強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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一度店に戻って会計を済ませた後は、そのまま由良さんの家に行くことになった。

感情的になりすぎたことを反省しながら、由良さんの手を握り、彼の家までの道を歩く。

一緒に歩いていて、街がバレンタイン色に染まっていることに、初めて気がついた。

由良さんといると、世界が綺麗だ。来た時も通ったはずの道なのに、先ほどまでと同じ景色を見ているとは到底思えない。

階段を上り由良さんの家の前に着くと、手を繋いだまま中に入り、久しぶりの彼の部屋に胸がいっぱいになる。

「だいぶ降られてしまったね。シャワー、先に浴びておいで。」

確かに、雪とはいえ傘をささずに降られてしまったから、由良さんも俺も髪から滴が零れるくらいには濡れてしまっている。

しかし、彼が俺の手を離そうとした瞬間、反射的に彼の手を握る力を強くしてしまった。

いけないと思い力を緩めようとするもむしろ離そうとすればするほど強く締め付けてしまう。

脳裏に、“要らない”、と言ってcollarを切られた、あの時の記憶が蘇ってしまって。

ねえ由良さん、もう俺のこと離さない?

…不安でたまらない…。

記憶に連鎖してさまざまな感情わがままがどっと湧き上がる。

「…一人にしないで…。」

気付いたら口に出していて、由良さんは考えるように数秒目を泳がせたあと、俺の瞳を覗き込み、

「一緒に入ろうか。」

幼子をあやすような声で言いながら、俺の頭を優しく撫でてくれた。

手を引かれ脱衣所に連れて行かれる。

一枚一枚、繊細な氷細工に触れるように丁寧に、由良さんは洋服を脱がせてくれた。

ぱさり、と布が落ちる音がするたび、由良さんの指が直に触れる部分が多くなる。

俺と繋いでいた方の手だけが温かくて、その事実に安堵して。

安心したら、ふと近くにある鏡が視界に入って、自分が置かれている状況を認識した。

すでに上半身は何も纏っておらず、二つの突起は赤く腫れ、勝手に主張を始めている。

フラれたあとは特に何もしていなかったけれど、調教の名残か服が強く擦れたりすると時々疼くことがあって、そこに由良さんを重ねて泣いてたっけ。

だんだん恥ずかしくなってきた。いやこの状況がすでにもうとんでもなく恥ずかしい。

一人にしないで、とか子供か。

それで一緒に入ってくれる由良さん、格好良すぎるし…。そんなふうに愛おしそうに身体を眺めてくるの反則だし…。

考えるうちに、意図せず下腹部に熱が溜まっていくのを感じた。

…これはまずい…。

「…あの、やっぱり一人で入れます…。」

「そんな不安そうに言われても、放って置けないよ。」

「でも… 」

すり、と太腿をこすり合わせると、やっぱり硬くなってきているのがわかる。

こんな状態では、下を脱ぐことすらできない。

「…ああ、なるほど。気にしなくていい。」

くすりと笑って、由良さんが下の方にも手をかける。

半端に勃ち上がった雄が晒されて、恥ずかしくて俯いた。

俯いた先、彼が服を脱ぎ始めて、引き締まった肢体にどくりとする。

「入ろうか。」

手を引かれ、バスルームに誘導された。
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