強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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真鍋東弥と名乗った彼は、明るい茶髪に片耳ピアス、シルバーのリングネックレスと、見るからに量産型のコミュ力高い系大学生。その上爽やか系のイケメン。人間関係がほぼ谷津と由良さんで構成される俺は、彼と分かり合える気がしない。

「初めまして、だね。谷津と同じサークルの真鍋東弥です。よろしくね。」

「風間幹斗です。…えっと… 」

「東弥でいいよ。」

「よろしく。その…、東弥君。」

精一杯の笑顔で返したが、俺はちゃんと笑えているだろうか。…否、谷津が非常に難しい顔をしているのでうまく笑えている確率は限りなくゼロに等しいだろう。

「東弥おっはよー…て、なになに、風間君と話してんの??めっずらしー!!」

ほとんど間をおかず、みるからに東弥君と一緒にいそうな三人組が入ってきた。女子が一人と男子が二人。女子の方は覚えている。確かクラス代表の子だ。

「ねーねー風間君、あの従兄弟さん?超イケメンだったじゃん?結婚とかしてんの??」

「風間ー来年はお前ミスターコン出てみたらどうだ?お前なら絶対優勝できるって。今年のトップもなんだかんだ医学の雰囲気イケメンがとってたし。」

「ねえねえ打ち上げ行かない?今日なんだけど。」

三人が一人ずつ俺に質問を投げかけてくる。俺は一度に全てを軽く返せるようなスペックを持ち合わせてないのだけれど…

「ほらほら幹斗が困ってるだろーもー。ってゆーか幹斗のことそんなに絶賛するなら俺のことも褒めてくんない!?俺もミスターコンいける??」

固まってる俺の横で谷津が助け舟を出してくれた。

「なにそれー!!!」

三人が軽く受け流し、そこで俺を交えた会話は終了する。

「ところでさ東弥今日はそんな前の方座んの?珍しいね。」

ふと、三人のうちの一人が、東弥に向かってそう言った。

確かに、俺と谷津はいつも並んで前から三列目の席に座っているが、だいたいその前にはいかにも研究オタクになりそうな真面目な子達しか座らない。

「んー…、気分転換ってことで。幹斗とも仲良くなりたいし。」

爽やかに言ってのけた東弥の一言が、俺には死亡宣告に聞こえた。

俺は、あまり新しい関係を作るのが得意じゃない。特にDomとは。”glareの効かない欠陥品”という扱いを受けた試ししかないからだ。

そして多分東弥はDomだ。

コミュ力の高い谷津があまり目を合わせないようにしているから、かなりの高確率で。

予鈴が鳴る。あと五分で授業が開始の合図だ。

始まる前に由良さんに一言だけLINEしようかな。

緊張しながらLINEを開くと、すでにメッセージが入っていた。

”幹斗君、おはよう。もし今夜空いていればデートしない?”

「へっ!?」

デート!?思わず変な声が漏れてしまう。そんな甘い響きの言葉を自分が聞くことになるだなんて思わなかった。何かを察したのか谷津が隣でニヤニヤしている。

明日は休日。…っていうことはプレイを期待していいのだろうか。そして、アレも…。

“予定ありません。楽しみにして…”

楽しみにしています、と打ちかけたが、結局、”待ち合わせはどこですか?”にとどめておいた。

あまり舞い上がっていることを知られたら、

…子供っぽくて、恥ずかしいから。
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