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第2部
捧げる愛③
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朝起きて、幹斗君が起き出す前に一通りの家事を終えた。
余程疲れたのか幹斗君はまだぐっすりと眠っている。
彼の眠るベッドに腰掛けてその頭に手を伸ばし静かに撫でていると、しばらくして白い目蓋が小刻みに震え、重たげに彼の目が開いた。
「おはよう、幹斗君。」
優しく声をかけると、彼は何も言わずにふわりと笑う。
しかし自らの首に手を伸ばし両手で引っ掻くような仕草をした後で、何かに気づいたように目を大きく見開き絶望の表情を浮かべた。
男性にしては華奢な肩が目で見てわかるほどに震えている。
言葉はなく、彼はただじっと泣きそうな目で僕の瞳を覗いた。
「どうしたの?」
すがるような瞳が求めているのが何なのか、分からずにそう問いかけるも、返事はない。
視線を僕の瞳に固定したまま彼は暫く自分の首を触ったあと、今度は右手の親指で左手の薬指をさすりはじめた。
震える指は、何か足りないものを嘆いているように映る。
「collarと指輪、つけようね。」
ふと思い立って言ってみた。
依然として返事はない。ただ彼の表情の硬直が少し解けたから、それで正しかったのだと悟る。
首にはcollarを、薬指には指輪を。
つけてあげると幹斗君はどこかほっとしたように目尻を和らげ、今度は僕の身体に抱きついてきた。
「どこか痛いところはない?」
僕の問いかけに対し、彼はふるふると首を横に振る。
「何か食べられそう?」
次の問いかけには何も答えが返ってこなかった。
「…おかゆとかなら食べれるかな…?作ってくるから待っていてね。」
また答えは返ってこない。
しかし、キッチンに向かおうとした途端、身体を強く引っ張られた。
驚いて彼の方を振り返ると、これでもかというほど怯えた表情をして僕に縋り付くように強く抱きついている。
行かないで、とでも言うように。
僕が離れるのが怖いのだろう。その様子を、痛々しく思うと同時に愛おしくも思う自分が嫌になった。
僕が彼から離れるなんて考えられないし、恋人として、彼のことを束縛せず彼には彼の望む人生を歩ませたいと思う。
それでも、僕がそばにいないと不安で雛鳥のようにずっとついてくるようなそんな存在を、僕の中のDom性はどうしても喜んでしまうから。
「キッチンまで一緒に行こうか。」
こくり、幹斗君がうなずく。
彼の身体を抱き上げ、いっしょにキッチンへ連れていく。
その過程でふと気がついてトイレに行かせたのだが、彼はそこすら1人で入るのを不安そうにしていて、僕がキッチンに立っている間もずっと何も言わずに背中にしがみついていた。
余程疲れたのか幹斗君はまだぐっすりと眠っている。
彼の眠るベッドに腰掛けてその頭に手を伸ばし静かに撫でていると、しばらくして白い目蓋が小刻みに震え、重たげに彼の目が開いた。
「おはよう、幹斗君。」
優しく声をかけると、彼は何も言わずにふわりと笑う。
しかし自らの首に手を伸ばし両手で引っ掻くような仕草をした後で、何かに気づいたように目を大きく見開き絶望の表情を浮かべた。
男性にしては華奢な肩が目で見てわかるほどに震えている。
言葉はなく、彼はただじっと泣きそうな目で僕の瞳を覗いた。
「どうしたの?」
すがるような瞳が求めているのが何なのか、分からずにそう問いかけるも、返事はない。
視線を僕の瞳に固定したまま彼は暫く自分の首を触ったあと、今度は右手の親指で左手の薬指をさすりはじめた。
震える指は、何か足りないものを嘆いているように映る。
「collarと指輪、つけようね。」
ふと思い立って言ってみた。
依然として返事はない。ただ彼の表情の硬直が少し解けたから、それで正しかったのだと悟る。
首にはcollarを、薬指には指輪を。
つけてあげると幹斗君はどこかほっとしたように目尻を和らげ、今度は僕の身体に抱きついてきた。
「どこか痛いところはない?」
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「何か食べられそう?」
次の問いかけには何も答えが返ってこなかった。
「…おかゆとかなら食べれるかな…?作ってくるから待っていてね。」
また答えは返ってこない。
しかし、キッチンに向かおうとした途端、身体を強く引っ張られた。
驚いて彼の方を振り返ると、これでもかというほど怯えた表情をして僕に縋り付くように強く抱きついている。
行かないで、とでも言うように。
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「キッチンまで一緒に行こうか。」
こくり、幹斗君がうなずく。
彼の身体を抱き上げ、いっしょにキッチンへ連れていく。
その過程でふと気がついてトイレに行かせたのだが、彼はそこすら1人で入るのを不安そうにしていて、僕がキッチンに立っている間もずっと何も言わずに背中にしがみついていた。
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