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プレイの後は、別々にお風呂に入った。俺が入っている間に由良さんは食器の片付けを済ませてくれていて、さらに俺の髪を乾かして、歯磨きまでしてくれた。
至れり尽くせりである。
「…あの、俺、床で寝るので、由良さんはベッドを使ってください。」
そろそろ寝ようかというところで、そう進言した。
この部屋のベッドはシングルで、男2人が寝るにはあまりに小さい。
誰かが泊まることなど考えたこともなかったから布団もないし、座布団を並べて毛布でもかけて寝ようかな。
「じゃあ僕が床で寝ようかな。」
「え、いや、」
俺が…と言おうとしたところで唇を塞がれた。
「って言ったら断るでしょう?2人でベッドで寝るか、僕が床で寝るか、僕がここから二駅歩いて帰るかならどれがいい?」
「一緒にベッドで…。」
にこやかに言いくるめられて、結局2人でベッドに入る。
狭すぎるため自然と抱き合う形になり、せめて心音が由良さんに聞こえないことを祈った。
そして眠気と緊張と戦うこと30分。
…そろそろ大丈夫かな…?
ベッドに入る前に近くに忍ばせておいた、小さな箱をそっと掴む。
由良さんへのクリスマスプレゼントだ。
ただの名刺入れだが、百貨店で何店か回って手の届く価格の由良さんに似合いそうなデザインを選んだから、気に入ってくれたら嬉しいと思う。
ヘッドボードの由良さん側に置いておけばサンタさんになれると思い、密かに一日中楽しみにしていたのだ。
暗くてよく見えないから、彼に触れないように。細心の注意を払い、プレゼントを持った手をヘッドボードへと伸ばす。
コツン、とプレゼントが何かに当たり、驚いて声が出そうになった。
…由良さんに当たらなければ大丈夫だし、位置的に由良さんには触れてないはず…。流石に自分の部屋のベッドなのだから、手探りでもなんとなく構造はわかる。
…でも、こんなところに障害物ってあったっけ…?
不思議に思ってスマホの電源を入れ、画面の光で手元を照らした。
次の瞬間。
「わっ…!!」
予想外の展開に、思わず大声をあげてしまった。
目の前の由良さんが、口元を押さえて笑いを堪えている。
そう、プレゼントに当たったのは由良さんの手で、さらに由良さんの手にもプレゼントの箱が握られていたのだ。
サプライズ大失敗…どころか、謎の黒歴史を作ってしまった気がする。
「タイミング、ぴったりだったね。」
俺と同じ状況にいるはずなのに、由良さんはさすが大人だ。全く動じていない。
それどころか彼は
「メリークリスマス、幹斗君。」
なんて言って俺を優しく抱きしめてくれて。
…ああもう、失敗でいいや。幸せすぎる。
「メリークリスマス、由良さん。」
よく考えてみれば同じサプライズを考えてきていて同じタイミングでそれを実行しただなんて、すごい偶然だし。
そのまま電気をつけ、お互いのプレゼントを確認した。
由良さんは名刺入れをとても喜んでくれて、早速その場で元の名刺入れと入れ替えてくれた。
由良さんが俺にくれたのは、有名ブランドの電波時計。しかも、結構値が張るやつ。
…来年返せる気がしないから、バイトでも探してお金貯めよう…。
心の中で誓いながら、幸せを噛み締める。
幸せすぎて泣きそうだなんて、人生で一回は体験したいことを、由良さんの前であれば絶対にいつでもできるけれど、格好悪いから我慢した。
至れり尽くせりである。
「…あの、俺、床で寝るので、由良さんはベッドを使ってください。」
そろそろ寝ようかというところで、そう進言した。
この部屋のベッドはシングルで、男2人が寝るにはあまりに小さい。
誰かが泊まることなど考えたこともなかったから布団もないし、座布団を並べて毛布でもかけて寝ようかな。
「じゃあ僕が床で寝ようかな。」
「え、いや、」
俺が…と言おうとしたところで唇を塞がれた。
「って言ったら断るでしょう?2人でベッドで寝るか、僕が床で寝るか、僕がここから二駅歩いて帰るかならどれがいい?」
「一緒にベッドで…。」
にこやかに言いくるめられて、結局2人でベッドに入る。
狭すぎるため自然と抱き合う形になり、せめて心音が由良さんに聞こえないことを祈った。
そして眠気と緊張と戦うこと30分。
…そろそろ大丈夫かな…?
ベッドに入る前に近くに忍ばせておいた、小さな箱をそっと掴む。
由良さんへのクリスマスプレゼントだ。
ただの名刺入れだが、百貨店で何店か回って手の届く価格の由良さんに似合いそうなデザインを選んだから、気に入ってくれたら嬉しいと思う。
ヘッドボードの由良さん側に置いておけばサンタさんになれると思い、密かに一日中楽しみにしていたのだ。
暗くてよく見えないから、彼に触れないように。細心の注意を払い、プレゼントを持った手をヘッドボードへと伸ばす。
コツン、とプレゼントが何かに当たり、驚いて声が出そうになった。
…由良さんに当たらなければ大丈夫だし、位置的に由良さんには触れてないはず…。流石に自分の部屋のベッドなのだから、手探りでもなんとなく構造はわかる。
…でも、こんなところに障害物ってあったっけ…?
不思議に思ってスマホの電源を入れ、画面の光で手元を照らした。
次の瞬間。
「わっ…!!」
予想外の展開に、思わず大声をあげてしまった。
目の前の由良さんが、口元を押さえて笑いを堪えている。
そう、プレゼントに当たったのは由良さんの手で、さらに由良さんの手にもプレゼントの箱が握られていたのだ。
サプライズ大失敗…どころか、謎の黒歴史を作ってしまった気がする。
「タイミング、ぴったりだったね。」
俺と同じ状況にいるはずなのに、由良さんはさすが大人だ。全く動じていない。
それどころか彼は
「メリークリスマス、幹斗君。」
なんて言って俺を優しく抱きしめてくれて。
…ああもう、失敗でいいや。幸せすぎる。
「メリークリスマス、由良さん。」
よく考えてみれば同じサプライズを考えてきていて同じタイミングでそれを実行しただなんて、すごい偶然だし。
そのまま電気をつけ、お互いのプレゼントを確認した。
由良さんは名刺入れをとても喜んでくれて、早速その場で元の名刺入れと入れ替えてくれた。
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…来年返せる気がしないから、バイトでも探してお金貯めよう…。
心の中で誓いながら、幸せを噛み締める。
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