上 下
150 / 261
第2部

楽しみだった日②

しおりを挟む
彼の後に続いて歩くこと20分。

多くの飲食店を見送って、なぜか俺はホテル街を歩いていた。

先ほどから仙波君の口数が不自然に減ったから、ホストクラブやキャバクラからの客寄せの声がやけに大きく聞こえてくる。

「この辺にあるお店なんて、珍しいね。」

確信の持てないぼやけた違和感を覚え、それを隠すように彼に明るく話しかけた。

「そうなんですよー!美味しいんですけど、場所が場所なだけに客が少なくて穴場です。」

「そうなんだ。」

…やっぱり気のせいだよね。

彼の人懐っこそうな笑みを見て安心する。

せっかく仲良くなったのだから変に疑うのはよくない。そういうのは俺の悪いところ。

「あっ、先輩、危ない。」

ふと、彼がそう言って俺の手首を掴んだ。

「…仙波君?」

どうしたのだろう。車か何かが通ったわけでも、何かに躓きかけたわけでもないのに。

戸惑って彼の方を向くと、彼は俺より少し向こう側を見てなぜか笑みを浮かべている。

俺が状況を把握する前に、彼とは違う感触の手にもう片方の手首を掴まれた。

「やあ、久しぶりだね。なかなか連絡をくれないから、会いにきちゃったよ。」

聞き覚えのある声。額に冷や汗が浮かぶ。

「お疲れ様、仙波君。」

「御坂さんもお疲れ様です。」

「さっ、中に入ろうか。」

2人に手を引かれ、すぐ近くの建物の自動ドアをくぐらされた。

…どうして。

なぜこの2人がこんなにも親しげに話しているのだろう。

酷く混乱して、頭がうまく回らない。

もう片方の手を掴んでいるのはあの時のDom。

以前由良さんの会社の前で、俺が落とし物の名刺入れを届けた、彼だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

前後からの激しめ前立腺責め!

ミクリ21 (新)
BL
前立腺責め。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

2人でいつまでも

むちむちボディ
BL
親父と息子の様なガチデブ2人の秘密の関係

処理中です...