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続編記念ss1
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※いつもお読みいただきありがとうございます。エブリスタでこの作品の続編“深く刻んで、包み込んで”という作品を連載する際に、記念として執筆したssです。こちらにも転載させていただきます。
※本ssは大学3年生の幹斗の、冬休み前あたりの話になります。続編は大学院生になって由良と同居を始めた後のお話です!
冬休み前最後の登校日は、授業があるわけでもなく実験レポートの提出をする日だ。
今時レポートなんて電子媒体で出せばいいだろうと思うけれど、わざと文字化けしたファイルを送って送信事故を装い提出期限を伸ばすという手段が横行したために、印刷して提出BOXに出さなくてはいけないことになっている。
…いや、俺はしたことないしそんなことをしてなんの意味があるのかと思うけれども。
提出BOXが空く時間は30分しかないため、大体真面目な人は開く時間の20分前には集まっている。
なんだか頭も痛いし身体も怠いのに勘弁して欲しい。
でもこれが終われば由良さんと会える約束だから、頑張ろう。
「おつかれー幹斗!!…ねえ、顔赤くない?」
来て俺の顔を見るなり谷津が怪訝そうな顔をして俺の額に手を伸ばしてきた。
「ん…赤い…?」
「うん。喋り方もなんかちょっとおかしい…って、熱っ!!提出は東弥に頼んで帰るよ!」
たしかに谷津の声がやけにきんきん響いてうるさい気がする…。…あ、でも。
「…このあと由良さんと約束… 」
慌てた様子の谷津が何やらスマホを操作する。
「いや約束とかないから!病院直行だから!!…もしもし秋月さん?今大学で幹斗が熱出してて…はい。…はい。えっと、大学のカフェわかりますか?……じゃあそこで待ってます。
ほら、秋月さん来てくれるって。」
えっ、秋月さんって…
「由良さん…?」
いつの間に連絡先を交換してたんだよって言おうとしたが、なんだかぼうっとして頭が回らなくて黙ってしまう。
「そう。由良さん。
…あ、東弥おはよ!幹斗が熱あるから保護者に引き渡してくるわ。俺たちの分の提出頼んでいい?」
「いいけど、大丈夫?」
「うん。カフェまで秋月さんが迎えにくるから。」
「それなら安心だね。幹斗お大事に。」
「うん…ありがと…。」
状況がうまく飲み込めないまま東弥にレポートを託し、ぐいぐいと谷津に手を引かれ、学内のカフェまでを歩く。
あそここんなに遠かったっけ…。
カフェの前のベンチで5分ほど待つと、由良さんが息を切らせて走ってきた。
余裕のない姿が新鮮で、俺は驚いて目を見開く。
「幹斗君、大丈夫?…たしかに熱がありそうだね。このまま病院に行こうか。」
俺に話しかけながら、谷津と同じように由良さんも俺の額に手のひらを当てた。
…あ、由良さんの手、冷たくて気持ちいい…。
額に当てられた由良さんの手を掴み、大きな手に頬をすり寄せると、ひんやりとした感触が心地いい。
不思議だ。この手に触れているだけで、ひどく安心して力が抜ける。
「…あの、幹斗さん?谷津君がここにいるんだけど??あのー、こちらで君の友人の谷津君がじっとみていますよー???」
「ん…気持ちいい… 」
谷津が何かを言ってきた気がしたが、あんまりよく理解できなかった。
「だめだこりゃ。じゃあ秋月さん、あとはお願いします!」
「うん、谷津君、ありがとう。
…さ、幹斗君、行くよ。ちょっと失礼。」
由良さんが俺にマスクをつけ、そのままひょいと背中に担ぎ上げる。
…由良さんのにおい…。
だめだ、彼に触れた途端頭痛みは楽になったけれど、どんどん力が抜けて思考がおかしくなってきた。
…あれ、今俺どんな状態だっけ…。
意識が遠のいていく。
※本ssは大学3年生の幹斗の、冬休み前あたりの話になります。続編は大学院生になって由良と同居を始めた後のお話です!
冬休み前最後の登校日は、授業があるわけでもなく実験レポートの提出をする日だ。
今時レポートなんて電子媒体で出せばいいだろうと思うけれど、わざと文字化けしたファイルを送って送信事故を装い提出期限を伸ばすという手段が横行したために、印刷して提出BOXに出さなくてはいけないことになっている。
…いや、俺はしたことないしそんなことをしてなんの意味があるのかと思うけれども。
提出BOXが空く時間は30分しかないため、大体真面目な人は開く時間の20分前には集まっている。
なんだか頭も痛いし身体も怠いのに勘弁して欲しい。
でもこれが終われば由良さんと会える約束だから、頑張ろう。
「おつかれー幹斗!!…ねえ、顔赤くない?」
来て俺の顔を見るなり谷津が怪訝そうな顔をして俺の額に手を伸ばしてきた。
「ん…赤い…?」
「うん。喋り方もなんかちょっとおかしい…って、熱っ!!提出は東弥に頼んで帰るよ!」
たしかに谷津の声がやけにきんきん響いてうるさい気がする…。…あ、でも。
「…このあと由良さんと約束… 」
慌てた様子の谷津が何やらスマホを操作する。
「いや約束とかないから!病院直行だから!!…もしもし秋月さん?今大学で幹斗が熱出してて…はい。…はい。えっと、大学のカフェわかりますか?……じゃあそこで待ってます。
ほら、秋月さん来てくれるって。」
えっ、秋月さんって…
「由良さん…?」
いつの間に連絡先を交換してたんだよって言おうとしたが、なんだかぼうっとして頭が回らなくて黙ってしまう。
「そう。由良さん。
…あ、東弥おはよ!幹斗が熱あるから保護者に引き渡してくるわ。俺たちの分の提出頼んでいい?」
「いいけど、大丈夫?」
「うん。カフェまで秋月さんが迎えにくるから。」
「それなら安心だね。幹斗お大事に。」
「うん…ありがと…。」
状況がうまく飲み込めないまま東弥にレポートを託し、ぐいぐいと谷津に手を引かれ、学内のカフェまでを歩く。
あそここんなに遠かったっけ…。
カフェの前のベンチで5分ほど待つと、由良さんが息を切らせて走ってきた。
余裕のない姿が新鮮で、俺は驚いて目を見開く。
「幹斗君、大丈夫?…たしかに熱がありそうだね。このまま病院に行こうか。」
俺に話しかけながら、谷津と同じように由良さんも俺の額に手のひらを当てた。
…あ、由良さんの手、冷たくて気持ちいい…。
額に当てられた由良さんの手を掴み、大きな手に頬をすり寄せると、ひんやりとした感触が心地いい。
不思議だ。この手に触れているだけで、ひどく安心して力が抜ける。
「…あの、幹斗さん?谷津君がここにいるんだけど??あのー、こちらで君の友人の谷津君がじっとみていますよー???」
「ん…気持ちいい… 」
谷津が何かを言ってきた気がしたが、あんまりよく理解できなかった。
「だめだこりゃ。じゃあ秋月さん、あとはお願いします!」
「うん、谷津君、ありがとう。
…さ、幹斗君、行くよ。ちょっと失礼。」
由良さんが俺にマスクをつけ、そのままひょいと背中に担ぎ上げる。
…由良さんのにおい…。
だめだ、彼に触れた途端頭痛みは楽になったけれど、どんどん力が抜けて思考がおかしくなってきた。
…あれ、今俺どんな状態だっけ…。
意識が遠のいていく。
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