強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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湯船の縁に座らされ、由良さんの指がボディーソープを纏って、爪先から順に俺の身体を滑っていく。

指の間まで丁寧になぞられる感覚に、身体が甘く支配されていった。

…気持ちいいけれど、ちょっとまずいな。

「あの、…自分で洗います… 」

「嫌?気持ち良くない?」

「…嫌じゃない、気持ちいいです…。」

「なら問題ないね。」

愛おしげにそう言われては、もう何も返せない。

毎回こうだ。プレイやセックスのあと一緒に入ると、決まって彼は俺の身体を隅々まで洗う。

けれど今日は何かをした後ではないし、今日まで1ヶ月以上の時間を彼と触れ合うことを望みながら過ごしてきた。

だから、身体がその行為を愛撫と錯覚して、すでに下腹部に溜まっていた熱がどんどん重みを増していって。

ふと、彼は違うのかと疑問に思った。

ここまで平然とされていると、もしかしたら望まれていないのではないかと不安にすらなる。

「幹斗君、まだそんなに不安そうにして…。何かあるなら言って?」

由良さんに肩を撫でながら甘い声で耳朶をくすぐられて、身体が跳ね、余計に熱を帯びた。

さらに不安が加速する。どうしてそんなに余裕そうなのだろう。久しぶりでいっぱいいっぱいなのは俺だけ?

「…幹斗君っ!?」

正常なままの由良さんの中心に手を伸ばすと、彼は切羽詰まった声を上げた。

構わずに手を伸ばし、その先端に唇をつける。

丁寧に舌を這わせると、そこはすぐに硬くなった。

…よかった、反応してくれてる。

「なにしてるの。」

言いながら、手首を掴まれ、口と手から屹立を取り上げられた。

「ゆらさんは、したくない…?」

硬くなってくれて嬉しい、と思うのに、取り上げられて、不満が募る。

寂しい気持ちで彼を見上げると、彼は熱っぽいため息を吐いた。

「…煽ってるって分かって言っているのかな?」

苛立ちを含んだ声で由良さんが言う。

怒られてしまった、と思い、急に自分のしでかした行為を反省した。

これではまた、手放されてしまうではないか。

「…わがまま言って、ごめんなさい…。捨てないで…。」

ぐずぐずと、また泣いてしまった。泣いたら余計に迷惑をかけてしまうのに。

「ああ、怒っているわけじゃないよ。泣かないで。

ゴムもローションもないところでしたら幹斗君が辛いでしょう…?」

甘い声でささやいて、舌で涙を掬われる。

…いい。辛くていい。由良さんがいないのに比べたら、なにも辛くない。

「…したい…。」

立ち上がり、由良さんの体にぴったりと自分の身体を密着して、彼を乞う。

わがまま、許して。頑張ったから、今日だけ特別に。

「…壁に手をついて。」

数秒の沈黙の後、色を帯びた低い声で指示される。

夜を映したような藍の瞳は俺を映し、情欲を孕んでいるように見えた。

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