173 / 261
第2部
復讐③
しおりを挟む
東弥君のおかげで少し冷静になることができた僕は、そのまま仙波に対するglareを解き、本題を持ち出すために彼を席に座り直させる。
「僕からの要求は2つ。まず、レコーダーの前で御坂と君がやったことを全て吐いて欲しい。そしてもう一つは、幹斗君が卒業するまでの2年間この大学から消えて欲しい。休学して留学すれば君自身の強みにもなる。どうかな。」
こちらとしてはかなり譲歩した提案なのだが、仙波は何も言わない。沈黙が答えだと言うことだろうか。
「僕の提案に乗らなくてもいいけれど、御坂は君が思っているより残酷な奴だよ。例えばこのメッセージを元に僕が御坂と君を訴えようとしたところで、御坂は君に全てをなすりつけるだろうね。
幹斗君が悲しむから、僕は君を起訴しようとは思わない。でも今ここでこの条件を飲まないなら容赦なく起訴するし示談には一切応じない。
10秒以内に決めて。10、9、… 」
「……言います。」
枯れた喉からひりだしたような掠れた声で彼はそう告げて、そのまま御坂との出会いから計画実行に至るまで全てを詳しく話した。
御坂に出会ったのはとある定食屋。
仙波が偶然行った先で幹斗君と遭遇し、苛立って睨んでいたところに声をかけられたと言う。
仙波はその頃から幹斗君のことをつけ始めていたらしい。
LINEのメッセージとも整合性が取れており、何より内容に矛盾がないことから嘘である可能性は低いように感じられた。
2年間の休学を約束し、念のため御坂とのLINEのバックアップも取り、犯行現場となったホテルの名前を聞き出してから彼を解放する。
「いっそ清々しいほどの嫌なやつでしたね。殴らなくてよかったんですか?」
苛立った口調で東弥君がため息をついた。
僕は笑ってごまかして、ひとまずカフェの外に出る。
彼を殴ったところで何も解決しない。
昨夜幹斗君は仙波の名前を口に出さなかった。だから僕も、彼を必要以上に傷つけることはやめようと我慢した。
「…御坂には一発くらい入れておこうかな。」
「それがいいですよ。…じゃあ、俺はここで。
あと、これからホテルの監視カメラの記録を取りに行くんですよね?俺の母親が多分その辺顔が効くんで、もし無理そうだったらまた連絡ください。」
「うん、助かるよ。ありがとう。」
手を振って東弥君と別れたあと、今度は咲に連絡を取った。
咲は夜に女性口調でバーのオーナーをやったりもしているが、昼間は少し闇の深い業界で弁護士をしており、かなり顔が広い。
“…なあに、それ。
安心して。そのホテルなら話がつけられると思うわ。その御坂ってひと、二度とこの周辺でお外を歩けないようにしてあげましょう?”
事情を説明したあと電話口から聞こえた声から判断するに、咲もかなり憤っているようだった。
「僕からの要求は2つ。まず、レコーダーの前で御坂と君がやったことを全て吐いて欲しい。そしてもう一つは、幹斗君が卒業するまでの2年間この大学から消えて欲しい。休学して留学すれば君自身の強みにもなる。どうかな。」
こちらとしてはかなり譲歩した提案なのだが、仙波は何も言わない。沈黙が答えだと言うことだろうか。
「僕の提案に乗らなくてもいいけれど、御坂は君が思っているより残酷な奴だよ。例えばこのメッセージを元に僕が御坂と君を訴えようとしたところで、御坂は君に全てをなすりつけるだろうね。
幹斗君が悲しむから、僕は君を起訴しようとは思わない。でも今ここでこの条件を飲まないなら容赦なく起訴するし示談には一切応じない。
10秒以内に決めて。10、9、… 」
「……言います。」
枯れた喉からひりだしたような掠れた声で彼はそう告げて、そのまま御坂との出会いから計画実行に至るまで全てを詳しく話した。
御坂に出会ったのはとある定食屋。
仙波が偶然行った先で幹斗君と遭遇し、苛立って睨んでいたところに声をかけられたと言う。
仙波はその頃から幹斗君のことをつけ始めていたらしい。
LINEのメッセージとも整合性が取れており、何より内容に矛盾がないことから嘘である可能性は低いように感じられた。
2年間の休学を約束し、念のため御坂とのLINEのバックアップも取り、犯行現場となったホテルの名前を聞き出してから彼を解放する。
「いっそ清々しいほどの嫌なやつでしたね。殴らなくてよかったんですか?」
苛立った口調で東弥君がため息をついた。
僕は笑ってごまかして、ひとまずカフェの外に出る。
彼を殴ったところで何も解決しない。
昨夜幹斗君は仙波の名前を口に出さなかった。だから僕も、彼を必要以上に傷つけることはやめようと我慢した。
「…御坂には一発くらい入れておこうかな。」
「それがいいですよ。…じゃあ、俺はここで。
あと、これからホテルの監視カメラの記録を取りに行くんですよね?俺の母親が多分その辺顔が効くんで、もし無理そうだったらまた連絡ください。」
「うん、助かるよ。ありがとう。」
手を振って東弥君と別れたあと、今度は咲に連絡を取った。
咲は夜に女性口調でバーのオーナーをやったりもしているが、昼間は少し闇の深い業界で弁護士をしており、かなり顔が広い。
“…なあに、それ。
安心して。そのホテルなら話がつけられると思うわ。その御坂ってひと、二度とこの周辺でお外を歩けないようにしてあげましょう?”
事情を説明したあと電話口から聞こえた声から判断するに、咲もかなり憤っているようだった。
11
お気に入りに追加
703
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。


いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる