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震える右手にカッターを持ち、左手首に刃をそわせる。
耐えがたい恐怖に襲われるのに、どうしてか止めることができない。
左手首を少しひねると赤い線がうっすらと浮かんで、今度はそれを引っ掻きたくなったけれど、どうにか抑えた。
代わりに首に両手を添え、思いっきり締め付ける。
「…っ、はぁっ…、はぁっ…!」
視界が涙で滲み、反射的に開いた口からは唾液が溢れる。
ぴぴぴ、アラームが鳴った。
「学校行かなきゃ…。」
顔を洗って、手首には肌色の絆創膏を貼り、その上から由良さんにもらった時計をつける。
そしてリュックに授業テキストを入れ、菓子パンを口に詰め込んで、よろめきながら外に出た。
Sub性が満たされないと、自傷衝動や体調不良が誘発されると言うが、本当らしい。
由良さんと別れて3週間経ったあたりから症状が顕著に出始めて、はじめはなんとか抑え込んだが、土日に入って人と会うことが無くなり、衝動が抑えきれなくなった。
恐ろしいことに、自傷行為を行うとSub性が満たされたように錯覚してしまう。
大学までの二駅でさえ、自分の手の甲に爪を立てていないと落ち着かなかった。
この状態が続くのは良くないとわかっているし、いっそまた由良さんと出会う前のようにクラブに行って行きずりの相手とプレイした方がいいのもわかっている。
わかっているけれど、俺はそれをしない。
だって、せめて由良さん以外の人間に従いたくないという、この一生消えないであろう自分の気持ちを、俺は大切に生きていきたいと願うから。
たとえそれで自分の身体が傷ついても、自分でその道を選んだのだから、後悔はしない。
耐えがたい恐怖に襲われるのに、どうしてか止めることができない。
左手首を少しひねると赤い線がうっすらと浮かんで、今度はそれを引っ掻きたくなったけれど、どうにか抑えた。
代わりに首に両手を添え、思いっきり締め付ける。
「…っ、はぁっ…、はぁっ…!」
視界が涙で滲み、反射的に開いた口からは唾液が溢れる。
ぴぴぴ、アラームが鳴った。
「学校行かなきゃ…。」
顔を洗って、手首には肌色の絆創膏を貼り、その上から由良さんにもらった時計をつける。
そしてリュックに授業テキストを入れ、菓子パンを口に詰め込んで、よろめきながら外に出た。
Sub性が満たされないと、自傷衝動や体調不良が誘発されると言うが、本当らしい。
由良さんと別れて3週間経ったあたりから症状が顕著に出始めて、はじめはなんとか抑え込んだが、土日に入って人と会うことが無くなり、衝動が抑えきれなくなった。
恐ろしいことに、自傷行為を行うとSub性が満たされたように錯覚してしまう。
大学までの二駅でさえ、自分の手の甲に爪を立てていないと落ち着かなかった。
この状態が続くのは良くないとわかっているし、いっそまた由良さんと出会う前のようにクラブに行って行きずりの相手とプレイした方がいいのもわかっている。
わかっているけれど、俺はそれをしない。
だって、せめて由良さん以外の人間に従いたくないという、この一生消えないであろう自分の気持ちを、俺は大切に生きていきたいと願うから。
たとえそれで自分の身体が傷ついても、自分でその道を選んだのだから、後悔はしない。
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