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ep40
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先程手を挙げた者以外もまた、蘭と同じ方へと消えていく。
残った者たちは紅司と一葉をぐるりと囲むように立っていた。ぴろん、と動画を撮る音がする。
…チャンスかもしれない、と思った。今ここにいる全員がDom性だ。そのうえ、一葉に視線を集中している。
でも…
もし仮に一葉のglareがほとんど効かなかったら?
紅司が傷つけられた上に、一葉まで拘束されてしまう。そうしたらもう、手の施しようがない。
紅司は今ほとんど動けない状態だし、殺しはしないまでも怒った蘭が彼に危害を加えることなど容易に推測可能な事態だ。
相手が何者かはわからないが、愛染家が融資して一葉が蘭のものになれば、紅司は無事に返される。
…それで、いいじゃないか。あの時みたいに紅司にけがを負わせることは、したくない。
「紅司様…。」
静かに呼びかける。くくりつけられた紅司はぐったりとして、目隠しをされて、見るに耐えない姿だった。
Domにとって自分のSubを守ることのできないこの状況は、耐え難い苦痛だろう。
いやまて、今ここで紅司の目隠しを外すことさえできれば。
「おっと危ねえな。させねえよ?」
考えて、手を伸ばした瞬間、その手は紅司の後ろにいた者に弾かれた。
「次やったらその前にこいつを殺すぞ。」
そう脅されてしまっては、もう何もできない。
「わんちゃん、ちょーっと俺らと遊ぼうか。」
「主人が脱力しきって目隠しされてる状態だもんなぁ?いくらDomのトップとはいえglareさえ封じれば何もできないだろ?」
「主人に危害を加えられたくなければ大人しくしてな。」
「愛染家の跡取りが、妹ごときのためにこのざまか。笑える。」
色々な方向から、罵詈雑言が聞こえてくる。全員が、支配欲にまみれた汚い視線を一葉を浴びせた。
紅司は何も言わず、耐えているように見える。
「お利口にしなよ、わんちゃん。まずは俺からだ。」
次は俺、次は俺と楽しげな声が聞こえて、でもそのとき、紅司の口元がたしかに笑った。周りがざわめく。一葉もまた、意味がわからなくて混乱した。
頬に男の手が触れて、不快感に一葉は不快感で静かに呻く。でも、紅司は少しも動じない。
「おいおいどうした、とうとう頭でもおかしくなったか?」
「喋る以外になーんもできないくせにな!」
何を言われても、紅司の口角が下がることはない。やがて、薬を飲んだ時についた液体で濡れた、赤い唇が、ゆっくりと開かれる。
「行け、一葉。」
凛とした低い声が、その場に響き渡る。
…そういうことか、と理解した。一葉と同じように、紅司も一葉がglareでこの場を圧倒することを考えたのだろう。
でも、失敗したら…。
「…大丈夫だ、信じている。」
悪い方にし考えられなくて止まっていた一葉に、紅司の優しい声音が響く。
「かしこまりました。」
すうっと深呼吸をして、ダイナミクスを切り替える。頭痛や吐き気も、今だけは気にしている場合じゃない。
…もう一生Subでいいから、今だけは、誰よりも強いDomでありたい。そう願いながら、目を開く。
…誰にも触らせない。手出しさせない。この人は、俺が守る。
残った者たちは紅司と一葉をぐるりと囲むように立っていた。ぴろん、と動画を撮る音がする。
…チャンスかもしれない、と思った。今ここにいる全員がDom性だ。そのうえ、一葉に視線を集中している。
でも…
もし仮に一葉のglareがほとんど効かなかったら?
紅司が傷つけられた上に、一葉まで拘束されてしまう。そうしたらもう、手の施しようがない。
紅司は今ほとんど動けない状態だし、殺しはしないまでも怒った蘭が彼に危害を加えることなど容易に推測可能な事態だ。
相手が何者かはわからないが、愛染家が融資して一葉が蘭のものになれば、紅司は無事に返される。
…それで、いいじゃないか。あの時みたいに紅司にけがを負わせることは、したくない。
「紅司様…。」
静かに呼びかける。くくりつけられた紅司はぐったりとして、目隠しをされて、見るに耐えない姿だった。
Domにとって自分のSubを守ることのできないこの状況は、耐え難い苦痛だろう。
いやまて、今ここで紅司の目隠しを外すことさえできれば。
「おっと危ねえな。させねえよ?」
考えて、手を伸ばした瞬間、その手は紅司の後ろにいた者に弾かれた。
「次やったらその前にこいつを殺すぞ。」
そう脅されてしまっては、もう何もできない。
「わんちゃん、ちょーっと俺らと遊ぼうか。」
「主人が脱力しきって目隠しされてる状態だもんなぁ?いくらDomのトップとはいえglareさえ封じれば何もできないだろ?」
「主人に危害を加えられたくなければ大人しくしてな。」
「愛染家の跡取りが、妹ごときのためにこのざまか。笑える。」
色々な方向から、罵詈雑言が聞こえてくる。全員が、支配欲にまみれた汚い視線を一葉を浴びせた。
紅司は何も言わず、耐えているように見える。
「お利口にしなよ、わんちゃん。まずは俺からだ。」
次は俺、次は俺と楽しげな声が聞こえて、でもそのとき、紅司の口元がたしかに笑った。周りがざわめく。一葉もまた、意味がわからなくて混乱した。
頬に男の手が触れて、不快感に一葉は不快感で静かに呻く。でも、紅司は少しも動じない。
「おいおいどうした、とうとう頭でもおかしくなったか?」
「喋る以外になーんもできないくせにな!」
何を言われても、紅司の口角が下がることはない。やがて、薬を飲んだ時についた液体で濡れた、赤い唇が、ゆっくりと開かれる。
「行け、一葉。」
凛とした低い声が、その場に響き渡る。
…そういうことか、と理解した。一葉と同じように、紅司も一葉がglareでこの場を圧倒することを考えたのだろう。
でも、失敗したら…。
「…大丈夫だ、信じている。」
悪い方にし考えられなくて止まっていた一葉に、紅司の優しい声音が響く。
「かしこまりました。」
すうっと深呼吸をして、ダイナミクスを切り替える。頭痛や吐き気も、今だけは気にしている場合じゃない。
…もう一生Subでいいから、今だけは、誰よりも強いDomでありたい。そう願いながら、目を開く。
…誰にも触らせない。手出しさせない。この人は、俺が守る。
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