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第2部

泣かないで⑥

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「…またそうやって。」

欲望を噛み潰したような声で由良さんが紡ぎ、入り口に雄があてがわれ、一気に奥まで挿入された。

「あぁっ…!!」

大きく声が漏れる。

こんなふうにはじめから一気に挿入されたのは初めてだ。

十分に解れたそこはすこしも抵抗なくその熱を飲み込んだが、ゴム越しではない肌の感覚にまだ空洞の内壁を一気に擦り上げられた大きすぎる刺激に、一瞬なにが起こったのかがわからず混乱する。

雄の動きと共に快楽の波が迫り上がる。

中が強い収縮を繰り返し、口はだらしなく開き、唾液が口端からこぼれて伝った。

「かわいい。挿れただけでイってしまうなんて。」

由良さんは口元に妖艶な笑みを浮かべ、俺の唾液を彼の舌で拭う。

心臓が壊れそうなほど煩い。

彼は色っぽくて格好良くて、心臓がいくつあっても足りないと思う。

「まだ頑張れる?」

額に汗を浮かべながら彼がじっと俺の目を見て言った。

まだこんなに硬さを帯びているのに、彼はきっと俺が首を横に振ったら少しの抵抗もなく中から去っていくのだろう。

…そんなの嫌だ。まだ繋がっていたい。

俺が頷くのを確認して、彼がありがとうと低い声で囁く。

底無しに甘くて、声を聞くだけで達してしまいそうなのを必死で堪えた。

「苦しくない?大丈夫?」

頭を撫でながら紡がれる優しい言葉に力なく頷く。

奥を揺すられるたび、ゆっくりとした抽挿が繰り返されるたび、甘美な刺激に体が震えた。

ふと、由良さんが俺の中を揺すりながら、まだ少し残った首の痕に指先で触れ、その部分に唇を重ねる。

「…もう痛くない…?」

憂いを帯びた少し掠れた声。

「痛くない…けど… 」

「けど…?」

…いや、何で逆接を続けたんだ俺…。

多分快楽で脳が麻痺しているのだ。これ以上なにも言うまいと口を押さえる。

Say言って,  幹斗。」

しかしcommandを発されれば呆気なく手を外し口を開いてしまった。

「…上書き、してほしい…。…気持ち悪いから…。」

由良さんは俺が苦しむことを嫌う。

プレイの仕置きとして叩かれることはあっても、それはきまって臀部だ。傷が残りにくいからだろう。

けれど、御坂にプレイをされたとき、これが由良さんだったら、と頭の片隅で考えていた。

由良さんはこんなことしないけれど、もし由良さんが俺の首に手をかけるなら、由良さんに全てを委ねているようできっととても気持ちいい。

「…それは、僕に首を絞められたい、と言うこと?」

彼は結合部の動きを止め、繋がったまま俺を彼の膝に座らせるような体勢にしたあと、困ったように首を傾げて俺の瞳をのぞいた。

俺は黙って頷いて、でもいいです、と笑ってはぐらかす。

だっておかしい。されて嫌だったことを、由良さんにならされたいなんて。

しかし由良さんは少し考えるようにしたあと、“いいよ”、と優しく頷いてくれた。

躊躇いがちに俺の首の両側から彼の手のひらが被せられる。

彼に首を覆われている感覚に、むしろ安心する自分がいた。

「怖くない?」

「由良さんなら怖くない。」

キッパリと言い切れば彼は緩く笑んで。

そのまま俺の頸動脈のあたりを親指と人差し指の間で押さえた。
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