鈍い音が響いた。
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