跪くのはあなただけ

沈丁花

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ep32

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「俺で、本当にいいんだな?」

…ああ、なんで今そんなことを聞いちゃうんですか。

内心そう毒づきながら、一葉は少し紅司から視線を逸らした。

上半身ははだけられたシャツ、下半身は一糸纏わず紅司に後孔を晒すように大きく脚を開いている。

こんな格好でそれを言うのも恥ずかしくて、でも彼の不安そうな顔は見ていられなくて。

「いいも何も、あなただけです、紅司様。」

自分の頬が先酷よりさらに熱を帯びるのがわかった。紅司はそれに対して何も答えずに、ただ、くしゃりと笑った。

あ、この人こんな笑い方もするんだ。彼をその表情にさせたのが自分だと思うと嬉しくて、思わず一葉も表情が緩む。

紅司の衣服がはだけられ、彼も一葉と同じ、シャツだけをまとった格好になる。

「おいで、一葉。」

声とともに大きく彼の腕が広げられ、近づいていくと引き締まった体躯にがしりと抱きしめられた。

紅司の額を汗が伝う。

この逞しい身体にがっしりと抱かれていることにさえ心臓がうるさくて止まらないのに、ハンサムなその面差しに、一葉の目は釘付けになった。

…こんな素敵な人の相手として選ばれた自分は、なんて幸せ者なのだろう。

「ふぅっ…ぁっ…… 」

ゆっくりと降りてきた唇に、舌を絡めてキスに溺れて…。

その時、ずん、と大きな質量が自分の内部を貫いた。

「あぁっ…!!」

突然のことに一瞬思考が停止して、紅司の雄が挿入っていることに気づくまで時間がかかった。

一葉はベッドに座った態勢の紅司の上半身に前から抱きつくようにして貫かれている。

自らの体重で、紅司の楔は一気に奥まで入っていった。

全然違う。今まで受け入れてきた器具に、こんな熱はなかった。

一葉の中をうねるように進むそれは、固く芯を持っているにもかかわらず決して中を傷つけることはせず、そしてとにかく熱い。

これが人を受け入れるということかと、素直に感心する自分がいた。気持ちよすぎて、彼の熱に内部が溶かされてしまいそう。

…それもいいか。

「くっ…そんなに締めつけるなっ。我慢できなくなる。」

ふと、紅司が歯を食いしばり、焦るようにそう紡いだ。無意識に締め付けを強くしていたらしい。

勢いよく挿れた後は、一葉の反応を伺いながらゆっくりと中を動かすだけの、彼の表情に余裕がないことが嬉しくて。

「我慢っ、しなくていいっ…からっ…!」

甘やかな快楽の中、そう、口走っていた。

「壊れても知らないぞ。」

喉の奥を閉めた、呻くような小さな声。

「…あなたになら壊されても構いません。」

思ったことを素直に告げた一葉の返答は、ギリギリのところで保った紅司の理性を壊すのに十分だったようだ。
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