跪くのはあなただけ

沈丁花

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ep30

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※この後からかなり独自設定を含みます

紅司が目を覚ました2週間後、彼は退院することになった。

入院中も、互いにプレイを行わないことはダイナミクスの暴走に繋がるため、軽いプレイは行なった。

例えば自慰行為をしたり、紅司の性器を咥えて奉仕したり、軽いものだと紅司が必要なものを取ってくる際わざわざcommandで命じられたり。

しかし、退院した今日、一葉には紅司と交わしたある約束がある。

…それが、今まさに行なわれようとしていた。

「一葉、こちらへ。」

自らのベッドへと一葉を誘う、紅司の声はいつになく優しい。

対して一葉は凄まじい緊張の中にいた。

「緊張しているのか?かわいいな。」

「…。」

実の所、場を和ませようとする紅司の言葉に対し、何と返していいかわからないほど緊張している。

「一葉、俺に任せておけばいい。絶対に気持ちよくすると約束しよう。」

アフターケアの最中のようなどこまでも優しい紅司の声に、さらに心臓がばくばくと脈を打つ。

今から行われようとしているのは、互いの意思を確かめる行為。

「…お手柔らかに、願います。」

小刻みに震えるか細い声で、そう口にするのがやっとだった。

正式なパートナーは両者の合意のもと役所に届けを出すことで成立する。これをClaimと言う。

しかし、結婚する際に式を挙げそこで指輪を渡すように、Claimの際もまた、しっかり区切りをつけるために、法的な効果はない儀式のような算段を踏むことが一般的だ。

簡単に言えば、パートナー同士で性行為を行い、それが終わった後にDomがSubにパートナーがいることの証明であるColor首輪をつける、と言うものだ。

「はじめようか、一葉。」

優しい力でベッドへと押し倒されると、紅司の端正な顔がすぐ目の前に映った。ここまで近くで見たことはなかったから、その美しさにどきりとする。

ひとつひとつ、一葉の顔色をうかがいながら、ボタンがゆっくりと外されていく。

「そんなに不安そうな顔をするな。」

「んっ… 」

大きな手で頭を撫でられ、唇には優しい口づけが落とされた。

ボタンを外す手は止められ、しばらくそうされているうちに、少しずつ一葉の身体の強張りがとけていく。

「いいこだ。」

…紅司の声は、まるで砂糖菓子のように甘い。

慣例として、Claimの際に行われる性行為の間は、commandやglareを使ってはいけない。それが、強制力が働かなくても相手に身を任せられることの証明となる。

つまり今から行われるのは、人生で初めて経験する実際に互いの愛を確かめるためのセックスであり、一葉はそのことに緊張していた。

一葉の強張りがある程度解けると、再び紅司は一葉のシャツのボタンを外し、全て外し終わると前を左右に開いた。
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