強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

文字の大きさ
上 下
172 / 261
第2部

復讐②

しおりを挟む
「待たせてごめんね。」

近寄って東弥君が声をかけると、仙波は顔を上げ嬉しそうに笑う。

その様子を見ていると彼が幹斗君に危害を加えたとは到底思えない。

「いえ。真鍋先輩、お話できて光栄です。先輩のお噂はかねがね。4年生で学会の口頭発表で賞をとったとか。さすがです。やっぱりSランクのDomはすごいなぁ。」

しかし彼が最初に放った言葉により、幹斗君が雨の日に泣きそうになりながら話していた悩みを思い出した。

“後輩がDom至上主義で悩んでいる”、と。たしかそう言っていた気がする。

それなら納得がいく。そしてDom至上主義なんて身勝手な理由で彼を傷つけたのなら、本当に許せない。

「いやいや、小さな学会だったし、大したことないよ。」

東弥君は笑って受け答えするも、やはり目が笑っていなかった。

僕が東弥君と隣り合わせで彼の向かいに腰掛けると、仙波がこちらを見て顔をしかめる。

僕がDomだと気付いていないのかもしれない。

「…ところでその方は?」

「俺の知り合い。君に聞きたいことがあるんだって。」

東弥君の返答を聞いて、仙波は“ふーん”、と面白くなさそうに言いながら僕の方を仰いだ。

「なんでしょうか?俺に答えられる範囲なら答えますけど。」

東弥君に対する態度とは違い、かなり舐められているらしい。

「幹斗君に君がしたことについて聞きたい。」

苛立ちを噛み殺しながら努めて穏やかに尋ねると、彼はなぜか嘲笑うような笑みを浮かべた。

「…あー、風間先輩のお兄さんとかですかね?俺なんもしてないですけど、そもそもSubとか心配する必要あり… 」

…限界だ。

つい全ての言葉を聞く前にglareを放ってしまった。

彼が硬直し震える手でスマホを取り出す。

その様子を見て東弥君が立ち上がり、彼からスマホを奪い取った。

「誰に連絡しようとしてる?もしかして…あー、やっぱり。秋月さん、どうぞ。」

東弥君がこちらに渡してくれたスマホにはLINEのメッセージ画面が表示されている。

画面の上の方には御坂の名前が。

履歴を消すか御坂に連絡を取るかしようとしていたのかもしれない。

危なかった。

逃げようとする彼の動きを東弥君が止め、僕は彼をglareを放ちながら睨み付ける。

返してきたglareから察するに仙波のランクはAかB。Sランク2人のこちらの方が圧倒的に上手だ。やはり御坂より先にコンタクトを取ってよかった。

「全部吐け。もし俺のパートナーに同じことしてたらお前生きてないからね。秋月さんが優しくてよかったな。」

東弥君ががたがたと震える仙波の顎を掴み、追い討ちをかけるように容赦なくglareを注ぐ。

荒い口調と極限まで低い声が彼の怒りを露わにしていた。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...