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「姉の親友に、ある日告白されてね。…ああ、姉って言っても、僕は里子だから血は繋がっていないんだけれど。
ゲイだって断ったら、押し倒されて…、そのまま行為を強いられたんだ。」
ごく小さい震え声で、つっかえながら、それでも由良さんはちゃんと俺に話そうとしてくれている。
だから、その告白がどんな内容でも、一言も漏らさずに聞こうと思った。
俺は無言でうなずき、続きを求める。
「…でも、それはよくて。そのあと僕との間に子供ができたって言われて、それから僕はその人のこと避け続けてしまってね。
…その人、出産で亡くなったんだって。親伝いに知ったんだ。」
由良さんの震える手が、苦しいって言っている。涙を押し殺したような声は、とても痛々しい。
衝撃の告白に俺はすぐには言葉が出なかったけれど、代わりに由良さんの手をぎゅっと握った。
…なんて酷い話だ、と思う。体格差を考えれば、確実に抵抗できたはずだ。けれどその状況で動けなかったと言うことは、何か違う原因があったのだろう。
話にちらっとだけ混じっていた、彼が里子だという事実が関係しているのではないだろうか。なんとなくそう思った。
同時に、ゲイなのに子供がいる、という矛盾にも、そういうことだったのかと納得する。
「でも、僕は、…その子供の父親だって言うことを誰にもいえなくて。その子は、この世界で唯一僕と血の繋がった相手なのに。それに、僕がちゃんと拒んでいたら、彼女は死ななくて…。
無責任で最低な行為だと幻滅したでしょう。でも、ここまで聞いてくれて、ありがとうね。」
多分泣いているであろう由良さんの表情を、まともに見ることができなくて、俺は前を向いた。
薄いカーテン越しに、ぼやけた水槽が覗く。
やっぱり聞いておいてよかった、と思う。話を聞いたら、余計に由良さんのことが好きになった。
由良さんは絶対に悪くない。悪いのは完全に相手の方。
けれど彼は、そのことについてずっと自分を責め続けてきた。その子供のことと、…おそらく、自分を強姦した彼女について。
悪くないと、口で否定するのは簡単なこと。でも、そうしたら由良さんの今までの生き方まで否定してしまう気がする。
…ならそれごと、受け止めればいい。
「…由良さんがどれだけ辛い思いをしたのか、俺なんかにはわからないと思います。
でも、自分がされたことを恨まずに、自分に嫌なことをした相手のことすら思い遣る、そう言う優しいところ、好きです。
話してくれてありがとうございます。俺、もっと由良さんのこと、好きになりました。」
一息に言って、深呼吸をしたら、なんだか自分の言ってることが恥ずかしく思えてきた。
…ちょっと格好つけすぎた?
というか俺、何様だ…?
ゲイだって断ったら、押し倒されて…、そのまま行為を強いられたんだ。」
ごく小さい震え声で、つっかえながら、それでも由良さんはちゃんと俺に話そうとしてくれている。
だから、その告白がどんな内容でも、一言も漏らさずに聞こうと思った。
俺は無言でうなずき、続きを求める。
「…でも、それはよくて。そのあと僕との間に子供ができたって言われて、それから僕はその人のこと避け続けてしまってね。
…その人、出産で亡くなったんだって。親伝いに知ったんだ。」
由良さんの震える手が、苦しいって言っている。涙を押し殺したような声は、とても痛々しい。
衝撃の告白に俺はすぐには言葉が出なかったけれど、代わりに由良さんの手をぎゅっと握った。
…なんて酷い話だ、と思う。体格差を考えれば、確実に抵抗できたはずだ。けれどその状況で動けなかったと言うことは、何か違う原因があったのだろう。
話にちらっとだけ混じっていた、彼が里子だという事実が関係しているのではないだろうか。なんとなくそう思った。
同時に、ゲイなのに子供がいる、という矛盾にも、そういうことだったのかと納得する。
「でも、僕は、…その子供の父親だって言うことを誰にもいえなくて。その子は、この世界で唯一僕と血の繋がった相手なのに。それに、僕がちゃんと拒んでいたら、彼女は死ななくて…。
無責任で最低な行為だと幻滅したでしょう。でも、ここまで聞いてくれて、ありがとうね。」
多分泣いているであろう由良さんの表情を、まともに見ることができなくて、俺は前を向いた。
薄いカーテン越しに、ぼやけた水槽が覗く。
やっぱり聞いておいてよかった、と思う。話を聞いたら、余計に由良さんのことが好きになった。
由良さんは絶対に悪くない。悪いのは完全に相手の方。
けれど彼は、そのことについてずっと自分を責め続けてきた。その子供のことと、…おそらく、自分を強姦した彼女について。
悪くないと、口で否定するのは簡単なこと。でも、そうしたら由良さんの今までの生き方まで否定してしまう気がする。
…ならそれごと、受け止めればいい。
「…由良さんがどれだけ辛い思いをしたのか、俺なんかにはわからないと思います。
でも、自分がされたことを恨まずに、自分に嫌なことをした相手のことすら思い遣る、そう言う優しいところ、好きです。
話してくれてありがとうございます。俺、もっと由良さんのこと、好きになりました。」
一息に言って、深呼吸をしたら、なんだか自分の言ってることが恥ずかしく思えてきた。
…ちょっと格好つけすぎた?
というか俺、何様だ…?
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