強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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第2部

捧げる愛⑤

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一週間前のことを覚えてないのか自然に振る舞う美人三姉妹の二人。
もはや常軌を逸しているその狂いっぷりには感心するばかり。
罪の意識のない無邪気な少女たちの狙いとは。

「おい待て! お前らはお客なんだから黙って座ってればいいんだ。
それに前回みたいに飲み物に変なものを入れられたら敵わない。
俺がいれるから大人しく待ってろ! 」
まったく冗談じゃない。もう二度とごめんだ。
前回は不覚にもドリンクに混入され動きを封じられた。興奮作用もあったよう。
もはや人間ではなかった。それはこの悪ふざけをした二人も同様。

「ふふふ…… いれてくれるんですか先生が? 」
「ああ俺が…… うん? 」
「本当に? 先生が私に? 」
「おいお茶だぞ。俺はお茶をいれてやるんだからな! 」
まずい。何かおかしなことになってるぞ。
「ああ興奮して。もう先生ったら何を考えてるの? 」
指摘した二女が赤くなる。俺も釣られて顔を真っ赤にする。
「下ネタを言うんじゃない! はしたない奴らだな」
ここは教師として道を外れそうになった生徒を元に戻してやる。
これでいい。俺はまだ教師。ただの変態などではない。

「おい聞いてるのか? 返事はどうした? 」
「はーい! 」
本当に分かってるのか? 先が思いやられるぜまったく。

「そうだ。念の為に荷物検査でもするか。悪いが抜き打ちさせてもらう」
そう言って有無を言わせずに制服のポケットを探る。
そしてスカートも。裏に怪しいものを隠し持ってないかチェック。
入念に三回繰り返す。
これでいい。害をもたらすものはすべて排除する。

「ほらお前も! 後ろを向け! 」
長女はいかにも隠し持っていそう。しかし前回は二女が用意した。
二人を徹底的に調べ尽す。
薬がどれくらいの大きさにもよるがビンにでも入れてるのだろう。
それともポケットにでも隠したか?
前回薬の確認を怠ってしまい俺にはまったく分からないのが現状。

「もう先生。気持ち悪いな」
「抵抗したな。疚しいものを持ち込んだろ? 見せてみろ! 」
つい熱くなって本気で荷物検査をしてしまう。
実は今までやったことはなかった。
先生方の見よう見まねで調べて行く。
興奮してくる。これは癖になりそうだ。
さあもうこれで危険はないだろう。

うん満足満足。うん? 
疑いの目を向ける二人。どうしたと言うんだ?
「どうしたお前たち? 何か問題でもあったのか? 」
「先生はただ触りたかっただけでしょう? 最低! 」
長女は侮蔑の言葉を投げかける。
「ふざけるな! そんなことあるはずが…・・・ ない? あるの? 」
「正直にどうぞ。そしたら許してあげる」
別に許してもらおうとは思わないが。何か嫌な言い方だな。
許すのは常に教師でありお前たちではない。
俺は許される側ではないのだ。許す側なのだ。
「前回充分触ったし見もした。だからそんなことは絶対にない! 」
これ以上追及されて堪るか。

「本当ですか? 」
どこまで本気か分かったものじゃない。
俺はこいつらを訴えることだってできるんだぞ。
お遊びで教師をたぶらかしやがって。
本当に何を考えてやがるんだまったく。
「いいから課外授業を始めるぞ」

ボディーチェックを終え次へと進む。

まだ笑ってるところを見ると何か仕掛けていてもおかしくない。
今度は何だ? 一体どうするつもりだ?
俺を陥れようとしてるのは分かってるんだぞ。
違うのか? 違わないのか? どっちなんだ?
前回が前回だけに疑心暗鬼になる。

ああ何てことだ。純粋な生徒を疑ってしまった。
いや…… こいつらは違うよな。純粋な生徒に混じってる例外。

「先生分かりません! 」
正直なのはいいがちゃんと聞いてるのか疑わしいんだよな。
それでも上達はしてるみたいだしな。
二時間ほどみっちり勉強。意外にも着いて来る二人。
リスニングもアクセントも改善されている。
これはセンスがあるのかもしれないな。

生徒としては失格でも英語の適応力は高いのだろう。
このまま順調に回を重ねれば来年には大体の英語が聞き取れるように。
海外での生活に困らない程度の英語力が身につくだろう。
少々甘めだがこれも彼女たちの努力次第かな。うん上達を肌で感じられる。
英語教師にとって嬉しい限りである。

これが問題の生徒でなければもっと良かったんだが。素直に喜べない自分がいる。
人間性と素行に問題があるからなこいつらは。
果たして更生の道はあるのか? 俺も付き合わざるを得ない。

「これで課外授業を終える。さあご飯に行くか」
実はこれも厳密には禁じられているが多少は良いよな。
教師と生徒とのコミュニケーションの一環さ。


                   続く
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