強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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第2部

捧げる愛②

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…よかった、眠ってくれて。

疲れ切った寝顔はひどく痛々しいが、もう彼が謝らなくていいことに安堵した。

まずは幹斗君の顔を上に向け、口移しでスポーツドリンクを飲ませていく。

あんなに叫んで涙も出したのだから、このままでは脱水症状を起こしかねない。

必要な水分を受け入れるために、彼の喉が力なくこくこくと音を立てた。

頬に垂れた真っ赤な蝋はさながら血のように見える。

それ以外にも手首、肩などの服から露出した至る部分に、その赤は垂らされていた。

肌の薄い部分をそれが滑った時、どれだけ熱かったことだろう。

「ごめんね、脱がせるよ。」

返事がないことをわかっていながら静かに言い聞かせ、幹斗君の洋服を脱がせていく。

collarや下着、指輪のネックレスも取り去り、その愛しくて美しい身体を足先から順に丁寧に確認した。

足には足首の部分に拘束跡が残っているほか、脛の部分に打ち身がある。

背中には拘束台に擦れた跡。腿や腹部に目立った外傷はなかったが、腹部のあるところに触れた瞬間彼の身体が不自然に跳ねたから、そこを強打したのだと悟った。

「…っ 」

彼の受けたであろう暴行の酷さがわかり、思わず唇を噛む。

それからさらに胸部、首…と確認して行き、その細い首にぐるっと一周巻きつくように、ただれた跡や細かいすり傷があることに気がついた。

これではバッドトリップしない方がおかしい。

抵抗する身体を拘束され、殴られ、蝋を垂らされ、手入れのされていない縄で首を強く絞められたのだろう。

…それもパートナー以外のDomに。

SランクのSubは忠誠心が強いと聞く。パートナー以外のDomにされるプレイにはよっぽどのことがない限り大きな精神的苦痛を受けるらしい。

「助けられなくてごめんね。…辛かったね、幹斗…。」

彼が起きる前にその証拠を少しでも取り去りたくて、その身体を抱き上げて浴室へ行き、丁寧に蝋や涙の跡を流した。

「…ごめんね。」

少し躊躇ってローションを指に絡ませ、中にも指を入れる。

中はきつく、犯された様子がないことにせめてそこだけはよかったと思った。

髪と身体の水気を拭き取り、髪を乾かし、寝間着を着せる。

ただれた部分や赤くなった部分には薬を塗って、歯を磨いてやり、ベッドに乗せて。

僕もシャワーを浴び終えて隣に横になると、傷だらけの細い腕が僕の身体に巻きついて、ぎゅっと締め付けた。

「…ゆら、さん… 」

淡い唇が小さく紡ぐ。

彼を傷つけた相手に、彼を1人にした自分に、ふつふつと怒りが込み上げてきて、胸が締め付けられるような苦しみを覚えた。
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