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第2部

休日デート④

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“…ケイロンは医学、音楽、狩猟などの様々な技術にたけていて… ”

普通の公演にしておけば良かったかな、と心の中で後悔したのは始まってわりとすぐのこと。

プラネタリウムは、中学生以上という年齢制限付きの公演を選んだ。

星空の下、静かな音楽とアロマの香りが漂う室内でリラックスすることをコンセプトとしていて、内容は12星座の神話の読み聞かせなのだが、正直全く内容が頭に入ってこない。

ちなみにナレーションも耳に心地よい眠気を誘う声で、楽しいはずなのに高校の授業の何倍も眠い。

…由良さん、よくあんなに涼しい顔で起きてられるな…。

うっかりしたらすぐにでも船を漕いでしまう俺とは違い、由良さんはじっと公演を聞きながら時折星空に映し出される説明を眺めている。

寝落ちそうになるたびに由良さんを見て目を覚ましていたら、突然後ろから頭を優しく抱え込まれた。けれど視線の先は天井の星を向いたままで。

…えっ…?

戸惑う俺を、由良さんの大きな手は彼の方に優しく引き寄せる。

気付いたら、俺は頭を彼の肩にもたれかけるような体勢になっていた。

“寝てていいよ”

低く甘い声が耳朶を撫でるようにささやく。

…今一番この部屋に入ってから頭が冴えてます…。

真っ暗な室内で、微かに由良さんのつけている香水が鼻をくすぐって、由良さんの右手がすっぽりと俺の頭を覆っていて、ナレーションよりも自分の心臓の音の方が煩く感じた。

…せめてナレーションに集中しよう…。

星に目を向けることもできなくてただただナレーションに意識を向けていたから、結局公演をめちゃくちゃ聞くことができたのである。


プラネタリウムのあとに向かった先は、行こうと言っていたブックカフェ。

広い店内には、読書に静かに集中するための一人がけの席や、談笑しながら楽しむゆったりとしたソファー席、自然が見えるテラス席など様々な席がある。

俺と由良さんはソファー席を選択して、それぞれ気になった本を手に取った。

このカフェの店内の本は全てタイトルが隠されていて、カバーにはその本の推薦文が印刷されている。

表紙やタイトルなどの先入観なしで手に取った本を楽しんでもらう、という目的らしい。

「面白いね。幹斗君のそれは…推薦文から見ると青春物っぽいね。幹斗君、何にする?」

「由良さんのは恋愛小説っぽいです。…俺はこのパスタにします。」

「飲み物は紅茶でいいかな?僕はこのサンドイッチにするね。」

メニューを決めながらお互いの選んだ本のカバーを見合わせる。

由良さんのカバーには”空想好きの幼い少女の成長の物語”、”笑いあり涙ありの愛の物語”、などと書いてある。これが由良さんの選択した本だと思うとちょっと意外だ。

「由良さんはどうしてその本を選んだんですか?」

「ああ、目を瞑って掴んだ本がこれだったんだ。たまにはそういうのもいいと思って。幹斗君は?」

…なるほど。

「内容を見て面白そうなのを…でも、そうやって出会うのも楽しそうですね。」

「せっかくだから新しい作品に出会ってみたいと思って。」

由良さんの言葉を聴いて、大人だなあと思う。

そしてそういう大人の余裕が見えるところもたまらなく好きだ。

「ご注文お伺いいたします。」

「ベーグルサンドのセットとミートソースパスタのセットをお願いします。」

「かしこまりました。お飲み物は… 」

由良さんが手を挙げて店員さんを呼び出して注文をお願いしてくれる。

そして店員さんが頭を下げていなくなると、俺と由良さんは黙って本を開いた。
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