66 / 261
10-6
しおりを挟む
「まずどのくらい耐えられるか確認しようね。耐えられなくなったら、左手で机を叩いて。」
そう言って由良さんは、水で満たした洗面器を机の上に置いた。
ちゃぷんと音を立て由良さんが俺の顔を水に埋める。
身体が危機を察知して反射的に逃げ出そうとしたが、上から強く押さえつけられた。
「…苦しい?」
尋ねられ、水の中でふるふると首を横に振った。
押さえつけられることでより不安が煽られるが、予行練習でそんなことを言っていても仕方がない。
どのくらいの時間が経っただろうか、だんだん息が苦しくなってきて、少しだけ息を吐こうとした。すると意図せず全ての空気を吐き切ってしまい、肺が新たな空気を吸い込もうとする。
わかっている。ここは水の中で、いくら吸っても水しか得られない。
けれど習慣とは怖いものだ。わかっているのに、鼻から、口から、思いっきり息を吸ってしまった。
…苦しい。
侵入してきた水を吐き出そうと、身体がもがく。咳を出そうとしても出すことができなかった。
苦しくて身体が暴れ、押さえ込む腕を、必死で跳ね除けようとするけれど、それでも由良さんの腕はびくともしない。
ふと、限界になったら机を叩けと言われたことを思い出した。
…でも、そんなことでは、由良さんに想いは伝えられない。
口から、鼻から、水が入ってくる。
もう無理だ、と思った時、やっと頭を押さえる力が弱くなり、俺は勢いよく顔を上げた。
「げほっ…、ごほっ、ぐっ… うぅっ…、げほっ…!」
新たな空気を少しでも多く取り入れようと、そして体内の水を全て吐き出そうと、身体は必死にもがきだす。
俺を襲うのは、全力疾走した後に酸素の薄い場所に連れて行かれたような、耐え難い苦しみ。
何度か呼吸を繰り返しやっと落ち着いてきたところで、“幹斗”、と由良さんが、プレイ中だとは思えない、雲のような優しい声で囁いてきた。
「…全身を潜らせたら、もっと苦しいよ。僕への忠誠はわかったから、水槽に入るのはやめておこうか。」
端正な唇が歪んでいる。
彼は以前、Subに苦痛を与えるのが苦手だと言っていた。なら、この行為は彼にとってしたくないことであるかもしれない。
…けれど俺は、ふと彼の瞳の奥に期待が宿っていることに気がついた。
そう、彼はDomなのだ。きっと彼のDom性はこの行為によって満たされる。Subの強い従属を嫌うDomはいない。
「辞めません。由良さんに委ねたい。」
はっきりと言ってのけると、負けたよ、と由良さんが苦笑まじりに言った。
そう言って由良さんは、水で満たした洗面器を机の上に置いた。
ちゃぷんと音を立て由良さんが俺の顔を水に埋める。
身体が危機を察知して反射的に逃げ出そうとしたが、上から強く押さえつけられた。
「…苦しい?」
尋ねられ、水の中でふるふると首を横に振った。
押さえつけられることでより不安が煽られるが、予行練習でそんなことを言っていても仕方がない。
どのくらいの時間が経っただろうか、だんだん息が苦しくなってきて、少しだけ息を吐こうとした。すると意図せず全ての空気を吐き切ってしまい、肺が新たな空気を吸い込もうとする。
わかっている。ここは水の中で、いくら吸っても水しか得られない。
けれど習慣とは怖いものだ。わかっているのに、鼻から、口から、思いっきり息を吸ってしまった。
…苦しい。
侵入してきた水を吐き出そうと、身体がもがく。咳を出そうとしても出すことができなかった。
苦しくて身体が暴れ、押さえ込む腕を、必死で跳ね除けようとするけれど、それでも由良さんの腕はびくともしない。
ふと、限界になったら机を叩けと言われたことを思い出した。
…でも、そんなことでは、由良さんに想いは伝えられない。
口から、鼻から、水が入ってくる。
もう無理だ、と思った時、やっと頭を押さえる力が弱くなり、俺は勢いよく顔を上げた。
「げほっ…、ごほっ、ぐっ… うぅっ…、げほっ…!」
新たな空気を少しでも多く取り入れようと、そして体内の水を全て吐き出そうと、身体は必死にもがきだす。
俺を襲うのは、全力疾走した後に酸素の薄い場所に連れて行かれたような、耐え難い苦しみ。
何度か呼吸を繰り返しやっと落ち着いてきたところで、“幹斗”、と由良さんが、プレイ中だとは思えない、雲のような優しい声で囁いてきた。
「…全身を潜らせたら、もっと苦しいよ。僕への忠誠はわかったから、水槽に入るのはやめておこうか。」
端正な唇が歪んでいる。
彼は以前、Subに苦痛を与えるのが苦手だと言っていた。なら、この行為は彼にとってしたくないことであるかもしれない。
…けれど俺は、ふと彼の瞳の奥に期待が宿っていることに気がついた。
そう、彼はDomなのだ。きっと彼のDom性はこの行為によって満たされる。Subの強い従属を嫌うDomはいない。
「辞めません。由良さんに委ねたい。」
はっきりと言ってのけると、負けたよ、と由良さんが苦笑まじりに言った。
11
お気に入りに追加
696
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる