強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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ごーっ、という音とともに、人の悲鳴が聞こえてくる。

クリスマスの余韻を残したままの遊園地は、すべての乗り物に少し並べば乗れるくらいの絶妙な空き具合。

由良さんからもらった時計に目をやると、現在約束の時間の10分前。今日は早めに仕事が終わるからと、由良さんがデートに誘ってくれたのだ。

…遊園地なんて、学校行事以来だな…。

映画の時みたいに笑われないように、券売機前のベンチに座って園内の様子を茫然と見つめる。

まだ、あの違和感の正体はわかっていない。

でもクリスマスから今日まで、由良さんとのやりとりは普通だった。だからあんな不安なんて杞憂だ。

「幹斗君、遅くなってごめんね。」

息を切らして由良さんが来たのは、待ち合わせ時間の10分後。

流石にスーツで遊園地はまずいと思ったのか、私服に着替えている。

「いえ、大丈夫です。」

「じゃあ、行こうか。何乗りたい?」

「ジェットコースター…かな?」

「いいセンスだね。」

当然のようにチケットを2人分買って、待たせたお礼、なんて言って温かいココアまで買ってくれた。

いつもどおり、格好良過ぎて困る。

…けれど、やっぱり何か、違和感が拭えない。

ジェットコースター、バイキング、迷路、お化け屋敷、観覧車。由良さんと一緒に乗っているというだけでどれも今までよりずっと楽しくて、由良さんも楽しそうにしていたのに、その間ずっと、妙なざわつきを覚えていた。

「そろそろホテルに行こうか。」

由良さんに言われ、うなずく。

…あれ、今日は家じゃないんだ。

そう思ったのはラブホテルの室内に入ってからで。

「幹斗。」

「えっ…?」

突然言われ、驚いた。呼び捨ては、プレイ開始の合図だから。

「したくない?」

「いえ…。」

返事をした途端、軽々と身体を持ち上げられ、ベッドに連れて行かれた。そのまま衣服を脱がされ、手錠と足枷でベッドに固定されてしまう。

由良さんとのプレイがいやなわけでは決してない。でもやっぱりおかしい。今までこんなふうに、前置きもなくプレイをしようと持ち出されたことも、こんな曖昧な返事で、プレイを断行されたこともなかった。

混乱して抵抗しようとした身体の動きは、直ぐにcommand命令で止められて。

何が起こっているかをまるで理解できないまま、ただ俺はじっと、違和感の正体を探していた。
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