強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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大きくて節ばった手の感触。明らかに女性のものではないとわかる。

「待たせてしまってごめんね。…それで、その子たちは?」

「由良さん!?」

確信もないのについそう口にしながら振り返ると、そこには本当に由良さんがいた。

「ええっ、お兄さんもめっちゃイケメン!!…じゃなくて、私彼の袖にお茶溢しちゃって、弁償しようかなって!」

「そうそう!それでそのブランドそこに入ってるじゃん?だから、良かったらお兄さんも一緒にいきません?」

状況をどう説明しようか考えているうちに、話がどんどん進んでいく。

ふと、フリーズしている俺の、由良さんに掴まれていない方の手の拘束が解かれた。

その隙に由良さんの方へ引き込まれたかと思うと、彼は俺の肩を抱き寄せ、悪戯っぽく2人に笑いかける。

「ごめん、彼は今から僕と大切な用事があるから。」

言いながら、由良さんの指は俺のうなじを緩く擦る。その微かな刺激が伝播し、身体中が震えた。

「ね、行こっ!!」

「えっ、なんで?」

「いいから!!」

何かを察したように、片方の女子がもう1人の腕を掴んで、そそくさと立ち去って行く。

…やばい、腰、砕けそう…。

酷くドキドキして、周りのことを気にする余裕が無くなり、身体から自然と力が抜け、足元がよろけた。

「…んっ… 」

さらによろけた瞬間腰に手を添えられて、思わず変な声が漏れてしまう。

「ここじゃ落ち着かないね。入ろうか。」

由良さんはゆったりと微笑んで、俺と繋いでいる手を離すと、そのままカフェのあるビルの中に入って行った。

ボタンを押すとエレベーターがすぐきて、由良さんは何も言わずに先に乗った。俺も後に続く。

うなじを指で擦られた感覚も、手を握られていた感触も、腰に手を添えられた感触も、まだ身体に刻まれていて。

その感覚を思い返すたびに胸が熱くなるのに、思い返さずにはいられない。

…いま、この中は、由良さんと2人きり…。

エレベーターの鏡に映る自分が、今どんな表情をしているのか。怖くて絶対に見ることができないから、由良さんの靴をただじっと見つめた。

…高いやつだ、これ。
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