跪くのはあなただけ

沈丁花

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ep39

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「じゃ、ばーいばい。」

蘭が目配せしたと同時に、桃香を抑えていた男たちがこの雨の中、傘も渡さずに桃香を外へ放り出す。

そのぞんざいな扱いを怒ると同時に、約束通り彼女が解放されたことに安心した自分がいた。

…それもつかの間。

ばたん、鈍い音がした。

目をやると、目の前の紅司が床に崩れ落ちていた。

「ねえ、すごいでしょ?速攻で手足の力が抜けるの!

まあ、3日くらい、ほとんど自分の思うように手足を動かすのはできないかな。ほら、何してんの?はやくそこの椅子にくくりつけて。」

蘭の指示で、紅司の周りに黒いスーツの男たちが群がり、重たげな椅子に手足を括り付けた。

もちろん、目隠しはしたままで。

こいつは何を考えているのか、本当にわからない。この様子を楽しそうに笑って見ているところからして、やはり彼はどこか狂っている。

「あのね、僕はあんまりそういうの興味ないんだけど、僕の雇い主ね、愛染家に融資を断られたから怒っちゃったんだって。

だから、跡取りを人質に取ろうって思ったの。紅司は、お金の契約が済んだら、返してあげる。

でね、一葉さん。」

…そういうことか。

させない、と思いたいが、今の自分に何ができるのだろう。

まず紅司への対策として、何人かはノーマルが混じっているはずだ。

一葉が拘束されないことを考えると周りは一葉のことをSubだと断定している可能性が高い。

しかし一葉がDomに切り替えてglareを放ったとして、ノーマルの動きは止められない。だとすると紅司に危険が及ぶ可能性がある。

それに、一葉より強いDomがいたら?それこそ取り返しがつかない事態だ。

考えていると、脳に響くほどの衝撃が背中に走った。

「一葉さん、聞いてる?

一葉さんは、僕のものになるんだよ!

なんか癖になっちゃってさ、あの、全然屈服しない感じとか!だから、紅司じゃなくて僕のパートナーになってね!」

…まて、この人今なんて言った?かずはさんは、ぼくのパートナーに…?

意味がわからない。嫌なことにもほどがある。性器にナイフを突きつけるような奴とパートナーシップが築けるわけがない。

「ねえ、そんな嫌そうな顔しないでよ、虐めたくなる。」

「いだっ!!」

相変わらずニコニコと笑みを浮かべたまま、一葉の背中の、先程殴られた部分を蘭が一気に踏みつける。

「んー、これ以上抵抗されると楽しくて殺しちゃいそう。

…ねえ、Dom性の人、手、挙げて?」

蘭の呼びかけで、場にいた3分の2ほどが手を挙げる。

「この状態で主人の前で輪姦されたらどうなるかな?ねえ、dropバッドトリップするかな!?」

蘭は楽しくてたまらない、というようにキラキラした目で手を挙げた男のうちの1人に問いかけた。

まるで宝石を前にした女性のようだ。胸元の前で指先を合わせ爛々としている。

「…そうですね、蘭様。恐らくはそうなるでしょう。」

その言葉を聞いて、余計に彼の機嫌はよくなって。

「そっかー!心が壊れた一葉さんもいいなー見てみたい!ねえ、僕ちょっとやることあるから、Dom性の人、残ってそこのSubやっちゃって!

…あっ!あと、ムービー撮っておいてね!後で一緒に見るから!!」

「…かしこまりました。」

たたたっと駆け出して蘭は向こうの部屋へと消えていった。消える前に一度一葉を振り返り、

「君の主人、動けないけど喋れるし、意識ははっきりしてるから。見せられないのは残念だけど、せいぜいイイ声で鳴いてあげてね。」

と言い残して。
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