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第2部

進展④

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“スマホはヘッドボードに立てて。…そう。そのままカメラに映るように下を脱いで、present晒して。”

glareを放ちながら低く圧を帯びた声で命令される。

由良さんに自ら下半身を晒すなんて恥ずかしくてできない。

そう思うのに、彼の瞳を見ていたら身体が勝手に従ってしまった。

“そう、上手。そうしたら前に手を伸ばして触ってみて。”

言われた通り、緩く勃ち上がった雄に恐る恐る手を伸ばす。自分で触れるのなんて、いつぶりだろう。確かもうずっとしていない。

触れたことによる快楽はなくて、その手を動かしてみたいとも思わなかった。

あるのはただ、自分の雄に自分で触れているのが恥ずかしいという気持ちだけ。由良さん以外からの刺激なら要らないと、身体がそう思っているのだろう。

羞恥で彼から目を逸らしたまま自分のものに触れ固まっていると、スマホの方から再び由良さんの声が聞こえてきた。

“裏の筋の部分を下からなぞってごらん。僕から目を逸らさないで。そうしたらきっと気持ちよくなれるから。”

きっと今彼の瞳を見たら、達するまで目を逸らすことができない。できないとわかっていながら、俺は彼の方に目を向ける。

「ぁっ…んっ… 」

藍の瞳を見た瞬間、触れた部分から突然快楽がこみ上げてきて、ひどく甘い声が漏れた。まるで湖面に張った薄氷うすらいが割れて中の水が溢れ出すみたいに。

“上手。…ああ、声は抑えないで。もう片方の手で先端を弄ってみて。”

「やぁっ…んんっ…ぅっ…、ぁぁっ… 」

由良さんのglareで頭がおかしくなりそうだ。

たとえ自分の手で触れていたとしても、由良さんの指示で実行してると思えば気持ちいい。

…でも、イけない…。

どんなに刺激しても達することができず、もどかしさが募る。

なにがいけないのだろう。こんなにも気持ちいいのに。身体の中でのたうちまわる快楽の波が自分を壊してしまいそうなのに。

“イきたい?”

由良さんが意地悪く紡ぐ。

俺は身をよじり喘ぎながらこくこくとうなずいて、涙目で由良さんの瞳に縋った。

“いいよ。イきなさい、幹斗。”

先ほどより強いglareと共に甘い声で囁かれ、その瞬間に溜まっていた熱が一気に解放された。

身体がびくびくと痙攣する。

どうしてか寂しさや切なさといった感情に襲われて、半ば無意識に由良さんの枕を強く抱えていた。

そのことに気がついたのは達した余韻の緩い快楽が去った後で。

「あの、…ごめんなさい、枕、汚しちゃった…。」

枕カバーについた白濁に気が付き慌てて謝る。しかし由良さんは責めずに柔らかに微笑んだ。

その優しさがプレイ終了の合図を示す。

“いいんだよ。僕のものを抱きしめながら達する幹斗君はとても可愛かったから。上手にできたね。いい子。”

…嬉しい。

久しぶりのプレイは恥ずかしかったけれど気持ちよくて、由良さんのglareとか、プレイ後の褒め言葉とか、そういうものにいつも以上に幸せを感じた。

「あ、の、…ありがとうございました…。」

まだ恥ずかしさが抜けないから、少し俯きながら言う。

“僕の方こそありがとう。おかげで少し君不足が解消されたよ。”

君不足、だなんて、俺の方がずっと由良さん不足だった。

その後はお互いの寂しさを埋めるように、ゆるゆると会話を続けた。

「毎日のLINE、重くないですか?」

“もっとして欲しいくらいだよ。幹斗君からLINEが来ると頑張れる。”

「じゃあ1日10回してもいいですか?」

“そんな縛りをつけていたの?10回でも20回でも、いくらでも嬉しいよ。

今日みたいにプレイはできないけれど、明日からも夜、少し電話していいかな?”

「嬉しいです。」

会話のリレーを繋げるうちに少しずつ眠くなってきて、俺が船を漕ぎはじめた時点で由良さんにおやすみを告げられた。


寂しさと温かさに揺られながら優しい海の中に沈んでいくような、そんな夜だった。

カーテンの隙間から差しこむ光に目蓋をくすぐられて、広いベッドの上で大きく伸びをしたら、また新しい1日が始まる。
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