強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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「すごい、これ、全部幹斗君が手作りしたの?」

テーブルの上に並べた料理を見て、由良さんは目を丸くした。

「えっと、そうです。」

「どれもとても美味しそうだ。食べてもいい?」

「はい。」

「じゃあ、いただきます。」

由良さんが家にいてさっき俺を抱き締めただなんて、夢みたいだ。

ドキドキしながらも、楽しくて嬉しくてたまらない。

クリスマスがこんなに楽しいものだったなんて。

「試験は終わったの?」

「ええ、おとといが最後の科目でした。」

「大丈夫だった?」

「なんとか。…由良さんは、お仕事大丈夫ですか?」

「うん。繁忙期で他の部署を手伝っていたのだけれど、大体恋人がいる人は今日は休んでいるしね。」

「恋っ…!?」

「あはは、幹斗君可愛い。」

他愛のない会話を続けながら、由良さんは俺の作った料理をどれも美味しそうに食べてくれた。

「これも幹斗君の手作り?」

サラダの上に乗ったローストビーフを指して由良さんが尋ねてきたので、俺は首を縦に振る。

「ローストビーフって家で作れるんだ。」

「ブロックがあれば。…って言っても、今回はローストしない作り方で作ったのですが…。」

「すごく美味しいよ。お店みたい。」

「そんな、…嬉しいです。」

由良さんはすべての料理を美味しいと言って食べてくれて、作りすぎて余ったラザニアとミートパイを持って帰ってくれないかと問うと、喜んで承諾してくれた。

「ケーキ、二種類買ってみたんだけど、どっちがいい?」

食べ終わってしばらくして、由良さんがケーキの箱を開けてくれた。

中には、2ピースのケーキが。

一つはたっぷりと苺の乗ったタルト。飴がけされた苺が艶々と綺麗で、さらに生地はスポンジではなく綺麗なピンク色のムースになっている。

もう一つは鏡面のように滑らかなチョココーティングがされたザッハトルテ。乗っている金箔がさらに美しさを際立たせていて、夜の月を連想させた。

「ケーキ、ありがとうございます。どちらもすごく美味しそうで…。」

選べない、と言いかけて言葉に詰まる。選べないはずるい。どっちか一つに決めなければ。…ああでも、どちらも美味しそうすぎる…。

見ていた由良さんがふはっ、と吹き出した。

「半分ずつ食べようか。」

「はいっ!!」

…やってしまった、と自覚した頃には時すでに遅し。

選べない上に半分ずつという提案を嬉々として受け入れるだなんて、俺は子供か。

…まあでも、どっちもすごく美味しいからいいや。

大満足でケーキを食べ終えると、いつの間にか、向かいに座っていた由良さんが俺の隣に移動している。

まずい、またドキドキしてきた。

「ねえ、幹斗君。」

…あれ。

由良さんの声音が、先程とは違う。低く、甘く、掠れていて、色っぽい。

セックスするときの声だ…。

「プレイとえっち、どっちがしたい?」

優しく肩を抱かれ、耳元で尋ねられる。由良さんの声でそんな卑猥なことを言うなんて、反則だ。

…どうしよう。食器も洗ってないのに、もうしたくて堪らない。

だって会えない間、ずっと我慢していたから。

「…どっちも、が、いいです。」

緊張しながら素直に言うと、“僕もだよ”、と由良さんが、艶やかに笑った。
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